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タンパク源の選び方が女性の全死亡、心血管死、認知症関連死のリスクに違いにつながる

タンパク質を何からとるかによって、全死亡、心血管死、認知症関連死のリスクに有意な差が生じる可能性を示す研究結果が報告された。米国で女性を対象に行われている大規模疫学研究の登録者10万人以上のデータを前向きに解析した結果であり、米国心臓協会(American Heart Association;AHA)の「J Am Heart Assoc」に報告された。著者らは、「タンパク源を考慮せずに、単にタンパク質の摂取量のみに焦点をあてた栄養摂取ガイドラインは、シンプル過ぎて不十分である」と指摘している。

タンパク源の選び方が女性の全死亡、心血管死、認知症関連死のリスクに違いにつながる

タンパク源別に摂取量を把握し、死亡リスクとの関連を検討

これまでの研究で、赤身肉の摂取量が死亡率と相関することなどが報告されている。ただし、タンパク源ごとに死亡率を検討した研究は少なく、決定的な結論に至っていない。本研究では、追跡対象者10万人以上、追跡期間最長18年という長期間の大規模コホート研究のデータを前向きに解析し、動物性/植物性タンパク質摂取量、および主要な個別のタンパク質摂取量と、種々の原因による死亡リスクとの関連が検討された。

研究対象は、1991年に米国立衛生研究所(National Institutes of Health;NIH)により始められた「Women's Health Initiative;WHI(女性の健康イニシアチブ)」参加者。WHIは、閉経後女性の心疾患、乳房・大腸癌、骨粗鬆症の予防戦略確立を目的とした全米での長期的な疫学研究。

本研究における解析対象は、1993~1998年にWHIに参加登録された10万2,521人の閉経後女性で、2017年2月まで追跡された。

ベースライン特性

食事摂取状況は、参加登録(ベースライン)時に、4日間の食事記録と4回の24時間思い出し法にて評価した。

総摂取エネルギーに占めるタンパク質の割合は16.8± 3.2%で、そのうち68.6±10.3%が動物性タンパク質であり、五分位に分けると、第1五分位群は中央値7.5%、第5五分位群では同16.0%だった。他方、植物性タンパク質は第1五分位群が同3.5%、第5五分位群が同6.8%だった。

動物性タンパク質の摂取エネルギー比率が高い女性には白人が多く、教育歴が長く高収入であり、喫煙率が高く飲酒量は少なかった。また、ベースライン時の糖尿病罹患率が高く、心臓発作の家族歴を有する割合が高かった。加えて、飽和脂肪酸からのエネルギー摂取量が多く、多価不飽和脂肪酸の比率は低く、食物繊維の摂取量が少なく、BMIが高い傾向がみられた。

動物性タンパク質の摂取量の多寡は死亡リスクに影響せず

187万6,205人年の追跡(平均追跡期間18.1年)で、心血管疾患死6,993人、癌死7,516人、認知症関連死2,734人を含む2万5,976人の死亡が発生した。

タンパク源別の摂取量と死亡リスクとの関連の解析に際しては、年齢、人種/民族、社会経済的因子(教育歴と年収)、ホルモン補充療法の有無、喫煙・飲酒・運動習慣、BMI、ベースラインの健康状態、心血管イベントの家族歴、栄養関連因子(総摂取エネルギー量、全粒穀物・野菜・果物・加糖飲料・トランス脂肪酸・食物繊維摂取量)などで調整した。

その結果、動物性タンパク質の摂取量の多寡は、全死亡、心血管死、癌死、認知症関連死のリスクと有意な関連が認められなかった。ただし、動物性タンパク質であっても、摂取源をより細かく分類した場合、死亡リスクと有意な関連が認められるものもあった(後述)。

植物性タンパク質の摂取量が多いほど全死亡、心血管死、認知症関連死が少ない

一方、植物性タンパク質摂取量の第1五分位群を基準に他群の死亡リスクを比較すると、まず、全死亡に関しては、第2五分位群HR0.95(95%CI;0.92~0.99)、第3五分位群HR0.95(95%CI;0.91~0.99)、第4五分位群HR0.93(95%CI;0.89~0.98)、第5五分位群HR0.91(95%CI;0.86~0.96)と、すべての群で有意なリスクの低下が認められ、総摂取エネルギー量に占める植物性タンパク質の割合が多いほど、全死亡リスクが低下するという有意な相関が存在した(傾向性p=0.0002)。

同様に、心血管死は、第4五分位群HR0.90(95%CI;0.82~0.98)と、第5五分位群HR0.88(95%CI;0.79~0.97)で有意なリスクの低下が認められ、植物性タンパク質摂取量が多いほど心血管死リスクが低下するという有意な相関が存在した(傾向性p=0.01)。

さらに、認知症関連死についても第5五分位群HR0.79(95%CI;0.67~0.94)で有意なリスクの低下が認められ、植物性タンパク質摂取量が多いほど有意にリスクが低下していた(傾向性p=0.003)。

ただし、癌死に関しては、総摂取エネルギー量に占める植物性タンパク質の割合が多いことによる、リスクへの有意な影響はみられなかった。

動物性タンパク質を5%減らして植物性タンパク質に変えることのメリット

統計解析により、動物性タンパク質からの摂取エネルギーの5%を植物性タンパク質に置き換えると、全死亡リスクの有意な低下(HR0.86,95%CI;0.81~0.91)、心血管死リスクの有意な低下(HR0.78,95%CI;0.70~0.87)、認知症関連死リスクの有意な低下(HR0.81,95%CI;0.68~0.97)につながることが示された。ただし癌死のリスクが有意に低下する可能性は示されなかった。

個別のタンパク源と死亡リスクの関連

タンパク源を個別に評価すると、加工された赤身肉(HR1.06,95%CI;1.01~1.10)や卵(HR1.14,95%CI;1.10~1.19)の摂取量が多いほど、全死亡リスクが高いという相関が認められた。また、未加工の赤味肉(HR1.12,95%CI;1.02~1.23)や卵(HR1.24,95%CI;1.14~1.34)、乳製品(HR1.11,95%CI;1.02~1.22)の摂取量が多いことは、心血管疾患死のリスクの高さと関連していた。卵に関しては、癌死リスクとも関連していた(HR1.10,95%CI;1.02~1.19)。

反対に、動物性タンパク質の中にも死亡リスクの低下と関連しているものもあり、家禽は認知症関連死のリスク低下と感染していた(HR0.85,95%CI;0.75~0.97)。ただし、加工赤身肉は、認知症関連死のリスク上昇と関連していた(HR1.20,95%CI;1.05~1.32)。また認知症関連死については、卵の摂取もリスク上昇と関連していた(HR0.86,95%CI;0.75~0.98)。

統計解析からは、赤身肉、卵、乳製品をナッツで置き換えると、全死亡リスクが低下することが示された。

著者らは、「この大規模な前向きコホート研究によって、植物性タンパク質の摂取量が多いこと、また、動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えることで、すべての原因による死亡、心血管疾患による死亡、認知症に関連する死亡のリスクが低下することがわかった。この結果は、将来策定される食事栄養ガイドラインにおいて、タンパク質摂取量のみでなく、そのタンパク質源も示す必要性を意味している」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of Major Dietary Protein Sources With All‐Cause and Cause‐Specific Mortality: Prospective Cohort Study」。〔J Am Heart Assoc. 2021 Feb 24;e015553〕
原文はこちら(American Heart Association)

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