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南極探検家のプロテオミクス解析から、オーバートレーニングのバイオマーカーを探る

ある探検家が、南極大陸1,500kmを54日かけ、単独、支援なしでの横断に成功した。このトレッキングの最中と準備段階、回復期も含めた28週間にわたってプロテオミクスモニタリングがなされ、その結果が報告された。身体的な負荷が比較的軽度の時期は免疫関連タンパク質がアップレギュレート(増加)され、身体負荷が強い時期は逆に免疫関連タンパク質のダウンレギュレート(減少)が観察されたという。

南極横断探検家のプロテオミクス解析から、オーバートレーニングのバイオマーカーを探る

アスリートのトレーニング過剰を血液バイオマーカーで察知可能か

アスリートのパフォーマンスは、適度な過負荷とその後の十分な回復のサイクルを繰り返すことで向上する。反対に過度な負荷や不十分な回復が連続し、非機能的オーバーリーチ(Non-functional overreaching;NFOR)またはオーバートレーニング症候群(Over Training Syndrome;OTS)の状態となると、長期的なパフォーマンス低下や心理的障害を引き起こす可能性がある。

NFORやOTSの回避には、それらを診断可能な実用的で高感度なツールが必要だが、パフォーマンスや心理テストの判定と相関のあるバイオマーカーは確立されていない。一方、近年、タンパク質の生体内での動態を総合的に解析するプロテオミクス技術が進歩し、それを利用しNFORやOTSリスクを検出する試みがなされている。本論文の著者らも、3日間の集中的トレーニングによる介入とその後2日間の回復期を観察期間とし、プロテオミクスを用いた検討を行い、13種類のタンパク質クラスターの変動からNFORを特定可能であったと報告している。

このような背景のもと、このたび発表された研究では、南極大陸無支援単独横断という極めて過重な負荷のかかる状態で、NFORやOTSの検出に使用できる新規マーカーの探索が行われた。

摂取エネルギー量7,000kcal/日超、消費エネルギー量は約8,000kcal/日

研究の対象者は33歳の持久力系アスリートで登山家であり探検家。2018年7月から28週間にわたって追跡された。このうち、第5~8週はグリーンランドでのトレッキング期間で、16~23週にかけて南極大陸横断が行われた。24~28週はその回復期間。

第1週と第7週、および第25週に体力パフォーマンステストを施行。また、毎日、一晩の絶食後に被験者自身が指先穿刺により採血し、乾燥標本としたものを毎週木曜日の朝に回収した。木曜日の朝には毎週、トレーニング苦痛スケール(Training Distress Scale;TDS)によって主観的苦痛レベルの推移を評価した。

食事摂取状況は、南極大陸横断中に摂取していたものを横断成功後に再現し、エネルギー量と栄養素を分析した。その結果、南極横断中の摂取エネルギー量は平均7,048kcal/日で、炭水化物45%、脂質44%、タンパク質13%だった。これらのうち、4,138kcal/日はスポーツバーから摂取されていた。一方、南極大陸横断中の消費エネルギー量は8,000kcal/日前後と推測された。

11kg超の体重減少、30%のピックパワー低下

体重、筋力の変化

主観的苦痛レベル(TDS)はグリーンランドでの4週間のトレーニング中が最も低く、南極トレッキング中に上昇し、最後の4週間でピークに達した。第1週から25週の間に、体重は11.4kg減少した。また背筋力は26%、嫌気性パワーは18%、ピークパワーは30%低下した。

プロテオミクス解析の結果

プロテオミクス解析から712種類のタンパク質が同定され、5~8週目のグリーンランドトレーニング)と南極横断中の20~23週目のコントラスト分析の結果、31のタンパク質はアップレギュレートされ、35のタンパク質はダウンレギュレートされたことがわかった。これらの半数以上(56%)は、免疫系機能に関連し、14種は栄養プロセスに関連するものだった。

この結果から、TDSで評価される運動負荷が最も強かった南極大陸横断の後半に、免疫能が最も低下するなどの変動が起きていたことが明らかになった。また、NFORやOTSに一致するパフォーマンスの低下を経験していたことも示された。

著者らは、この研究が南極大陸横断という極めて特殊な条件で行われたものであることから、他の多くのアスリートに外挿できるとは限らないと述べながらも、この領域の将来の方向性を示す結果とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Proteomics-Based Detection of Immune Dysfunction in an Elite Adventure Athlete Trekking Across the Antarctica」。〔Proteomes. 2020 Mar 3;8(1):4〕
原文はこちら(MDPI)

プロテオミクス解析とは

プロテオミクス(日本薬学会)

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