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車椅子アスリートも女性は低エネルギー可用性のリスクあり スイス代表選手での調査

車椅子アスリートの低エネルギー可用性(low energy availability;LEA)の頻度に関する研究結果が報告された。健常アスリートと同様に、女性において高頻度で認められたという。スイスの代表レベルの選手を対象とする調査の結果だ。

車椅子アスリートも女性は低エネルギー可用性のリスクあり スイス代表選手での調査

パラアスリートの低エネルギー可用性(LEA)に関する情報は限られている

アスリートはエネルギー摂取量を制限することが多く、低エネルギー可用性(LEA)がしばしば問題となる。とくに女性アスリートや持久力アスリート、および体重階級のある競技、審美的競技のアスリートで頻繁に発生する。しかし、パラアスリートでの研究は十分でなく、その発生頻度もよくわかっていない。さらに、車椅子アスリートのLEAの判定に健常アスリートの基準を適用可能か否かも現状では不明。

これら不明点が多い車椅子アスリートのLEAについて、本研究では将来的にはその対策の確立につなげることを目指し、まずはその頻度を明らかにすることを目的に実施された。

スイス代表の車椅子アスリートを対象に検討

この研究の参加者は、スイスの代表メンバーである、18~60歳のエリート車椅子アスリート。15名が研究登録され、14名から解析に必要なデータが収集された。主な背景は、年齢34.9±9.4歳、BMI22.3±4.4、除脂肪量46.2±9.7kg、安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)は1,368±259kcal/日。競技種目は、パラサイクリング6名、バドミントン3名、陸上3名、バスケットボール1名、テニス1名。

障害発生からの経過は19.6±7.8年、対麻痺が79%、四肢麻痺14%、障害の程度は米国脊髄損傷協会(American Spinal Injury Association;ASIA)の基準でAIS-Aが64%、AIS-BDが29%。障害の原因は、脊髄損傷が9名、二分脊椎4名、多発性硬化症が1名。全員が車椅子を使用していた。

これら研究参加者に対して、スポーツ栄養士から、食事とトレーニング内容の記録方法を詳細に伝えられた。参加者は、各自が7日間連続でそれらの情報を記録した。体組成や安静時エネルギー消費量(REE)は、24時間絶食後に測定した。

女性アスリートでLEAが好発

データ解析の結果、エネルギー可用性(energy availability;EA)は、男性が36.1±6.7kcal/kg除脂肪量/日、女性が25.1±7.1kcal/kg除脂肪量/日であり、女性が有意に低かった(p<0.001)。

女性で長期的なLEAのリスクなしは、0%

エネルギー可用性(EA)が30kcal/kg除脂肪量/日を低エネルギー可用性(LEA)と定義すると、全体で43%が該当し、性別では男性が13%、女性は83%だった。一方、長期的に健康状態を維持するために必要とされるEA45kcal/kg除脂肪量/日を上回っていたのは、全体で43%であり、性別では男性13%、女性は該当者なし(0%)だった。境界域のEA30~45kcal/kg除脂肪量/日は全体で50%、男性75%、女性17%だった。

LEA(30kcal/kg除脂肪量/日未満)は、男性では研究期間の30%の日で発生し、女性では73%の日で発生していた。エネルギーバランス(energy balance;EB)については、全体で-27±376kcal/日、性別では男性が169±305kcal/日、女性は-289±305kcal/日だった。

主要栄養素別の摂取量とガイドライン推奨値との比較

栄養素の摂取状況を性別にみると、炭水化物は男性4.0±0.3g/kg体重/日、女性2.4±0.3g/kg体重/日で、ガイドラインの推奨する3g/kg体重/日を研究期間中に満たしていた日の割合は、男性82%、女性22%。

蛋白質は、男性1.4±0.4g/kg体重/日、女性1.1±0.1g/kg体重/日で、ガイドラインの推奨する1.2g/kg体重/日を研究期間中に満たしていた日の割合は、男性57%、女性39%。

脂質は、男性1.3±0.1g/kg体重/日、0.9±0.2g/kg体重/日。 なお、これら主要栄養素の摂取量は、すべて男性と女性の間に有意差があり、女性が少なかった。

以上の結果から著者らは、「エリート車椅子アスリートにおけるLEAの頻度は、男性に比較し女性のほうが高かった。エネルギー需要を満たし、トレーニングの適応を最大化するために、より高いエネルギー摂取量が推奨される」とまとめている。また、「筋肉量が相対的に少ない車椅子アスリートにおいて、運動前の炭水化物摂取、および運動後の蛋白質と炭水化物摂取の最適化のために、さらなる研究が必要」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy Availability in Male and Female Elite Wheelchair Athletes over Seven Consecutive Training Days」。〔Nutrients. 2020 Oct 25;12(11):E3262〕
原文はこちら(MDPI)

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