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スポーツパフォーマンスにおけるポリフェノールの役割を探る

ポリフェノールのスポーツパフォーマンスへの影響に焦点を当てたレビュー論文が「Nutrients」誌に掲載された。ポリフェノールは、抗酸化作用と抗炎症作用のある植物性化合物として知られている。このポリフェノールについて、ニュートリゲノミクス(栄養ゲノム学)、腸内細菌叢、エビゲノミクスなどの視点で既報文献を収集し、詳細な検討を行っている。以下はその要点。

スポーツパフォーマンスにおけるポリフェノールの役割を探る

栄養ゲノム学とスポーツパフォーマンス

栄養ゲノム学を適用すべき最も有用な対象は、スポーツのパフォーマンスだ。体重の個人差の50~80%は遺伝的要因が規定し、筋肉の成長にも本質的な影響を及ぼす。さらに、内分泌機能、筋線維組成、心理的側面、運動能力に影響を与える可能性がある。近年、遺伝的多様性が栄養素の吸収と機能に影響を与えることが明らかになってきている。

食事と腸内細菌叢、およびスポーツパフォーマンス

腸内細菌叢は推定100兆個の微生物で構成されており、ヒトと共生している。ヒトの消化管に生息する細菌の約90%は5つの主要な門に属しているが、微生物の多様性が大きいほど健康状態は良好になる。

工業化が進んでいない社会と比較して西洋諸国の人々の腸内細菌叢の多様性が低下しているのは、主に、多用な微生物が利用可能な発酵性食物繊維(Microbiota Accessible Carbohydrates;MACs)の欠如に関連している。

スポーツパフォーマンスにおけるポリフェノールの総論

ポリフェノールは、果物、野菜、穀物、お茶、チョコレートなどのさまざまな食品に含まれ、自然界に存在する共通のフェノール基本骨格を持つ化合物である。スポーツパフォーマンスに対するポリフェノールの影響のメカニズムを理解するため、近年最も重要視されている領域は、腸内細菌叢との相互作用の研究だ。またポリフェノールは、ATP結合カセット(ATP Binding Cassette;ABC)トランスポーターの基質でもある。腸管においてポリフェノールは特定の細菌の増殖を調節し、プレバイオティクスとしても作用する。

ポリフェノールのこれらの作用を介したスポーツパフォーマンスへの影響を理解するには、遺伝的側面、腸内細菌叢との関連、エピジェネティックな反応を考慮し総合的に考える必要がある。

スポーツパフォーマンスにおけるポリフェノールの各論

論文では、各種のポリフェノールについて既報文献のレビューから、遺伝的側面、腸内細菌叢との関連、エピジェネティックな反応について丹念な考察を行っているが、ここでは結論のみから抜粋して紹介する。

クルクミン

平均摂取量;80~200mg/日
メリット;筋肉疲労、筋肉量の減少、筋肉痛を抑制、筋疲労の回復。レドックス恒常性(酸化還元バランス)とインスリン感受性の改善。

レスベラトロール

平均摂取量;100~500mg/日
メリット;骨格筋のミトコンドリア容量増増大。エルゴジェニックおよび抗肥満作用、脂肪酸のβ酸化、糖代謝改善。

ココアフラバノール

平均摂取量;200~500mg/日
メリット;脳血流量増加。血管機能改善。運動による酸化ストレスを軽減。運動パフォーマンスに影響を与えることなく、運動中の脂肪と炭水化物の量を増やす。

ケルセチン

平均摂取量;200~1,000mg/日
メリット;肉体的・精神的パフォーマンスの向上。レジスタンストレーニング中およびトレーニング後の神経筋パフォーマンスを改善。偏心運動性の筋原線維破壊と筋鞘活動電位伝播障害が惹起する筋力低下を抑制。運動後の回復時間を短縮。

緑茶エキス

平均摂取量;250~1,000mg/日
メリット;筋肉の酸化ストレスを軽減し、筋肉疲労による神経筋パラメータにプラスの効果。

ブルーベリーエキス

平均摂取量;75~150mg/日
メリット;運動後の回復促進。血管機能、血管拡張能を改善。

ピクノジェノールR(フランスのマツ樹皮エキス)

平均摂取量;100~800mg/日
メリット;酸化ストレスからの保護。一般被験者と、トライアスロンなどの高負荷のストレスのあるスポーツを行うセミプロアスリートの双方で、トレーニング効果とパフォーマンスを向上。

モンモランシーチェリージュース

平均摂取量;30mL/日
メリット;主に筋力スポーツにおいて、筋肉の回復を促し、運動後の痛みを軽減する。

エクロニアカバポリフェノール(日本・中国・韓国の沿岸で採取される昆布)

平均摂取量;40mg/日
メリット;グルコース酸化の亢進。高強度運動中の乳酸産生抑制。

文献情報

原題のタイトルは、「Deciphering the Role of Polyphenols in Sports Performance: From Nutritional Genomics to the Gut Microbiota toward Phytonutritional Epigenomics」。〔Nutrients. 2020 Apr 29;12(5):E1265〕
原文はこちら(MDPI)

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