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スポーツ栄養を個別化するための腸内微生物叢の役割

きっかけは日本発の報告

個別化されたスポーツ栄養戦略における腸内細菌叢へのアプローチに関するレビュー論文が報告された。腸内細菌叢の研究は、肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患を中心に研究されてきたが、腸内細菌叢は食事と運動の双方にかかわるとこから、アスリートのパフォーマンス向上とも関連があると考えられる。

スポーツ栄養を個別化するための腸内微生物叢の役割

著者は、PubMedおよびGoogle Scholarを用いて「腸内細菌叢」、「運動」、「パフォーマンス」、「効果」といったキーワードで文献検索した。すると、ヒットした最も古い論文は日本から報告されたげっ歯類の運動と腸内細菌叢に関するものだった。これ以降もしばらくは主にげっ歯類での検討の報告が続き、その後ヒトでの横断調査が行われるようになったという。以下は本レビュー論文の要約。

腸内細菌叢に対する運動の影響

運動の影響を受ける腸内微生物の特徴

運動の影響を受ける腸内微生物は報告を通じて類似性が認められる。ただし効果については一貫性がない。トレーニングに応答することが示されているものとして、ラクトバチルス(通常は増加)、ビフィズス菌(通常は増加)、プロテオバクテリア(通常は減少)、ストレプトコッカス(可変的)、クロストリジウム(可変的)などがある。

しかしこれらの変動は、体重、体脂肪、血糖値などの変動と連動している。そのような中で、短鎖脂肪酸は運動により増加することは一貫して示されている。

研究間の矛盾の潜在的な原因

これらの研究の結果が異なる理由として、研究デザインや分析方法の違いの影響が考えられる。例えば、対象の相違(ヒトかマウスかラットかなど)、マウスやラットの場合はその系統の違い、食事・餌の違い、健康または疾患の状態、年齢、性別、トレーニング量などである。また、強制トレッドミル負荷は多くの場合、負のストレス応答を誘発する可能性があり、それが腸内細菌叢に影響を与えることも考えられる。

これらの相違に加え、運動に対する腸内微生物叢の反応に、個体間の変動があるために一貫性が欠如するとの報告もある。この点は重要な指摘であり、今後の詳細な研究が求められる。

腸内細菌叢に対するスポーツ栄養の影響

食事の交絡作用

食事は腸内細菌叢に影響を与える主要な要因でもある。腸内細菌叢に影響を与える食品として、乳製品、淡色野菜、海藻、米、穀物、ショ糖などとの関連が報告されており、また蛋白質摂取量、脂肪摂取量、および総食物摂取量との関連も報告されている。運動に関連すると思われる腸内細菌叢の変化は、運動そのものではなく、栄養・食事摂取量の変化に起因している可能性がある。

サプリメントと食事の影響

アスリートの腸内細菌叢と食事の関連がいくつかの研究で報告されている。ただし、アスリートが摂取するサプリメントまたは食生活によって腸内細菌叢がどの程度の影響を受けるかは、過剰な蛋白質摂取による特定の微生物への影響は示唆されているものの、それが宿主に及ぼす潜在的な影響についてはいまだ不明だ。

カフェインはアスリートの間で広く使用されているエルゴジェニックエイドだ。カフェインの主要な摂取源の1つであるコーヒーは、ビフィズス菌の増加などと関連するが、これらの影響は、クロロゲン酸などのコーヒーが含有する他の化合物によるものである可能性も否定できない。

スポーツ栄養の個別化と、食事・運動への反応に対する腸内微生物叢の潜在的効果

スポーツ栄養の個別化と腸内細菌叢

スポーツ栄養は、アスリート個々のトレーニング量、目標、嗜好、さらには遺伝子多型なども考慮した個別化の試みが行われている。その試みの中では腸内細菌叢も考慮されなければならない。例えばカフェインおよび抗酸化サプリメントなどの栄養補助食品に対する応答は、アスリート間で変動性があるが、それは遺伝子多型やベースラインの抗酸化活性に起因していると考えられ、腸内細菌叢もそれらの代謝において重要な要因の1つであろう。ただしこの点はまだ十分な研究がなされていない。

腸内細菌叢のパフォーマンスへの影響

腸内細菌叢とスポーツパフォーマンスとの関連の研究はまだ少なく、酪酸酸性菌がVO2maxと正相関するなどの報告はあるものの、ほとんどが断面調査であり不明な点が多い。ある2種類の細菌量の比率がVO2maxと正相関するとの報告がある一方で、全く反対に逆相関すると報告されているケースもある。

アスリートの健康とパフォーマンスに対するプロバイオティクスの効果

文献検索によりプロバイオティックサプリメントに関する11件の論文が抽出された。それらの中で、パフォーマンスを示すパラメーターのうちの1つのみへの影響を示したものは、プロバイオティックサプリメントのエルゴジェニック効果を完全には報告していない可能性を否定できない。

また、ヒトのプロバイオティクス補充に関する1件の研究を除いてすべて、プロバイオティクスのコロニー形成について報告していない。プロバイオティクスのコロニー形成の違いがサプリメントのエルゴジェニック効果によるものか否かを判断するために、介入前後の参加者から糞便サンプルを収集することが重要である。

腸内細菌叢への抗生物質介入によるパフォーマンスへの影響

スポーツパフォーマンスに対する腸内細菌叢の潜在的効果を引き出すプロバイオティクスとは反対に、抗生物質を用いて腸内細菌叢にアプローチする検討も始まっている。2報の論文があり、それら双方でマウスの運動能力の低下が認められた。

パフォーマンスに対する腸内細菌叢による効果発現メカニズムの要約

これまでの研究から腸内細菌叢は、短鎖脂肪酸の可用性、筋グリコーゲン含有量、抗酸化活性、消化管透過性、乳酸代謝などのメカニズムを介して、運動パフォーマンスに影響を及ぼし得ると考えられる。さらに、グリコーゲン代謝と貯蓄、神経機能の変化、免疫調節、腸内細菌叢とミトコンドリア間のクロストークも含まれる。一方でこれまでに報告されてきたデータは、これらの機能改善が常にパフォーマンスの改善につながるとは限らないことも示している。

スポーツパフォーマンスに対する腸内細菌叢の影響について、決定的な発見はいまだ得られていない。今後検討しなければならない多くの課題が残されている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Review of the Role of the Gut Microbiome in Personalized Sports Nutrition」。〔Front Nutr. 2020 Jan 10;6:191〕

原文はこちら(Frontiers Media)

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