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カフェインの摂取タイミングは運動1時間前がベストかも 下半身の筋力への影響の比較

カフェインの筋力に対するエルゴジェリック効果を期待するなら、競技の1時間前に摂取するとよいかもしれない。2時間前と比較して、パフォーマンスへの影響が大きい可能性があるという。また、カフェイン摂取のパフォーマンスへの影響は、女性よりも男性で大きいことも示された。

カフェインの摂取タイミングは運動1時間前がベストかも 下半身の筋力への影響の比較

カフェイン摂取の最適なタイミングを検証

カフェインのスポーツパフォーマンスへの影響としては、持久力に対する効果のほかに、最大トルクを向上させることが報告されている。しかし、それらのエルゴジェニック効果を最大化するために、どのタイミングでカフェインを摂取するのが最適なのかは明確にはなっていない。

この研究は、下半身の筋肉のパフォーマンスに焦点を当て、カフェインを摂取する最適なタイミングを検討することを目的に行われた。副次的には、カフェイン摂取の影響の性差も検討された。

検討の対象と試験デザイン

対象は、健康で少なくとも6カ月以上、週2回以上の筋力トレーニングを行っているアスリート。除外基準は、ふだんのカフェイン摂取量が300mg/日を超えている者、18歳未満、45歳以上、疾患罹患者、喫煙者、妊娠中または妊娠予定のある女性、避妊薬服用者など。女性に対しては、最終月経の開始から14日以内に最初の試験を行った。

対象者数と主な背景は、男性が18名で、年齢25.1±5.7歳、身長178.4±7.1cm、体重91.3±13.5kg、体脂肪率20.7±5.2%、カフェイン摂取量146.6±100.3mg/日。女性は11名で、年齢20.1±1.6歳、身長165.0±8.8cm、体重65.8±10.0kg、体脂肪率25.8±4.2%、カフェイン摂取量111.8±91.7mg/日。

試験デザインは、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法。検討に用いたカフェイン用量は6mg/kgで、これを後述の運動パフォーマンステストの開始2時間前、1時間前、30分前という3種類のタイミングで摂取する3条件の試験を行った。被験者はテスト前に1回はカフェイン、2回はプラセボを摂取し、どのタイミングで摂取したものがカフェインであるかは被検者と研究者に対し盲検化されていた。各条件の試験は1週間間隔で行った。

運動パフォーマンスは、等尺性大腿牽引力(isometric mid-thigh pulls;IMTP)、カウンタームーブメントジャンプ(countermovement vertical jumps;CMVJ)、等尺/等速性膝伸展筋力(isometric/isokinetic knee extensor testing;ISO/ISOK)で評価した。

このほか、カフェイン濃度およびパフォーマンステスト実施前1週間から試験実施当日の睡眠時間も検討した。

テスト1時間前の摂取で、対プラセボで有意な測定項目が増える

では結果をみてみよう。

まず睡眠時間に関しては、三つの条件で有意な差が見られなかったが、睡眠の質は、パフォーマンステスト実施2時間前にカフェイン摂取する条件では1時間前に摂取する条件に比べ、有意に低下していた。カフェイン濃度に関しては、パフォーマンステスト開始時点の濃度は1時間前にカフェインを摂取した場合に、他の2条件に比べて有意に高かった。一方、テスト終了時点の濃度は、30分前にカフェインを摂取した場合に、他の2条件に比べて有意に高かった。

パフォーマンステストの結果

さて、次にパフォーマンステストの結果をみてみよう。

テスト1時間前にカフェインを摂取する条件では、プラセボと比較してCMVJおよびISOのパフォーマンスの有意な上昇が認められた。CMVJはテスト30分前に摂取する条件でも有意な上昇が認められたが、上昇の幅は30分前よりも1時間前に摂取する条件で、有意に大きかった。ただしISOKに関しては、30分前摂取条件でのみ、対プラセボ比有意な改善が認められた。

これらの結果を性別に比較した場合、男性のほうがカフェイン摂取による上昇幅が大きく、男性では有意であるものの女性では非有意な測定項目が複数存在した。

長時間競技では何回、どのようなタイミングで摂取すべきか?

一連の結果から著者らは「運動前のカフェイン摂取は、運動開始1時間前とすることにより、とくに2時間前の摂取との比較において、より大きなエルゴジェニック効果を発揮する。また男性は女性よりカフェインに対してより大きく反応することが一貫して認められた」と結論づけている。

ただし本研究では下半身の筋力にスポットを当てているため、上半身の筋力パフォーマンスや、その他、各種のスポーツ特有のパフォーマンスに及ぼす影響は明らかでなく、今後の研究の必要があると述べている。また、競技時間が長時間に及ぶ場合、カフェインを複数回摂取することによりエルゴジェニック効果が維持されるのかや、その際の用量・タイミングなども、今後の検討課題として指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Caffeine Timing Improves Lower-Body Muscular Performance: A Randomized Trial」。〔Front Nutr. 2020 Nov 23;7:585900〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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