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女子サッカー選手に対する栄養指導の推奨事項 ポーランドからの報告

世界で最も人気のあるスポーツの1つ、サッカー。国際サッカー連盟(Fédération Internationale de Football Association;FIFA)によると、2000年から2006年にかけて世界のサッカー人口は2億4,200万人から2億6,500万人へと9%増加し、同時期に女子サッカー人口は2,190万人から2,600万人へと19%増加しており、2014年の女子サッカー人口は3,014万5,700人と推計している。またFIFAは現在も女性のサッカーへの参加を増やすことを目標の1つに掲げている。

女子サッカー選手に対する栄養指導の推奨事項 ポーランドからの報告

女性の栄養所要量は男性と異なる。しかし現在のところサッカー人口は男性の割合が圧倒的なため、サッカー選手の栄養面に関する研究で、女性が研究対象に含まれていた研究はほとんどない。本論文は、文献レビューを行い現時点で女性サッカー選手に推奨可能な事項をまとめたもの。サッカーの強豪、ポーランド発の論文。

エネルギー量

女子選手の必要エネルギー量は男子に比べて一般に少ない。女子サッカー選手のエネルギー消費を検討したいくつかの研究から、2,154±596kcal/日、9.42±0.9MJ/日(2,249±215kcal/日)、2,546±190kcal/日、45.7±9 kcal/kg/日などの報告があるが、試合日かそうでないか、あるいはトレーニング強度などの条件が異なり、解釈の一般化は難しい。

FIFAは、選手向けの栄養ガイドの中で、体重60kgの選手の試合中のエネルギー消費は1,100kcalであると述べている。しかし同ガイドでは、エネルギー消費は競技レベル、プレースタイル、トレーニングなどに強く依存していることを強調している。同じことは女子にも当てはまるだろう。

また、競技レベルのサッカー1試合のエネルギーコストは10MET's、カジュアルゲームでは7MET'sとの報告があり、これは体重60kgのプレーヤーの場合で、それぞれ900kcal、630kcalの消費に相当する。

女子サッカー選手のエネルギー摂取に関する推奨事項

  • エネルギー需要は、各選手のポジションと競技の目標を考慮して、選手ごとに個別に見積もる
  • 消費エネルギー需要は、測定精度の高い機器を使用して推定する
  • 摂取エネルギー量は、プレーヤーの体調に合わせて調整し、最適な除脂肪体重と体脂肪率を維持する
  • 摂取エネルギー量は、30kcal/kg(除脂肪体重)/日を下回るべきでなく、エネルギーの可用性が低いことによる健康とパフォーマンスへの悪影響を防ぐ

主要栄養素

炭水化物

肝臓と骨格筋のグリコーゲンとして保存されている炭水化物は、試合とトレーニングの双方において必須のエネルギー源だ。サッカーの試合を分析した結果から、選手の運動強度は最大70〜80%VO2maxであり、試合中のエネルギー代謝の基質はグリコーゲンである。

FIFAは、低強度で中程度の持続時間のトレーニングの場合は5〜7g/kg/日、中等度の強度で長時間のトレーニングの場合は7〜10g/kg/日の炭水化物摂取を推奨している。一方、英国のフットボール協会は、女子選手への推奨として、前者の条件では5〜7g/kg/日、後者の条件では7〜12g/kg/日を推奨している。グリコーゲンの貯蓄と使用の性差についてのエビデンスは十分でないことは留意すべき点である。

炭水化物については、試合やトレーニング継続時間との兼ね合いが重要となる。試合の合間に炭水化物を摂取することで、プラセボを摂取するよりもサッカーのスキルとスプリントを長く維持できたとする報告がある。ただしこれは男性を対象とする研究であり、女性対象の研究ではない。しかし運動中の炭水化物の摂取の影響が女性と男性とで異なるというエビデンスも存在しない。

もう1つの重要な点は、運動後の炭水化物摂取だ。グリコーゲン合成は運動後の数時間以内が最も高まる。したがって運動後できるだけ早く炭水化物を補給することが推奨される。

女子サッカー選手の炭水化物摂取に関する推奨事項

一般的な推奨
  • 低~中等度の強度のトレーニング:5~7g/kg/日
  • 高強度のトレーニングまたは試合準備期間:7~12g/kg/日
トレーニング前
  • トレーニング前1~4時間:1~4g/kg
  • 主要な試合前36~48時間:10~12g/kg/日
トレーニング中
  • 1~2時間のトレーニングにつき:30g/時
トレーニング後
  • 最初の4時間:1~1.2g/kg/時(トレーニングの間隔が8時間未満の場合)

蛋白質

アスリートと一般成人の蛋白質需要はあまり差がないとする報告がある一方で、アスリートの蛋白質需要は著しく高いことを示す研究もある。国際スポーツ栄養学会のガイドラインでは、身体活動をしている大部分の人に対し、1.4~2.0g/kg/日を推奨している。栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics.元・米国栄養士会)やカナダ栄養士会、および米国スポーツ医学会の推奨は1.2~2.0g/kg/日だ。

炭水化物と同様に、蛋白質もトレーニング前後の適切な時間に摂取する必要がある。運動中および運動後2時間までの20gの蛋白質または9gの必須アミノ酸の摂取が、筋蛋白質合成のプロセスを刺激することが示されている。身体活動の直後に摂取することは、活動終了から3時間後に同じ食事を食べるよりも高い筋蛋白質合成効果をもたらす。もっともこれらの研究のほとんどは、レジスタンストレーニングに関連して行われたものであり、女子サッカー選手に関連する研究は見られない。

女子サッカー選手での研究はないとは言え、ロイシンには注目すべきだろう。ロイシンはイソロイシン、バリンとともに分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids;BCAA)の1つであり、筋蛋白質合成を刺激するために十分なロイシン補給が重要である。最近の報告では、10〜12gの必須アミノ酸、1〜3gのロイシンを含む20〜40gの蛋白質摂取が筋蛋白質合成の刺激に必要であるとされている。

蛋白源としては通常、必須アミノ酸が少ない植物性蛋白質よりも動物性蛋白質のほうが生物学的利用能が高い。具体的には、消化吸収率補正アミノ酸スコア(protein digestibility corrected amino acid score;PDCAAS)の高い、牛乳、卵、および多くの肉類だ。これらは必須アミノ酸とロイシンの供給に有利である。菜食主義者の場合この点で不利だが、大豆蛋白質か良い解決策となり得る。大豆蛋白質のPDCAASは動物性蛋白質に匹敵し、高濃度のBCAAを含む。

女子サッカー選手の蛋白質摂取に関する推奨事項

一般的な推奨
  • 1.2~1.7g/kg/日
  • 筋蛋白質合成の最大化には、3~4時間ごとに20~40g(700~3,000mgのロイシンを含む)
トレーニング中~後
  • トレーニング中とトレーニング後2時間以内に蛋白質20gまたは必須アミノ酸9g
  • トレーニング後とその後3~5時間ごとに0.3g/kgの蛋白質

脂 質

脂質はエネルギー源としての必要性とは別に、細胞壁の必須要素であり、とくに重要な栄養素の1つであるビタミンDを含む脂溶性ビタミンの供給源だ。ただしアスリートにとっては炭水化物や蛋白質のほうがより重要であり、摂取エネルギー量の30%未満に抑制すべきとされる。一方で脂溶性ビタミンと必須脂肪酸の摂取量を確保するために、長期にわたって摂取エネルギー量の20%未満となることは推奨されない。

女子サッカー選手の脂質摂取に関する推奨事項

一般的な推奨
  • 摂取エネルギー量の30%未満
  • 脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の欠乏を防ぐために摂取エネルギー量の20%以上

微量栄養素

女子サッカー選手の微量栄養素の推奨量を調査した研究は見当たらない。ただし、一般的にアスリートが摂取量不足に注意すべき微量栄養素として、鉄、カルシウム、ビタミンDが挙げられる。女性はとくにこれら3栄養素の欠乏に対して脆弱である。

水 分

身体活動前の体重と比較して1〜2%のレベルの脱水は、サッカー選手のパフォーマンスの低下をもたらす可能性がある。しかし、サッカートレーニング中の女性の発汗は、男性と比較して少ない。その差は、ボディーサイズの違いが原因であると考えられる。女性は身体が小さく、体格に対する体表面積は男性に比べ最大34%大きい。したがって、女性の水分補給の必要性は男性に比べて若干少ない。

発汗の量は温度や湿度などのいくつかの環境条件にも依存する。女性のサッカー選手が補給すべき正確な水分量を評価することは困難だが、良い解決策は、パフォーマンスを低下させないために胃を満たさないよう、少量の水分を頻繁に飲むことだ。

トレーニング中は2%を超える減量を防ぐ速度で水分を飲む必要がある。FIFAはトレーニングまたは試合中に失われた体重1kgにつき1.2〜1.5Lの水分を摂取することを推奨している。

汗には水以外にも、失われる他の重要な成分、つまり電解質が含まれている。例えばナトリウム濃度は約35mEq/L、カリウムは5mEq/L、カルシウム1mEq/L、マグネシウム0.8mEq/L、塩素30mEq/Lと推定されている。これらが発汗により失われることを補うために、トレーニング中およびトレーニング後に電解質を含む飲み物を摂取することが推奨される。

女子サッカー選手の水分摂取に関する推奨事項

トレーニング前
  • 1日をとおして水分摂取量に配慮し、トレーニング前の脱水症状を防ぐ
  • トレーニング4時間前に5~7mL/kg
  • トレーニング2時間前まで排尿がないか褐色尿の場合、さらに3~5mL/kg
トレーニング中
  • 体重2%減の脱水レベルを避けるために摂取
  • 胃を満たしすぎないように少量ずつ摂取
トレーニング後
  • 体重1kgの減少につき1.5L
  • 電解質を補う

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition for Female Soccer Players--Recommendations」。〔Medicina (Kaunas). 2020 Jan 10;56(1)〕
原文はこちら(MDPI)

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