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ダークチョコレートは、トレーニング習慣のある女性の安静時エネルギー消費を高める

カカオから作られるダークチョコレートを巡っては近年、健康面にプラスの影響を及ぼすとの研究報告が増えている。最近もまた、少量のダークチョコレート摂取が、安静時の消費エネルギー量を増大させるとの研究結果が発表された。日常的にトレーニングを行っている正常体重の女性を対象に、30日間介入した単盲検試験の結果だ。

ダークチョコレートは、トレーニング習慣のある女性の安静時エネルギー消費を高める

カカオポリフェノールの代謝への影響を検討

ダークチョコレートを適量摂取すると、動脈血管が拡張し脳血流が促進され、認知機能の改善が認められることが報告されている。また、抗炎症、抗凝固作用なども有することが示唆されている。さらに、一般的なイメージと反して、肥満に対しても抑制的に働く可能性も報告されている。

カカオの健康上のメリットは、ポリフェノールのエピカテキンによるものと考えられている。マウスモデルでの実験ではエピカテキンの投与により、トレッドミルパフォーマンスを改善し、筋毛細血管密度を増加させることが観察された。ヒト対象の研究でも、座位時間の長い中年被験者で、20g/日の摂取により酸化ストレスのマーカーの有意な低下、ミトコンドリア機能の改善、最大酸素摂取量、およびサイクリングパワーが上昇したと報告されている。また、85%ダークチョコレート40g/日の30日間の摂取で、エリートサッカーアスリートの抗酸化力と筋損傷のマーカーの有意な改善を認めたとの報告もある。

ただし、ダークチョコレート摂取による代謝への影響を検討した研究は少ない。本研究では、レクリエーションレベルの女性アスリートで、安静時および定常状態の運動中のエネルギー代謝に対する70%ダークチョコレートの影響を検討した。1日あたりのダークチョコレートの摂取量20gは、一般的に継続摂取可能と考えられる量として設定されたもの。

ホワイトチョコレートを摂取する群と比較

研究の対象は18~30歳の正常体重(BMI18.5~25)の喫煙習慣のない女性で、中~高強度運動を5時間/週以上行っている25名。 激しい運動を48時間控えた後、安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)の測定に続き、自転車エルゴメーターで20分間の連続運動(50Wで10分と100Wで10分)を課して運動中の代謝を測定。その後、14日間、支給したサプリメントを摂取してもらった。

サプリメントは、20gの70%ダークチョコレート、またはエネルギー量の等しいホワイトチョコレート。研究参加者には、チョコレート摂取の代謝への影響を調査する研究であることは伝えたが、関心のあるチョコレートはダークチョコレートであることは知らせなかった。

サプリメントの摂取開始から14日後に摂取状況を確認し、摂取できていな人、および継続の意志がない人はその時点で除外した。摂取期間は当初28日間を予定していたが、月経周期を勘案し柔軟に対応した。サプリメントの摂取期間終了後に、前記と同様の方法で安静時と運動時の代謝を評価した。

なお、この研究期間中、被験者は通常の身体活動レベルを維持すること、および支給されたもの以外のチョコレート、ブルーベリー、チェリー、ストロベリー、ブラックベリー、ラズベリー、リンゴ、ザクロ、およびそれらを用いた製品、紅茶、緑茶、赤ワインなどの高フラボノイド含有食品の摂取を控えるように指示された。また、フラボノイドの生体利用性を阻害するとの報告がみられるため、念のため乳製品(ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、マーガリン)の摂取を控えるように指示した。

ダークチョコレート群でのみ、安静時エネルギー消費量が増加

25名の被験者のうち、研究期間中の受傷、味覚に対する嫌悪、および「チョコレートが嫌い」といった理由で解析対象から7名が脱落し、18名が最終的な解析対象となった。ダークチョコレート(DC)群とホワイトチョコレート(WC)群がちょうど半数(9名)ずつだった。チョコレート摂取期間は、DC群30.8±2.6日、WC群30.6±4.2日と同等であり、また、年齢(21.3±1.9 vs 21.1±1.7歳,p=0.80)やBMI(25.0±3.3 vs 23.4±2.2歳,p=0.24)にも有意差はなかった。なお、サプリメント摂取による健康への悪影響は報告されなかった。

ダークチョコレート群でREEが10%弱増加、運動中の代謝は変化なし

安静時エネルギー消費量(REE)は、WC群ではベースライン時が1,560±155kcal/日、摂取後が1,557±169kcal/日であり、DC群は1,448±174kcal/日から1,588±248kcal/日と変化した。変動幅(ΔREE)を比較すると、WC群は-3±93kcal/日に対してDC群は140±132kcal/日と、9.6%有意に大きく上昇していた(p=0.017)。なお、エネルギー基質の利用については、群間および介入前後での有意差はなかった。

また、運動負荷時のエネルギー代謝には、負荷強度(50Wと100W)にかかわらず、群間に有意差は認められず、エネルギー基質の利用への影響もみられなかった。

サプリメントとして摂取する場合は過剰摂取に注意を

著者らは本研究を、「少量かつ比較的短期間のダークチョコレートの摂取が、安静時エネルギー消費量を大きく上昇させ、定常状態の運動時のエネルギー消費には影響を与えないことを示した初の研究」と述べている。本研究でとられた1日20gのダークチョコレートを30日間摂取という条件は、エピカテキンの代謝への影響を期待でき、かつカフェイン摂取のデメリットを発現させないレベルとして設定されたという。

これに関連して著者らは、「サプリメントは医薬品と異なりその摂取量は消費者の裁量に委ねられており、しばしば効果があるものなら少ないより多いほうが良いとして大量摂取されがちだが、過剰摂取には意義が乏しく副作用が上昇する」と述べている。具体的には、過去にもダークチョコレートの摂取が対プラセボで13%の安静時エネルギー消費(REE)を上昇させるとの報告があるが、その研究では結果として10mg/kg/日という大量のカフェインが摂取されていた。しかしその研究で示されたREEの上昇幅は本研究の結果の9.6%と大差なく、本研究でのカフェイン摂取量はわずか8.5mg/日と各段に少なかったことを指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Dark Chocolate Supplementation Elevates Resting Energy Expenditure in Exercise Trained Females」。〔Int J Exerc Sci. 2021 Apr 1;14(2):250-259〕
原文はこちら(Western Kentucky University)

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