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地中海式の食事でアスリートの蛋白質量を満たせるか? それともサプリが必要か?

地中海式の食習慣は、一般の人の健康的な食事スタイルの一つとして豊富なエビデンスがあるが、肉類の摂取量が少なくなりがちだ。一般の人よりも蛋白質を多く必要とするアスリートは、この点が気になるところだ。実際に地中海式の食習慣を送っているアスリートの蛋白質摂取量は足りているのだろうか。イタリアとスペインのアマチュアアスリートを対象とする研究結果が報告された。

地中海式の食事でアスリートの蛋白質量を満たせるか? それともサプリが必要か?

ボローニャ大学のスポーツ科学部の学生の3日間の食事記録を調査

歴史的に、脂質の摂取量が多いことが肥満や心血管疾患のリスクと結び付けられていたが、近年は炭水化物と肥満や糖代謝異常のリスクとの関係が開発途上国を中心に重視されている。それとともに、高蛋白食とすることの潜在的なリスクが十分考慮されないまま、蛋白質の摂取量が増える傾向が先進国を中心にみられる。このような「悪いのは炭水化物で蛋白質は良い」とする社会的傾向を背景に、おもむくままにパレオ食(旧石器時代)や低炭水化物ダイエットを始めるアスリートも存在する。

蛋白質必要量については議論のあるところだが、現在、一般成人には0.8g/kg/日以上、アスリートには1.2~2.0g/kg/日の蛋白質摂取が推奨されることが多い。一方、地中海式の食事は、地中海周辺の人々が食べる伝統的な食事のことで明確な定義はないものの、果物、野菜、豆類、未精製穀物が豊富で、オリーブオイルや魚介も多く、それにヨーグルトやチーズなどの乳製品を適度に摂取するスタイルを指す。地中海式食事スタイルはアスリートにとっても健康的なものであるが、アスリートに十分な蛋白質を得られるか否かについての検討はなされていない。

検討対象と検討方法

この研究は、地中海式の食事スタイルであることの多いイタリアまたはスペインに居住している学生を対象に行われた。2017~2019年の間に、イタリアのボローニャ大学のスポーツ科学部に在籍する学生アスリート166名(男性125名、女性41名)の食事摂取状況が調査された。

研究登録条件は、18歳以上で少なくともアマチュアレベルのスポーツを行っており、イタリアまたはスペインに居住していること。蛋白質サプリメントの使用は除外基準でない。3日間(平日2日と週末の1日)にわたるすべての食事の記録をもとに、栄養士が栄養摂取量を評価した。

蛋白質摂取量の検討は、行っているスポーツの種類を有酸素系競技、嫌気性競技、およびそれらの混合という3タイプに分けて行った。有酸素系競技にはトライアスロン、長距離走、サイクリング、嫌気性競技にはボディービル、短距離水泳、混合競技にはサッカー、水泳、バレーボール、クロスフィット、ラグビー、バスケットボール、空手などを含めた。

これら3タイプの競技のすべてで男性のBMIは女性より大きかったが、性別で有意差があったのは嫌気性競技のみだった(23.5 vs 20.7,p=0.034)。

蛋白質の平均摂取量は1.48g/kg/日

摂取栄養素構成比をみると、炭水化物は男性47.6±8.8%、女性42.8±3.3%、蛋白質は男性17.5±4.3%、女性14.9±2.3%、脂質は男性29.8±7.1%、女性36.6±4.9%だった。競技タイプ別では、嫌気性スポーツにおいて女性の蛋白質エネルギー比率が男性よりも有意に高かった。それ以外の競技では性別による摂取栄養素構成比の有意差はなかった。

有酸素系競技アスリートの蛋白質摂取量は他の2タイプの競技より多い

蛋白質摂取量(サプリメントを除く)は、全体の平均が1.48±0.46g/kg/日だった。本研究においては研究前に「1.6g/kg/日」を暫定的な必要量として設定していたが、結果的に蛋白質摂取量の全体平均は、暫定的必要量より有意に少なかった。

ただし、競技タイプ別にみた場合、有酸素系競技の平均は1.62±0.43g/kg/日であり、暫定的必要量と有意差がなかった。なお、嫌気性競技の蛋白質摂取量は1.41±0.49g/kg/日、混合競技では1.44±0.45g/kg/日だった。

蛋白質摂取量とトレーニング時間に弱い有意な相関

続いて、蛋白質摂取量(サプリメントを含む)とトレーニング時間との関連が検討された。その結果、両者に弱い有意な正の相関が認められた(r=0.296,p<0.01)。競技タイプ別にみても、3つのタイプすべてで有意な正相関が認められたか、相関自体はいずれも弱いものだった。

プロテインサプリの摂取の有無での比較

蛋白質サプリを使用しているのは、参加者全体の28%だった。競技タイプ別では、有酸素系競技アスリートは47.5%、嫌気性競技28%、混合競技19%であり、有酸素系競技のアスリートは他の2タイプのアスリートよりも高い割合で摂取していた。

食事からのみの蛋白質量を、蛋白質サプリメントの使用の有無別にみると、サプリメントを使用している人のほうが食事からの蛋白質摂取量が多いという結果だった(1.64±0.48 vs 1.41±0.44g/kg/日,p=0.0025)。つまり、蛋白質サプリを使用している人は食事からの蛋白質摂取量も多かった。ただし、3タイプの競技に分類すると有意性は失われ、嫌気性競技でのみ有意に近い差が残った(p=0.057)。

無計画にプロテインサプリが摂取されている

次に、アスリートの蛋白質摂取推奨量の下限として示されることの多い「1.2g/kg/日」を下回っている人の割合を検討すると、27%と計算された。蛋白質サプリを使用していない人では、すべての競技タイプで下限値を下回る人の割合が高かった。この結果は、蛋白質サプリを使用しているアスリートは、必ずしもそれを必要としているアスリートではないという事実を示す結果とも解釈できる。

さらに、サプリを使用している群において、食事からの蛋白質摂取量が1.2g/kg/日未満であり、サプリ摂取によってこの下限値を上回っていたのはわずか2人にすぎなかった。このことも、アスリートのサプリメント使用が無計画に行われていることを表していると考えられる。

これらの結果から著者らは、「対象の27%はアスリートの蛋白質摂取推奨下限値を下回っていたが、全体としては地中海式食事療法がアマチュアアスリートの蛋白質摂取推奨量を十分満たすことのできる食事療法と考えられる」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Mediterranean Athlete's Nutrition: Are Protein Supplements Necessary?」。〔Nutrients. 2020 Nov 29;12(12):E3681〕
原文はこちら(MDPI)

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