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心血管疾患リスクのある女性の心理状態と栄養摂取行動、BMIの関連性

うつ関連症状は、長期的には心血管疾患のリスクの高さと関連する。例えば、不安が冠動脈疾患の発症リスクを26%、および心臓死のリスクを48%増加させるとするメタアナリシスの結果が報告されている。うつとこれらのリスクの上昇を媒介するメカニズムは明らかになっていないが、感情的な苦痛による身体活動量の低下、栄養価の低い食品の摂取量の増加などの関与が考えられている。

これらの関係は、男性より女性において顕著であり、女性は心理社会的ストレスにより心血管疾患リスクがより高まる可能性がある。このような背景をもとに、今回紹介する論文の著者らは、心血管疾患リスクが高い女性を対象として、心理状態と栄養摂取行動、およびBMIの関連を検討した。

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研究の対象と解析方法について

イスラエルのハダサ大学病院の女性心血管健康センターを受診した患者、連続187例が解析対象。うつや不安、ストレス状態は、うつ病不安ストレススケール21(Depression Anxiety Stress Scale;DASS-21)で評価した。栄養摂取行動は、患者の自己申告データに基づき、過去1週間の摂取量を評価した。果物や野菜、全粒穀物の摂取は健康促進的な食行動、精製穀物、甘味飲料、赤肉や加工肉の摂取は、非健康的な食行動と判断した。

解析対象者は、年齢が25~95歳で平均59.93±11.12歳、BMIは29.20±5.71で37%が過体重、40%は肥満だった。DASS-21スコアは、うつ3.81、不安3.83、ストレス6.20で、一般集団よりも高かった。

うつレベルとBMI、栄養摂取行動の関連

結果について、まず、うつレベルとBMI、栄養摂取行動の関連をみてみる。

うつレベルとBMI、果物摂取量

うつレベルとBMIによる果物の摂取量に消費量の関連を曲線モデルで解析した結果、うつレベルが高い場合(2.28点を上回る場合)には、BMIは果物の摂取量と正相関していた(b=0.06,p=0.03)。うつレベルが低い場合(2.28点以下)には、BMIと果物摂取量は有意な関連がなかった。また、BMIが高い場合(28.3を上回る場合)には、うつレベルは果物の摂取量と正相関していた(b=0.44,p=0.006)。BMIが低い場合(28.3以下)、この関連は有意でなかった。

うつレベルとBMI、野菜摂取量

曲線モデルで解析した結果、うつレベルと野菜摂取量との関連は放物線状であり、うつレベルが正常~軽度の場合(1.18点以下)では、うつレベルと野菜摂取量は負の相関、うつレベルが高い場合(1.18点を上回る場合)では、うつレベルと野菜摂取量が正相関していた。

うつレベルとBMI、甘味飲料摂取量

BMIが高いほど甘味飲料の摂取量が多かった(β=0.19,p<0.05)。これにうつレベルを加えて検討すると、うつレベルが低い場合はBMIと甘味飲料の摂取量の正相関は維持されていたが(b=0.04,p=0.004)、うつレベルが高い場合には、この関連は認められなかった。また、BMIが低い場合は、うつレベルが上がるにつれて甘味飲料の摂取量が増え、対照的にBMIが高い場合は、うつレベルの増加に伴い甘味飲料の摂取量が減少していた。

うつレベルとBMI、精製穀物・全粒穀物・赤肉・加工肉摂取量

BMIと精製穀物の摂取量の間に線形の正の相関が認められた(β=0.20,p<0.05)。一方、全粒穀物や赤肉と加工肉の摂取量は、うつレベルやBMIの影響を受けていなかった。

不安レベルとBMI、栄養摂取行動の関連

次に、不安のレベルとBMI、栄養摂取行動の関連をみてみる。

不安レベルとBMI、果物摂取量

単独またはBMIとの相互作用のいずれにおいても果物の摂取量に有意な影響を及ぼしていなかった。

不安レベルとBMI、甘味飲料摂取量

甘味飲料の摂取量と有意な曲線的な関係にあり、不安のレベルが低い場合は不安が増すにつれて甘味飲料の摂取量が増え、不安が増大するにつれて甘味飲料の摂取量は減少した。この関係にBMIの影響は認められなかった。

不安レベルと赤肉・加工肉摂取量

赤肉・加工肉の摂取量とも曲線的な関係にあり、不安のレベルが正常~軽度の場合は不安が増すにつれて、赤肉・加工肉の摂取量が非有意のわずかな増加がみられた。不安レベルが中程度の以上の場合は、そのレベルの上昇につれて、赤肉・加工肉の摂取量は減少した。

不安レベルとBMI、精製穀物・全粒穀物摂取量

精製穀物の摂取量と有意な曲線的な関係にあり、不安のレベルが正常~軽度の場合は不安が増すにつれて、精製穀物の摂取量が有意に増加した(p<0.05)。不安レベルが中程度以上の場合は、この関係は逆点したが、有意でなかった。

一方、全粒穀物との関連については、不安レベルは単独およびBMIとの相互作用においても、有意な影響を及ぼしていなかった。

ストレスとBMI、栄養摂取行動の関連

続いてストレスとBMI、栄養摂取行動の関連をみてみる。BMIは、甘味飲料と生成穀物の摂取量と関連していたが、ストレスレベルの変化による影響はみられなかった。また、ストレスレベルは、検討された食行動のいずれにも影響を与えていなかった

結果のまとめと考察

これらの結果は、心血管疾患リスクをもつ女性に対し、ライフスタイル面からの介入を行う際に、メンタルヘルス上の問題を評価する必要性を裏付けている。著者らは、「とくに中程度レベル以上の不安は、非健康的な食行動のリスクが高い。これらの女性に対して感情的な食行動の代替手段を示し対処するスキルを伝える必要があるだろう。また、うつレベルが高いに群において、BMIが高い女性はBMIが低い女性とは異なるアプローチが求められる」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Psychosocial Functioning, BMI, and Nutritional Behaviors in Women at Cardiovascular Risk」。〔Front Psychol. 2020 Aug 28;11:2135〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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