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ニュージーランド・プロラグビー選手の栄養状況、試合の前後1週間をポジション別に集計

ニュージーランドのスーパーラグビー選手権に参加した34人のエリート男性プロラグビー選手の、試合前後7日間の栄養摂取状況をポジション別に集計した結果が報告された。バックスよりフォワードの方が摂取エネルギー量の絶対値が有意に多いこと、ただし体重換算した相対値は有意差がないことなど、詳細なデータが示されている。また、炭水化物摂取量は推奨値未満だったが、不足しているように見えないと著者らは述べている。

ニュージーランド・プロラグビー選手の栄養状況、試合の前後1週間をポジション別に集計

世界の強国、ニュージーランドのプロ男子ラグビー選手の調査

ラグビーの試合中、平均的に心拍数は172bpm、走行距離5~7kmに及び、かつ毎分0.4回頻度で高強度のコンタクトが発生する。シーズン中の選手は運動誘発性筋損傷とプレイ中の衝突による筋損傷にさらされ、筋肉の再生、グリコーゲン回復、免疫能維持のために最適な栄養素摂取が必要。

これまでにもシーズン前およびシーズン中のラグビー選手の栄養摂取状況は報告されているが、試合当日の摂取エネルギー量も含む詳細なデータは報告されていない。また、これまでの報告はいずれも北半球の国々からのものだ。

本研究では、長年世界トップクラスの実力を維持している南半球の強国、ニュージーランドの男子プロラグビー選手の、試合前後1週間、および試合当日は試合前と試合終了後に分け、ポジション別に摂取エネルギー量を詳細に検討された。

フォワードとバックス各17人を対象に調査

この研究の対象は、同国のスーパーラグビー選手権参加チームに所属する34人のエリート男性プロプレーヤー。年齢は27.6±2.8歳、身長187.5±8.5cm、体重103.0±13.6kg。このうち半数の17人がフォワードで、年齢27.8±2.4歳、193.4±6.7cm、114.3±6.8kg、残り17人はバックスで27.5±3.3歳、181.5±5.3cm、91.8±8.2kg。経験年数は平均8.5±2.8年、8カ所のスキンフォールド(皮下脂肪厚)の平均は61.0±13.2mm。

食事摂取状況は、7日間にわたり摂取するすべてのものを写真撮影し、メモとともにスポーツ栄養士に送信して、スポーツ栄養士がそれを分析・評価した。

7日間の運動強度

連続する7日間のうち、試合日は6日目で、3日目と7日目は休息日だった。また、トレーニング日のトレーニング強度には緩急があり、初日は低強度、2日目は高強度、3日目休息日、4日目高強度、5日目低強度、6日目試合日、7日目休息日とされた。

ボルグスケールによる自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)とトレーニング時間(または試合時間)を乗算した値を自覚的運動量とすると、初日は784±123au(arbitrary unit;任意単位)で走行距離が2.4±1.0kmで、以下2日目は、1,277±108au、6.7±0.8km、4日目1,367±90au、5.1±0.7km、5日目242±42au、2.7±0.5kmであり、6日目の試合日は716±94au、6.1±0.7kmで7日間の合計は4,386±457au、23.0±3.7kmだった。

バックスの選手は試合日に、より集中して食事を摂取している

それでは、栄養摂取状況をポジション別にみていく。まずは、7日間でのエネルギー量と主要栄養素の摂取量について。

7日間のエネルギーと主要栄養素の摂取量

7日間で、フォワードはバックスより摂取エネルギー量の絶対値が有意に高く(p<0.01)、炭水化物(p=0.02)、タンパク質(p<0.01)、脂質(p=0.03)の摂取量も多かった。ただし、体重で調整すると、有意差は消失した。

体重あたりの摂取量は以下のとおり(フォワード、バックスの順で、単位はすべてkcal/kg/日)。エネルギー量40.5±7.2、41.9±7.2、炭水化物3.5±0.8、3.7±0.7、タンパク質2.5±0.4、2.4±0.5、脂質1.8±0.4、1.8±0.5。

日々のエネルギー摂取量の変化

続いて日々の摂取エネルギー量の変化をみると、最も多かったのはフォワード、バックスともに試合日だった。フォワードの選手は試合日の摂取量に比較し、3日目と7日目の休息日の摂取エネルギー量が有意に少なかった。その他の日は試合日より少ないものの有意差はなかった。

一方、バックスの選手は3日目と7日目の休息日に加え、1日目と4日目も試合日より摂取エネルギー量が有意に少なく、試合日と有意差がないのは高強度トレーニングを行った2日目と4日目の2日のみだった。

フォワードもバックスも試合日に集中してエネルギーを摂取する傾向がみられたが、バックスの選手はその傾向がより強く認められた。

試合日の試合前後のエネルギーと主要栄養素の摂取量

試合当日のキックオフは19時で、終了時刻は21時ごろだった。試合当日の栄養摂取状況を試合前と試合後に分けてみると、フォワード、バックスともに試合前の摂取量のほうが有意に多かった。なお、摂取栄養素の比率にポジションによる有意差は認められなかった。

炭水化物の摂取量が「適切か否か」は「最適か否か」で検討する必要がある

以上の結果から著者らは、以下のように結論と今後の研究の課題を述べている。

この研究で観察された食事摂取量は既報と類似し、スポーツ栄養上の推奨値と比較して炭水化物が少ない。しかし、研究対象が経験豊富で実際に好成績をあげているエリートプロラグビー選手であることから、食事摂取量は適切であるように思われ、推奨より少量でも不足していない可能性がある。ただし今後の研究で、炭水化物摂取量が「適切か否か」ではなく「最適か否か」を確認するため、グリコーゲン貯蔵の変化とパフォーマンスも評価項目に加えて、エネルギーバランスと炭水化物摂取量を調査する必要がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Competition Nutrition Practices of Elite Male Professional Rugby Union Players」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 May 18;18(10):5398〕
原文はこちら(MDPI)

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