運動モチベーションに"胃"も関与 摂食ホルモンの新たなメカニズムを発見
運動のモチベーションは脳内の活動だけでなく、摂食ホルモンの「グレリン」も関与しているという研究結果が久留米大学から報告された。「Journal of Endocrinology」誌に論文発表されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。グレリンは胃内分泌細胞で生産されるホルモンだが、ドーパミンとの関係が深い脳内報酬系にも作用し、運動のモチベーションを高めているという。
グレリンは、久留米大学分子生命科学研究所の児島将康氏らが1999年に発見した摂食ホルモンの1種で、空腹時に分泌され食欲を亢進させる。このグレリンの新しい作用を探究する目的で研究を進めたところ、グレリンが欠損しているマウスは、摂食には影響がないものの、自発運動量が少ないことが判明した。
そこで、運動量が低下しているグレリン欠損マウスに、食事のリズムに合わせてグレリンを投与したところ、運動量が回復することがわかった。
グレリンは脳にはほとんど存在せず、胃を中心とした消化管(末梢組織)が主な産生部位。今回の研究により、末梢組織から中枢に運動のモチベーションを伝えるシグナル分子/経路が存在することが想定され、運動へのモチベーションには中枢だけでなく末梢組織(胃)も重要な役割を果たしている可能性が示された。
運動継続の秘訣は食事のリズム
研究グループでは「運動へのモチベーションはグレリンが分泌される空腹時に高まるため、食事のリズムを工夫すれば、グレリンの分泌リズムも変化して運動に対する意欲も高まると考えられる。逆に食事のリズムが崩れると、運動に対する意欲が低下する可能性がある」としている。また、今後の展望として、「この研究成果は運動習慣をサポートするための機能性表示食品やサプリメントの商品開発に役立つことが期待される」と述べている。
プレスリリース
【研究成果】摂食ホルモンが運動へのモチベーションに関与する新規メカニズムを発見(久留米大学)
文献情報
論文のタイトルは「Voluntary exercise is motivated by ghrelin, possibly related to the central reward circuit」。〔J Endocrinol. 2019 Oct 1. pii: JOE-19-0213.R2〕