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若年女性を比較、アスリートと非アスリートで摂食障害のリスクが高いのはどっち? スペインの研究

若い女性アスリートは摂食障害の頻度が高いとの報告があるが、その知見と相反するデータが報告された。身体活動習慣のない一般女性のほうがむしろ、摂食障害のリスクスコアが高いという。また、摂食障害リスクスコアと、完全主義のスコアが有意に相関することも示された。著者らは、摂食障害への介入または予防にあたり、過度な完全主義の影響を考慮すべきと述べている。

若年女性を比較、アスリートと非アスリートで摂食障害のリスクが高いのはどちら?

若い女性アスリートの摂食障害の頻度

アスリートでは摂食障害(Eating Disorder;ED)の頻度が高い可能性が指摘されている。アスリートは高いパフォーマンスを達成するために理想的な体格をしているべきで、その理想的な体型とは一般的にスリムな体格として思い描かれることが多く、それがアスリートの摂食障害リスクを高める理由の一つである可能性がある。また、審美的スポーツや体重階級別の競技種目、あるいはやせているほうが有利と考えられやすい持久力スポーツなどでは、コーチや親、その他の関係者から低体重を維持すべきとのプレッシャーがかけられることもある。

EDは男性より女性に多く、アスリートでもこれは同様。ただしアスリートのED発症リスクは、性別、競技種目および競レベルなどによって異なると考えられ、これまでの研究結果に一貫しない部分もみられる。

例えば、女性アスリートのEDの頻度として、ノルウェーからは、審美的スポーツでは42%、持久力スポーツで24%、技術スポーツ(technical sports)で17%、球技で16%と報告されている。またドイツからの別の研究では審美的スポーツで17%、球技3%という数値が示されている。

本論文の著者らは、これら以外の文献にあたっても、「アスリートが本当にEDハイリスクなのかを証明するエビデンスは見当たらない」と述べており、その現状を背景に以下の検討を行った。

スペインの女子新体操・サッカー選手を非アスリートと比較

対象者は、15〜25歳のスペイン人女性プロアスリート80名(新体操とサッカー各40名)と、非アスリート40名。新体操のアスリートは、40名中5名は国際大会レベル、35名は国内大会レベルで、サッカー選手は4年以上にわたる体系的なトレーニング競技経験を有していた。非アスリート群はスペインの公立および私立の中学~大学から、競技スポーツに参加しておらずトレーニングも行っていない者を無作為に抽出した。

評価項目は、メンタルヘルス関連指標として、ローゼンバーグ自尊感情スケール(Rosenberg Self-Esteem Scale;RSE)、完全主義スケール(Child and Adolescent Perfectionism Scale;CAPS)、特性不安尺度(State-Trait Anxiety Inventory;STAI)を計測した。またED関連指標として、摂食態度テスト(Eating Attitudes Test;EAT-40)とEDスクリーニングのための質問票(Sick, Control, One, Fat, Food questionnaire;SCOFF)を用いた。

摂食障害と完全主義、不安の関連が示唆される

対象全体の3割弱が低体重で、新体操選手は平均BMIが18.7

対象者の年齢は、新体操選手が16.60±2.62歳、サッカー選手が17.98±3.42歳、対照群が17.13±2.16歳だった。

BMIは全体でみると16.19~27.01の範囲にあり、平均は20.63±2.77で、62.5%は正常(18.5~24.9)、10%は過体重(25.0以上)で、27.5%が低体重(18.5未満)だった。属性別にBMIが大きい順に挙げると、サッカー選手は22.45±2.93で、一般成人の理想とされる22とほぼ一致し、対照群はやや低く20.73±2.32であり、新体操選手は18.72±1.54と、あと少しで低体重と判定される平均値だった。

スクリーニング(SCOFF)スコアの順位は、平均BMIの順位とは異なる結果に

一方、摂食障害(ED)のスクリーニング(SCOFF)スコアの平均は、対照群が最も高く0.55±0.93、二番目がサッカー選手で0.28±0.72であり、体操選手の平均は0.15±0.58と最も低かった。体操選手と対照群の間には有意差が存在し、対照群のほうがEDのリスクが高かった。

摂食障害スクリーニング(SCOFF)スコアと完全主義が有意に相関

EDのスクリーニング(SCOFF)スコアを従属変数として、年齢、体重、身長、BMI、および、前述のメンタルヘルス関連スケール(自尊心、完全主義、不安)のスコアを独立変数として多重回帰分析を行った結果、社会規定的完全主義(Socially prescribed perfectionism)のみと有意な正相関が認められた(β=0.23,p=0.04)。この完全主義は、不安レベルと有意に関連し(状態不安β=0.34,特性不安β=0.32.p<0.01)、完全主義の背景に強い不安が存在する可能性が考えられた。

著者らはこれらの結果を総括し、「パフォーマンス向上のための体組成を達成するというプレッシャーにより、アスリートは摂食障害のリスクが高いが、一方で身体活動の増加は食事に対する健康的な態度に貢献する可能性がある。実際、本研究はアスリート群に比べて非アスリート群でEDのリスクが高いことを示してる。EDの治療に際しては、適切なレベルの完全主義であることが影響を与えると考えられ、関係者はこの点に留意すべきだろう。青年期の摂食行動の理解を深めるため、さらなる調査が必要」。

文献情報

原題のタイトルは、「Disordered Eating Attitudes, Anxiety, Self-Esteem and Perfectionism in Young Athletes and Non-Athletes」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 Sep 16;17(18):E6754〕
原文はこちら(MDPI)

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