β-アラニンが神経筋疲労を軽減し反復スプリント能力を向上する
アミノ酸の一種で骨格筋カルノシンの前駆体であり、筋強や持久力との関連が検討されているβ-アラニンを補給することで、神経筋の疲労が軽減され反復スプリント能力が向上する可能性を示す研究論文が、米国生理学会誌「Journal of applied physiology」に掲載された。
これまでの基礎的実験から、β-アラニン4.0~6.4g/日の補給は筋肉カルノシンを増加させ、緩衝力を高めアシドーシスを抑制することが示されている。理論的にはこれらの作用によって嫌気性解糖が亢進しパフォーマンスが改善すると考えられるが、実証的検討はなされていない。本研究はβ-アラニンの効果を無作為化プラセボ対照二重盲検試験で検討したもの。
試験デザイン
既報に基づく検討より、β-アラニン6.4g/日を4週間摂取することによる筋肉カルノシン増加の統計的検出力を満たすための必要サンプルサイズは、n=9と計算された。よって18名の男性を対象とする試験デザインが組まれた。
ベースライン時の背景は、年齢25±5歳、体重74.3±8.4kg、身長174.8±6.4cm、VO2max43.7±3.8mL/kg/分。試験開始前の6カ月間に、クレアチン、β-アラニン、乳清(ホエイ)蛋白を補給摂取していないこと、試験期間を通じて通常の食習慣を続けることを条件とした。ベジタリアンやビーガンは登録から除外。
対象者は全員まず4週間の高強度インターバルトレーニングに参加した後、無作為に、β-アラニン6.4g/日を連日摂取する群、同量のプラセボを摂取する群の2群に分け、さらに6週間の高強度インターバルトレーニングが行われた。ベースライン時、および4週間の高強度インターバルトレーニング後(つまり6週間の介入前)と介入後に、最大酸素摂取量、反復スプリント能力などを測定するとともに、筋生検を施行した。
主な結果
結果について、群間に有意差がみられた項目を中心に紹介する。
高強度インターバルトレーニング
VO2maxおよび最大有酸素速度は、両群ともに、ベースライン時より介入前、介入前より介入後のほうが有意に上昇していた。しかし乳酸値はβ-アラニン群でのみ有意な上昇がみられた。
反復スプリント能力
介入前と介入後の比較において、β-アラニン群では、ベストタイム、平均タイム、タイムの合計時間が有意に短縮され、乳酸値は有意に上昇していた。プラセボ群は有意な変化がなかった。ベストタイムの変化量は両群間に有意差がみられた。
筋肉カルノシン量
介入前と介入後の比較において、β-アラニン群では、筋肉カルノシン量が有意に増加した一方、プラセボ群は有意な変化がなかった。介入後の筋肉カルノシン量はβ-アラニン群が有意に高値だった。なお、筋肉の緩衝力(pHを7.2から6.5にするために必要な塩酸のモル量)は両群で差がなかった。
ウエスタンブロットによる検討
低酸素状態に対する細胞の適合応答を表すHIF-1α(hypoxia inducible factor-1α)について、介入前と介入後の変化量を比較すると、β-アラニン群の増加量はプラセボ群に比し有意に大きかった。また、乳酸輸送担体MCT4(monocarboxylate transporter 4)は、有意でないがβ-アラニン群の増加量がプラセボ群に比し大きかった。
大腿神経の線維機能
筋肉活性能(voluntary activation)は、β-アラニン群では介入全に比較し介入後が有意に高値だったが、反対にプラセボ群は有意に低値だった。
これらの結果を著者らは、「β-アラニン摂取が高強度インターバルトレーニングに伴う疲労の予防に有用な介入である可能性を示すエビデンスとなり得る」と結論をまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effect of β-alanine supplementation during high-intensity interval training on repeated sprint ability performance and neuromuscular fatigue」。〔J Appl Physiol (1985). 2019 Dec 1;127(6):1599-1610〕
原文はこちら(American Physiological Society)