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バレエダンサーは栄養介入の必要性が高い 体組成の検討結果からの考察

40名のバレエダンサーの体組成を評価した研究から、体脂肪平均値が推奨値を下回り、栄養リスクが高い状態にあるとするデータが発表された。著者らは、栄養専門家のアドバイスが重要だと記している。バレエ発祥の地とされる、イタリアからの報告。

バレエダンサーは栄養介入の必要性が高い 体組成の検討結果からの考察

40名の経験豊富なダンサーの体組成を調査

バレエは審美系スポーツの代表で、そのアスリートであるダンサーにはステージ上での美的評価にかなうための体型、具体的にはほとんどの場合やせていることが求められ、それがハイパフォーマンスの獲得にもつながる。バレエダンサーの体脂肪率を調べたこれまでの検討では、報告により14~22%と広い範囲に分布している。本研究では、生体インピーダンス法により、若年女性バレエダンサー40名の体組成を調査した。

対象者の特性は、年齢が19.97±2.07歳(範囲16~24歳)で、平均して7.5歳からバレエを始めており、週に28.22±1.21時間のトレーニングを行っていた。

生体インピーダンス法は、測定値が体液量や電解質の影響を受けることが報告されている。よって、測定の12時間前からは、身体を脱水に傾ける可能性のある医薬品、カフェイン、紅茶等の摂取を禁止し、また測定の前日は激しい運動を禁止。一晩の絶食後、排尿後に計測した。なお、各ダンサーの月経周期の卵胞/黄体期初期に測定した。

BMIは平均19.8、体脂肪率は15.9%

40名の平均身長は162.6±4.9cm(範囲151~171cm)、体重は46.8±3.5kg(同42~56kg)で、BMIは19.8±2.1(同15.9~22.0)であり、ウエスト周囲長64.6±3.7cm(同58~72cm)、ヒップ周囲長91.4±39.5cm(83~102cm)であって、除脂肪量は47.33±5.1kg(同36.5~55.4kg)、体脂肪率は15.9±1.7%(同13.2~20.4%)だった。

正常範囲下限を下回る体脂肪率

著者によると、本研究は「若いバレエダンサーの体組成を調査した欧州で数少ない研究の一つ」という。結果は、対象の平均体脂肪率が15.92%と、このアスリート集団はやせた女性で構成されていることが明らかになった。

この値は、若年女性の正常範囲として提案されている体脂肪率である18~25%の下限を大きく逸脱しており、さらには女性ダンサーの最適な体組成として提案されている17~23%よりも低い。

この結果について著者は、以下のような考察を加えている。

バレエダンスは、筋力、持久力、柔軟性、敏捷性を必要とする複雑な活動であり、厳しいトレーニングが求められる。ダンサーは、やせた体格を維持するために審美的なプレッシャーにさらされることがある。しかしながら思春期のダンサーには、スポーツのパフォーマンスと同時に、それだけでなく、成長と発達のための栄養素を必要とする。そのため、エネルギー摂取量が制限されているダンサーは、微量栄養素が不足するリスクが高いと考えられる。とくに若年の女性バレエダンサーは、鉄分とビタミンの欠乏リスクがある。

ダンスでは確かにやせていることがパフォーマンス上有利であり、しばしばそれが強調される。そのような必須と言える前提条件のため、ダンサーは望ましい低体重を達成・維持するために、低エネルギー量の食事を続けなければならない。これは、とくに女性の場合、将来の健康に大きな影響を与える可能性がある。

そのような通常ではない食生活は、主として特定の食品の摂取量の減少を意味する。恐らく、多くのケースでそのような食事の摂り方は、栄養の専門家によって処方されたものではないだろう。結果として、摂食障害(食欲不振、過食症)、月経障害、および低骨密度など、健康障害のリスクが高くなる。

バレエダンサーの栄養について、有資格の専門家のアドバイスが必要とされる

スポーツアスリート対象の最近のガイドラインから、ダンサーはエネルギーの不均衡に関連する障害リスクを抑制するために、少なくとも30kcal/kg除脂肪体重/日を摂取すべきと考えられる。主要栄養素としては、炭水化物3~5g/kg/日、蛋白質1.2~1.7g/kg/日、および摂取エネルギー量の20~35%を占める脂質摂取が推奨される。また、食事からの栄養摂取が不十分な場合は、サプリメントから、カロテノイド、マルチビタミン、酸化防止剤、ポリフェノール、多価不飽和脂肪酸、ミネラル等の補給が必要なこともあろう。

バレエに代表される審美系スポーツでは、低体脂肪率と低体重が、しばしば競争上の優位性をもたらす。そのため、低エネルギー可用性とそれに関連する栄養不足は、このカテゴリーのアスリートで一般的にみられる。

とくにバレエは低体重と低体脂肪率維持のプレッシャーが強く、結果として、これは正しくマネジメントされていない場合、不均衡な食事と健康上の問題を発生しやすくなる。アスリートは、資格を保有する専門家に、食事のアドバイスを求めることが重要と言える。

若い女性のバレエダンサーを中心とするリスクの高いアスリート集団の栄養失調に関連する問題を防ぐために、栄養状態のスクリーニングと教育プログラムの双方の推進が推奨される。

文献情報

原題のタイトルは、「Assessment of body composition and nutritional risks in young ballet dancers – the bioelectrical impedance analysis」。〔J Electr Bioimpedance. 2020 May 14;11(1):26-30〕
原文はこちら(Sciendo)

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