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運動により誘発される消化管障害がプロバイオティクスで緩和される可能性

レクリエーションレベルか、競技レベルかにかかわらず、消化管関連の症状に悩まされるアスリートは少なくない。それに対し、プロバイオティクスが役立つ可能性が報告された。消化管障害のバイオマーカーに有意差がみられたものの、症状には有意差はないという結果だが、運動の負荷を強めた場合に生じる症状に対しては、抑制効果が得られるのではないかと研究者らは述べている。

運動により誘発される消化管障害がプロバイオティクスで緩和される可能性

運動中の消化管機能障害に対するプロバイオティクスのエビデンス

報告によると持久力のあるアスリートの消化管症状の発生率は、最大50%という。消化管症状が生じるとパフォーマンスに影響が及び、約3分の1のアスリートは「パフォーマンスが"著しく"損なわれる」とする調査結果もみられる。トレーニング中に生じるこのような症状に対する対処法の一つは、トレーニングの種類と量を変更することだが、ほとんどのアスリートにとってそれは受け入れ難く、代替療法が模索される。

こうした中、プロバイオティクスは運動に関連する消化管機能障害の予防や治療に有効であり、安全なアプローチだとする報告がみられるようになってきた。ただし、そのエビデンスレベルは十分高いものではない。

一方、多くのプロバイオティクス候補菌株の中でNissle1917は、潰瘍性大腸炎または過敏性腸症候群などの機能性消化管障害の治療に使用が試みられて、有効性も報告されている。紹介する論文は、このNissle 1917を用いて運動負荷時に発生する消化管障害のマーカーと自覚症状への影響を検討した研究だ。

トレーニングを行っていない男性を対象に、クロスオーバー法で検討

対象は、日常的なトレーニングを行っていない18~35歳のボランティア男性20名。主な背景は、年齢26.5±4.7歳、BMI23.2±1.9であり、VO2maxは46.0±3.6mL/kg/分。研究デザインはクロスオーバー法。

まず、初回の試験として、3日間の休息と最低48時間以上の運動回避の後、トレッドミルテストを実施。負荷量は、60%VO2maxで10分、70%VO2maxで25分、80%VO2maxで25分とした。運動負荷前、負荷直後、負荷終了3時間後に採血し、腸管の障害マーカーである腸型脂肪酸結合蛋白 (Intestinal-Fatty Acid Binding Protein;I-FABP)や、炎症マーカーであるC反応蛋白(C-reactive protein;CRP)、酸化ストレスマーカーであるチオバルビツール酸反応性物質(thiobarbituric acid reactive substances;TBARS)などの生化学的分析を行った。また、胸やけ、吐き気、胃痙攣などの19項目の消化管症状を、被験者が10段階のリッカートスコアで評価した。

この初回試験を終了後に、Nissle1917を5mL含む懸濁液を28日間にわたり1日1回摂取してもらい、再度同様の試験を行い、初回試験との差を検討した。

I-FABPやTBARSに有意差

研究期間中に1名が個人的な理由で脱落し、解析は19名で行われた。19名のうち13名(68%)はプロトコルに従ってNissle1917を1日1回摂取した。残りの6名は1~3回、摂取しなかった。結果的に全体で定められた用量の97.7%が摂取され、コンプライアンスは良好と考えられた。

初回の試験と2回目の試験とで、試験前に評価した身体活動パフォーマンスに有意差はなかった。また、血球数や試験中の心拍数の変化も、ほぼ同等だった。

評価項目のうち、腸管障害のマーカーであるI-FABPと、酸化ストレスマーカーのTBARSは、運動負荷による上昇がNissle1917摂取条件で有意に抑制されていた。具体的なデータは以下のとおり。

I-FABPは、コントロール条件では運動負荷前384.3±450.9pg/mL、負荷直後559.8±465.6pg/mL、負荷終了3時間までの曲線下面積(AUC3h)45,682.0±50,829.3、Nissle1917条件では同順に390.6±524.4pg/mL、509.4±456.7pg/mL、AUC3h 20,305.8±17,478.7(AUC3hの群間差p=0.037)。TBARSは、コントロール条件で2.1±0.6μmol/L、2.5±0.4μmol/L、AUC3h 55.9±15.3、Nissle1917条件で2.2±0.4μmol/L、2.4±0.3μmol/L、AUC3h 18.8±14.6(AUC3hの群間差p=0.025)。

その他の評価項目である、炎症マーカーのCRPや赤血球数、白血球数、ヘマトクリット、ヘモグロビンなどに有意差はなかった。また、自覚症状のリッカートスコアも有意差がなかった。

自覚症状に有意差がみられなかった点について著者らは、マラソンランナーを対象に行われた研究ではプロバイオティクスの投与により症状発現率が有意に低下したとの報告があることから、本検討では運動負荷が弱く、顕著な消化管症状が誘発されなかったため、有意差が生じなかったのではないかと考察している。

結論としては、「Nissle1917の4週間の投与が、トレーニングを行っていない男性の運動誘発性消化管障害を大幅に軽減できることを示している。消化管障害の発生には酸化ストレスが関与しているようだ。より高負荷条件下での試験により、自覚症状の発現と運動パフォーマンスに対するNissle1917の影響を調査し、潜在的なメリットの詳細な解明が期待される」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Escherichia coli strain Nissle 1917 on exercise-induced disruption of gastrointestinal integrity」。〔Eur J Appl Physiol. 2020 Jul;120(7):1591-1599〕
原文はこちら(Springer Nature)

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