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一般成人の運動能力向上と関連するのは、動物性ではなく植物性のタンパク質

タンパク質に関して、一般的には動物性タンパク質のほうがそのアミノ酸スコアの高さから摂取が推奨されることが多い。しかし、その一般的な理解とは相反する研究結果が報告された。動物性ではなく、植物性タンパク質が一般成人の運動機能向上と関連するというデータだ。

一般成人の運動能力向上と関連するのは、動物性ではなく植物性のタンパク質

この研究は、2007~2010年にイタリアで行われた呼吸器疾患に関する症例対照研究の参加登録者の中から、呼吸器疾患やその症状のない者223名を被験者として実施された。被験者の食習慣は、がんと栄養に関する欧州前向き研究の手法で調査。また運動能力は、6分間の歩行距離テストで評価した。

対象者の主な背景は、平均年齢45.8±9.6歳、男性43.0%、BMI24.4±4.0、日常の身体活動:強度7.6%・中等度44.0%・軽度48.4%、エネルギー摂取量(中央値。以下同)1,894.4kcal/日、動物性タンパク質48.2g/日(0.7g/kg/日)、植物性タンパク質24.3g/日(0.4g/kg/日)。

さて、運動能力として評価された6分間歩行距離の計測結果をみてみよう。

最初に、一般成人のタンパク質摂取量として推奨される0.8g/kg/日を基準とし、それ以下または以上の2群に分けて比較すると、両群同等で有意差がなかった(599.8 vs 598.1m,p=0.89)。

次に、植物性タンパク質と動物性タンパク質の摂取量との関係をみてみると、植物性タンパク質の摂取量が10g/日増加すると、6分間歩行距離は13.2m有意に増えるという関係が認められた(p<0.001)。一方、動物性タンパク質の摂取量が10g/日増加した場合の歩行距離は、明らかな変化が認められなかった(p=0.881)。

続いて、潜在的な交絡因子として考えられる性別や年齢、身長、体重、喫煙習慣、併存疾患、身体トレーニングの強度、および植物性タンパク質以外のすべての栄養素(動物性タンパク質、脂質、炭水化物)で調整し検討したが、植物性タンパク質の摂取量が10g/日増加により6分間歩行距離は20.0m増え、引き続き有意な関係が認められた(p=0.041)。同じように交絡因子を調整のうえ動物性タンパク質との関係をみたが、やはり有意でなかった(p=0.64)。

ちなみに、脂質や炭水化物の摂取量と歩行距離との間にも関連はなかった(それぞれ、p=0.69,p=0.44)。また、植物性と動物性に分けるのではなく、総タンパク質として前記の交絡因子を調整し検討したが有意な関係はみられなかった。

動物性でなく、植物性タンパク質の摂取量が運動能力と関係しているという結果について、本論文の著者らも「予想外であった」と記している。そして、この意外な結果をもたらした考えられる理由として、以下の考察をしている。

まず、本研究の対象者が運動選手ではなく一般成人であること、そして一般成人を対象とする研究としては年齢が従来の報告より比較的若いこと、植物性タンパク質の摂取が筋肉量の維持に関連するという中国や日本での観察研究の報告もあること、筋肉量に影響を与える可能性がある酸化防止剤などが植物性食品に添加されていた可能性、などを挙げている。

また、菜食主義の食習慣は、脂質異常症や高血圧、肥満等のリスクが低いという健康上の利点を有しており、それらのリスク因子の結果として生じる心血管疾患は運動能力にマイナスの影響を与える可能性がある。よって植物性タンパク質の摂取と運動能力の正の関連は、筋肉への直接的な影響ではなく、一般的な健康上の利益によって媒介されていると推測することもできると著者らは述べている。つまり、植物性食品が豊富な食事は健康的な生活習慣の一部であり、それによって運動能力が向上していた結果を評価した可能性も考えられるという。

結論として、「今回の研究で観察された運動能力の差は10g/日の植物性タンパク質摂取で20mの増加であり、実際には大きな差とは言えない。しかし性別による差(交絡因子調整後で25.3m)に匹敵し無視できない。この結果が植物性タンパク質の摂取量そのものに関係するのか、植物ベースの食品の抗酸化特性の結果なのか、植物が豊富な食生活に関連する何らかの有益な効果の結果なのか、さらなる調査に値する。植物性タンパク質の摂取量を増やすことを推奨することは、一般集団の運動能力を改善するための有用な手段となる可能性がある」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Vegetable but not animal protein intake is associated to a better physical performance: a study on a general population sample of adults」。〔Food Nutr Res. 2019 Sep 19;63〕

原文はこちら(Swedish Nutrition Foundation)

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