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栄養専門家の無機硝酸塩に関する知識と考え方 英国の調査結果

緑葉野菜やビートルート(ビーツ)などのさまざまな食品に自然に含まれる多原子イオンの無機硝酸塩は、ハムなどの加工肉製品の防腐剤としても添加されている。長年にわたりこの化合物の摂取は、その還元生成物である亜硝酸塩とともに、発癌やメトヘモグロビン血症のリスクを高めると考えられてきた。その結果、WHOにより許容摂取量が定められた。しかし近年の新たな報告により、従来の考え方が疑問視されつつある。実際、WHOは2010年になり「食品中の硝酸塩の発癌性について、ヒトに関してのエビデンスは不十分である」と宣言した。また通常の食生活で消費される量の硝酸塩は、メトヘモグロビン血症を引き起こさないこともエビデンスが蓄積されつつある。

栄養専門家の無機硝酸塩に関する知識と考え方 英国の調査結果
ビーツには硝酸塩が多く含まれている

このような変化の重要な契機となったのは、硝酸塩が一酸化窒素生成の基質であり、潜在的に有益な効果を持つ可能性があるという発見だった。例えば食事による現実的な量の無機硝酸塩摂取で、血圧が低下され血管内皮機能を改善し、訓練されたアスリートの運動パフォーマンスを向上させることがわかってきた。さらに最近の観察研究では、心血管疾患による死亡リスクの低下と硝酸塩の摂取量が相関していると報告された。

こうした硝酸塩関連の研究の増加にもかかわらず、この新しい知見が栄養専門家にどの程度影響を与えているのか明確に把握されていない。そこで本研究では、栄養の専門家の無機硝酸塩に関連する認識を確認することを目的とし、オンラインアンケートを行った。

英国における栄養専門家、計125人がアンケートに回答した。回答者の内訳は、女性73%、30歳以下42%で、学歴は学位以下が23%、修士レベルが48%、博士が29%。以下はその回答の抜粋。

無機硝酸塩に関する知識および認識

回答者の71%は無機硝酸塩の情報を聞いたことがあった。51%はこの多原子イオンが主に有益であると考えていた。59%がスポーツのパフォーマンスを改善し、54%が血圧を低下させることを知っていたが、血糖値、肺機能など、無機硝酸塩の摂取に関連する可能性のあるその他の生理学的効果については「わからない」との回答が多かった(それぞれ78%、73%)。

硝酸塩の平均摂取量や許容摂取量に関しても「わからない」との回答が多かった(それぞれ65%、64%)。同様に80%は、硝酸塩の許容摂取量に改訂が必要かどうか「わからない」と答えた。

無機硝酸塩の食事源と硝酸塩の食物含有量に影響する要因の知識はおおむね良好で、回答者の70%、69%、42%、52%がホウレンソウ、ビートルート、レタス、ダイコンを硝酸塩が多いと正確に回答し、46% 、51%、43%、42%が、ソーセージ、トマト、チョコレート、ベーコンを硝酸塩が少ないと正しく回答した。また大半は、食品の硝酸塩含有量が調理(59%)、季節(58%)、土壌条件(79%)、肥料の使用(71%)、および貯蔵条件(47%)に影響されることを認識していた。

無機硝酸塩に関する知識と教育歴との関連

無機硝酸塩の知識は、教育レベルにより顕著に異なっていた。学士と比較して修士または博士号を取得している人はより多くの知識があった。具体的には、修士号または博士号を取得している回答者は、無機硝酸塩に関する情報を聞いている頻度が高く(学士41%、修士78%、博士86%。p=0.001 vs 学士以下)、この化合物を有益であると認識していた(同順に28%、63%、53%。p=0.002)。

また、高学歴者は無機硝酸塩がスポーツのパフォーマンスを向上させ(35%、71%、64%。p=0.017)、血圧を低下させる(41%、53%、69%。p=0.016)と認識していた。加えて博士号を持つ人は、硝酸塩の平均摂取量(3%、14%、28%。p=0.017)や、ビートルートを高硝酸塩食品として正しく認識していた(45%、76%、81%。p=0.020)。

事後解析により、博士号を持つ回答者は学士号以下の回答者に比較し無機硝酸塩関連の有意に高い知識を有し(p=0.01)、修士号レベルの回答者も有意でないながらその傾向があった(p=0.054)。

文献情報

原題のタイトルは、「Knowledge and beliefs about dietary inorganic nitrate among UK-based nutrition professionals: development and application of the KINDS online questionnaire」。〔BMJ Open. 2019 Oct 31;9(10):e030719〕

原文はこちら(BMJ Publishing)

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