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国際スポーツ栄養学会がウルトラマラソンの栄養に関する見解を表明

国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)はこのほど、ウルトラマラソンのトレーニングとレースに関して栄養面で考慮すべき事項をまとめた。関連文献の検索と客観的かつ批判的レビューの結果を情報提供するもの。

国際スポーツ栄養学会がウルトラマラソンの栄養に関する見解を表明

ウルトラマラソンの実践者は過去30年間で着実に増加しており、競技スポーツとしての人気が上昇している。それにもかかわらず、ほとんどの参加者は、「完走」することを目的として個人的にレースへ参加している。またウルトラマラソンは多くの場合、遠隔地で行われ、さまざまな地形、極端な温度と高度の条件下で争われる。

一般に、トレーニングとレースに求められる栄養要求は、競われる距離と一致する。ウルトラマラソンにおいて距離はさまざまに変動し、例えば50 kmとマラソンより若干長い程度のレースもあれば、スパルタスロンのように245 kmに及ぶレースもある。さらにマルチステージ(宿泊を伴い全体がいくつかのステージに分かれているレース)では、数千キロに及ぶものもある。

レース中、ランナーは脱水や低ナトリウム血症を回避し、かつ当然ながらエネルギーを補給しなければならない。最近の報告によると、アマチュアウルトラマラソンランナーの約90%が、パフォーマンスにおいて栄養が基本的な役割を果たすと考えている。それにもかかわらず、アスリートおよびコーチは、栄養要求を満たすために多くの問題に直面しているのが現状。

本報告には、主にシングルステージ(一気に完走する形式)のウルトラマラソンを主題として、栄養面の推奨事項が掲げられている。内容は多岐にわたるが、そのうちのいくつかをピックアップする。

トレーニングの推奨事項

  • ウルトラマラソンランナーは、個別化された戦略でトレーニングのカロリー要求を満たすことを目指すべき。
  • アスリートは、脂肪の酸化能力を高めることを可能にする十分な時間をとり栄養戦略を計画し、実施すべき。
  • エビデンスによると、中程度から高程度の炭水化物の食事を含むことが圧倒的に支持される(すなわち、エネルギー摂取量の約60%、5〜8g/kg/日)。トレーニングにより誘発される慢性的なグリコーゲン枯渇の悪影響を軽減し得る。
  • 低強度トレーニングの前に炭水化物摂取を制限する、または毎日の炭水化物摂取を調整することにより、ミトコンドリア機能と脂肪の酸化能力の向上を期待できる。ただし、このアプローチは、高強度運動でのパフォーマンスを低下させる可能性がある。
  • 除脂肪体重を維持しトレーニングからの回復をサポートするには、蛋白質の摂取量が約1.6 g/kg/日必要だが、カロリーを非常に必要とするトレーニング中は最大2.5g/kg/日まで増える。

レースの推奨事項

  • カロリー不足を緩和するために、ランナーは150~400Kcal/時を摂取することを目指すべき(炭水化物30~50g/時、蛋白質5~10g/時)。単位当たりカロリーの高い食品を、食物の嗜好等を考慮し選択する。
  • レース中は、450〜750mL/時(20分ごとに約150〜250mL)の水分摂取が推奨される。
  • 低ナトリウム血症のリスクを最小限に抑えるには、ほとんどの市販製品が提供する濃度より高い濃度の電解質(主にナトリウム)が必要になる(つまり、575mg/L以上のナトリウム)。
  • 高温・高湿度状態では液体および電解質の要件が高くなる。
  • エビデンスによれば、低FODMAPダイエット(発酵性オリゴ糖、二糖、単糖およびポリオールを控える)が支持され、レース中の胃腸障害の症状を緩和する。
  • ケトジェニックダイエットがウルトラマラソンのパフォーマンスを改善するとのエビデンスは不足しており、さらなる研究が必要。
  • 睡眠不足がアスリートの安全性を損なう可能性がある場合、レースの後半でパフォーマンスを維持するためのカフェインの戦略的使用がエビデンスにより支持される。

文献情報

原題のタイトルは、「International Society of Sports Nutrition Position Stand: nutritional considerations for single-stage ultra-marathon training and racing」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Nov 7;16(1):50〕

原文はこちら(Springer Nature)

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