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女性アスリートの妊娠期間中のトレーニング、出産・産後トラブルの発生率の調査報告

女性アスリートの妊娠・産褥期のトレーニングに関するエビデンスレベルの高い情報は十分でない。さらに、エリートアスリートと、身体活動量は多いが非エリートのアスリートとの相違についての情報は、より限られている。

女性アスリートの妊娠期間中のトレーニング、出産・産後トラブルの発生率の調査報告

このような状況を背景に、本研究は出産経験のあるエリートアスリートと非エリートアスリートを対象として、妊娠期間中と出産後のトレーニング量、出産関連トラブルなどをアンケートや構造化インタビューにより横断的に調査し、比較検討した。ノルウェーからの報告。

調査対象:アスリート群は34名で36個の五輪メダル

調査対象はノルウェーの女性エリートアスリートで、比較対照群は非エリートながら身体活動の活発な女性。エリートアスリート群(以下、アスリート群)の登録基準は妊娠前に国際大会に出場経験があり、2015~18年に妊娠・出産し、かつ妊娠後も競技に復帰することを計画しており、妊娠前のBMIが18.5~26。この基準を満たし調査に協力したエリートアスリートは34名であり、オリンピックでのメダル獲得数は、金メダル26個を含む合計36個。

一方の比較対照群は、過去5年以上にわたり週に150分以上の身体活動を行っている25~40歳で、BMIの基準は前記と同様であり、国際大会や国内の全国大会レベルの競技会への出場経験はない34名の女性。

アスリート群の年齢は33.1±3.9歳であり、その他、教育歴、婚姻状況等を含めて対照群と有意差はなかったが、BMIのみアスリート群のほうが低かった(21.6±1.7 vs 22.4±1.7.p≦0.05)。

妊娠期間中から産褥期のトレーニング:筋トレは妊娠後期まで継続

アスリート群のトレーニング量の変化を持久力トレーニングと筋力トレーニングに分けて検討すると、前者は妊娠前に比べて妊娠第一三半期に減少したが、第二三半期にやや回復した。ただし、第三三半期から産後3カ月までは再度減少し、産後3~6カ月には第二三半期と同レベルに増加、産後6~9カ月には妊娠前のトレーニング量に回復していた。

筋力トレーニングについてもほぼ同様の変化がみられたが、第三三半期ではトレーニング量の減少はみられず、第二三半期と同レベルの筋力トレーニング量を保っていた。持久力トレーニング、筋力トレーニングともに第一三半期でトレーニング量が減少するのは、つわりの影響と考えられる。なお、対照群もほぼ同様の変化だったが、トレーニングの絶対量はアスリート群の数分の1程度だった。

出産トラブル:アスリート群は吐き気や腰痛、便秘が少ない

アスリート群では流産11%、早産7%、帝王切開4%であり、これらは対照群と有意差がなく、また、児の出生時体重3,607.1±544.7gや、アプガースコア(出生5分後)9.0±0.7も有意差はなかった。

自己申告による妊娠中のマイナートラブルは、第1三半期ではアスリート群において「疲労」の訴えが85%であり、対照群の38%に比し有意に多かった。第2三半期では対照群において「吐き気」の訴えが47%であり、アスリート群の15%に比し有意に多かった。第3三半期では対照群において「腰痛」の訴えが38%であり、アスリート群の12%に比し有意に多かった。また「便秘」も対照群は44%であり、アスリート群の15%に比し有意に多かった。

パフォーマンスレベル

アスリート群のうち44%は産後3~9カ月(平均では4カ月時点)で、妊娠前のパフォーマンスレベルに回復したと回答し、15%は妊娠前以上に伸びたと回答した。一方、26%はパフォーマンスの低下を報告した。対照群では82%と大半が不変と回答した。

トレーニング関連トラブル

アスリート群の12%にあたる4名が、妊娠中のトレーニングによる1件の骨折を含む負傷を経験していた。それらはいずれも妊娠後期に発生していた。また、産後に4名が骨折を報告した。それらはすべて、産後6週間以内に特化したトレーニングを再開したアスリートであり、うち2名は摂食障害の既往があった(ただしDSM-5の基準は満たしていない)。

栄養やトレーニングのアドバイスへの感想

アスリート群のうち、妊娠中の栄養摂取に関するアドバイスに満足していたと回答したのは18%だった。一方、トレーニングに関するアドバイスには41%が満足していた。

また母乳育児に関しては、アスリート群の12%が母乳育児をしないように推奨を受けていた。他方、アスリート群の88%は母乳飼育を行っており、その87%は6カ月以上の母乳飼育を計画していた。

これらのデータをもとに著者らは結論を以下のようにまとめている。不妊や流産、早産、低出生体重児のリスクはエリートアスリートにおいて高いわけではない。アスリートの4人に3人と対照群の3人に1人は、産後6週以内にルーチンのトレーニングを再開している。アスリートは妊娠中のトラブルに関する訴えが少ないが、ストレス骨折が報告された。ほとんどのアスリートは産後も自分のパフォーマンスレベルは妊娠前と同じかそれ以上と感じていた。

産後の骨折予防には栄養介入が必要

なお、4人ものアスリートが産後にストレス骨折を報告したことに関連し、著者らは「注意が必要」と記している。これらの骨折は、産後早期のトレーニング負荷の急な増加、妊娠中および産後早期の不十分な筋力トレーニング、長期間のスポーツによって生じた相対的なエネルギー不足の蓄積、および妊娠中や授乳期間のカルシウムやビタミンDの摂取不足の影響の可能性を考察している。

そして、「とくにエリートアスリートに対しては、最適なエネルギー、カルシウム、ビタミンDの摂取などの『骨強化戦略』に重点を置くことが、授乳期間の筋力トレーニングやウェイトトレーニングに最も重要であることを示しているのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Elite athletes get pregnant, have healthy babies and return to sport early postpartum」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2019 Nov 21;5(1):e000652〕

原文はこちら(BMJ Publishing & British Association of Sport and Exercise Medicine)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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