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アスリートに対するケトン食の活用 体脂肪率は下がるがコレステロール上昇に要注意

ケトン産生食に関しては、体重や血糖管理上の有効性を示唆する報告が増えているが、アスリートを対象とした研究はまだ多くない。こうした中、アスリート対象の研究のみを抽出したシステマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。結論は、ケトン産生食は体脂肪率と呼吸交換率(RER)を低下させるが、総コレステロールが増加し、BMI、VO2max、心拍数、血糖値、インスリンレベルなどは有意な変化がないというものだ。より詳しく見ていこう。

アスリートに対するケトン食の活用 体脂肪率は下がるがコレステロール上昇に要注意

検討対象がアスリートのみの研究論文を対象とする系統的レビュー

体重別階級のある競技に参加しているアスリートの中には、ケトン産生食に伴う減量という一面へ期待するアスリートも存在する。ケトン産生食では減量のほか、血糖値とインスリンレベルの低下、運動誘発性酸化ストレスや炎症レベルの低下などの変化とともに、体組成やスポーツパフォーマンスなどへの影響もあるとの報告がみられる。ただし、現状では一致した結論が得られていない。そこで本論文の著者らは、メタ解析によって、体組成や心血管代謝因子に対するケトン食のプラスとマイナスの影響を検討した。

ケトン食の実施期間が1~24週間の8件の研究を抽出

システマティックレビューは文献データベース、EMBASEおよびMEDLINEに2020年10月までに公開された英語論文を検索対象とした。検索キーワードは、アスリート(アスリート、スポーツ、プレーヤー)ケトジェニックダイエット(低炭水化物食、高脂肪食)。パイロット研究やレビュー論文、検討対象がアスリートでない研究は除外した。

ヒットした540報からタイトルと抄録に基づき87報に絞り込み、それらについて全文をレビューして適格性を判定。最終的に8件の研究をメタ解析の対象として抽出した。

それら8件の研究のケトン食療法の期間は1~24週の範囲であり、平均5週間だった。4件は持久系スポーツアスリートで検討し、他の4件はレジスタンストレーニングを行っているアスリートで検討していた。

体脂肪率の低下には一定の効果

メタ解析は、体組成や体重に関してと、呼吸交換率(Respiratory Exchange Rate;RER)、心肺フィットネス、心拍数などのパフォーマンス関連、および、コレステロールや血糖値などの健康関連のパラメーターについて実施された。

体組成、体重に対するケトン食療法の影響

体脂肪率への影響を検討した研究は4件存在した。ケトン産生食を行ったアスリートは対照群に比較し、体脂肪率が有意に低下していた(効果量d=-0.48〈95%CI;-0.96~0.00〉,p=0.05,統計量k=4)。ただし体重に関しては、統計的に有意な差はなかった(d=0.05〈95%CI;-0.32~0.42〉,p=0.77,k=4)。

パフォーマンスに対するケトン食療法の影響

スポーツパフォーマンス関連指標への影響について、まずRERに関しては3件の研究が存在した。ケトン産生食を行ったアスリートは対照群に比較し、RERが有意に低下していた(d=-1.92〈95%CI;-2.70~-1.14〉,p=0.01,k=3)。

一方、VO2maxに関しては3件の研究が存在し、統計的に有意な差はなかった (d=0.12〈95%CI;-0.35~0.59〉,p=0.62,k=4)。また、心拍数に関しては4件の研究が存在し、やはり統計的に有意な差はなかった (d=-0.48〈95%CI;-0.96~0.009〉,p=0.44,k=3) 。

健康関連指標に対するケトン食療法の影響

健康関連指標への影響について、まず総コレステロールに関しては2件の研究が存在した。ケトン産生食を行ったアスリートは対照群に比較し、総コレステロールが有意に上昇していた(d=1.32〈95%CI;0.64~1.99〉,p=0.05,k=2)。

一方、HDL-コレステロール(d=1.07〈95%CI;-0.21~2.35〉,p=0.10,k=3)、中性脂肪(d=-0.49〈95%CI;-2.58~1.61〉,p=0.65,k=3)、血糖値(d=-0.13〈95%CI;-0.82~0.56〉,p=0.70,k=2)、インスリン(d=-0.19〈95%CI;-0.14~0.76〉,p=0.69,k=2)に関しては、いずれも対照群と有意差がなかった(メタ解析の対象研究数は、脂質代謝関連が3件、糖代謝関連が2件)。

結果をまとめると、ケトン産生食を行ったアスリートでは、体脂肪率と呼吸交換率が低下し、総コレステロール値が上昇した。このことから著者らは、ケトン産生食がアスリートが体脂肪率を減らすのに役立つ可能性があるとしている。一方で、コレステロール値が高いアスリートでは、ケトン食を行うに際して、コレステロール値をモニタリングする必要があるとも述べている。

このほか、全体的にサンプル数が少ない研究が多いこと、参加している競技種目が持久系とレジスタンス系に分かれていたこと、ケトン食介入の期間の幅が大きいこと、ケトン食の内容にも幅が存在していたことなどの研究上の限界点を挙げ、この領域のさらなる研究の必要性を指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Influences of Ketogenic Diet on Body Fat Percentage, Respiratory Exchange Rate, and Total Cholesterol in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Mar 12;18(6):2912〕
原文はこちら(MDPI)

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