サッカーの審判に対するスポーツ栄養介入の重要性 イタリアからの報告
サッカーではレフリーもアスリート
サッカーの進化とともに審判(レフリー)の重要性が増している。今日、レフリーもアスリートとみなすことが一般的で、主だったサッカー連盟は、レフリーのパフォーマンスと健康状態をシステマティックに管理している。
文献的にも、サッカーのレフリーに関するいくつかの報告がある。その多くはVO2mxを計測しパフォーマンスレベルを測定することを試みている。スポーツ栄養の視点で分析を加えた研究も既にあり、十分な栄養、水分摂取、特定の栄養素の欠乏予防(女性審判員における鉄、性別・年齢に関係なくビタミンD)か重要であること、ことに毎日の炭水化物摂取の重要性を指摘している。しかし具体的な栄養戦略に踏み込んだ報告はいまだみられない。本論文の著者らは、サッカーレフリーの栄養調査とともに、アスリートが用いるグリコーゲン超回復(super compensation)戦略が、レフリーとしてのパフォーマンスの向上につながる可能性を検討した。
グリコーゲン超回復
グリコーゲン超回復(Glycogen Super-Compensation)は、一定期間の低炭水化物食下での激しい運動と、それに続く高炭水化物食により発生する。1967年に報告されて以降、とくに筋グリコーゲン枯渇がパフォーマンスに影響する競技時間が1時間以上続く持久力系スポーツのアスリートの間で、この現象の効果に期待が高まりポピュラーな栄養戦略となっている。サッカーのレフリーは持久力のパフォーマーではないもののアスリートの一員であり、このソリューションの効果を検討する必要がある。
研究プロトコル
イタリアサッカーレフリー協会に所属する31名が参加
この研究の対象は、イタリアサッカー審判協会に所属する31名のレフリー。平均年齢22.74±1.79歳、男性30名、女性1名、BMI22.30±1.53、審判経験4年(中央値。四分位範囲2.8~6.2年)で、心臓病の既往がなく、身体的パフォーマンスは同国の競技スポーツ実施基準に適合していた。
ベースライン時の平均摂取エネルギー量は3030.30±225.67kcalで、摂取栄養素バランスは、炭水化物が49.76±30.53%、蛋白質11.09±9.78%、脂質9.78±8.00%。研究期間中、サプリメントやエルゴジェニックエイドの使用はなかった。
3つの異なる条件下でYo-Yoテストを施行
これら31名に対し、3つの異なる条件でYo-Yoテストを施行した。各テスト間に約45日の間隔を設け、3回とも朝食から約1時間後に行った。
最初のテストはベースラインとして実施。2回目は被験者への食事アンケートを基に立てられた個別の朝食を摂食後に実施。3回目は、以下のグリコーゲン超回復を行った後に実施した。まずグリコーゲンを枯渇させる運動負荷の後、高蛋白・高脂肪食を摂取。続く4日目からの3日間は、激しい運動の後に高炭水化物食を摂取。7日目にYo-Yoテストを施行。Yo-Yoテストは被験者のふだんの一般的なピッチである天然芝上で行った。
栄養介入によりYo-Yoテスト結果が有意に向上
初回(栄養介入前)のYo-Yoテストは平均1,760mだった。個別に栄養介入した2回目は2,120mで、初回に比べ有意な向上が認められた(p<0.05)。続く3回目のグリコーゲン超回復施行後のテストは2,280mであり、2回目からの有意な向上は認められなかった(p=0.13)。
さらなる研究が必要
以上の結果から著者らは、「レフリーにとっても運動前の食事が重要であることが確認された」と結論している。また、グリコーゲン超回復により上乗せ効果はみられなかったが、「明らかにサンプル数が不足しており、サッカーレフリーのパフォーマンス向上を可能とする食事戦略を明らかにするため、さらなる研究が必要」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Individualized Breakfast Programs or Glycogen Super-Compensation: Which Is the Better Performing Strategy? Insights from an Italian Soccer Referees Cohort」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 Feb 5;17(3)〕