若手アスリートへのスマホアプリによる栄養教育には、ピアサポートなどの仕組みが必要か
アスリートに対するスマートフォンのアプリケーションを活用した栄養教育の効果を検討した結果が報告された。講義型の教育に比べて有意な違いはなかったという結論だが、報告の細部から改善点が浮き彫りにされている。
この研究は、フィンランドの持久系スポーツアスリートを対象に行われた。対象者は16~20歳の若年者とされた。この年齢は競技成績のステップアップのため親元から離れ自活をスタートする年齢。栄養に関する知識が不足していることが多く、栄養教育が最も必要とされる世代。
フィンランドスポーツアカデミーとフィンランド軍事スポーツ連盟から募集した計79名を2群に分け、1群には講義形式による栄養教育を2週間で3回実施。講義内容は、エネルギーや水分需給と運動能力の関係、持久系アスリートの観点からの栄養補給、体重管理、大会競技日の食事、道路上での食事、サプリメントについて、など。
もう1群には、前記の講義形式の栄養教育に加え、各講義の終了後4日間はスマホによって食事記録を撮影し、かつその食事内容に関する自己分析文を入力。またアプリを介して栄養士から、食事内容に関するフィードバックを受け取った。
栄養教育の効果は、78項目からなる調査票によって、教育介入前、介入5週間後、および17週後の追跡調査終了時に評価した。
対象者79名の主な背景は、年齢18.0±1.4歳、男性56%、競技種目はクロスカントリースキーが33名、持久力ランニング・競歩が18名など。
結果をみると、まずエネルギー摂取量は、教育介入前から介入後に、講義形式のみの群とアプリによる教育を追加する群の両群で、有意な増加が認められた(p=0.001)。同様に、体重に関しても介入によって両群とも有意に増加していた(p=0.001)。さらに、栄養に関する知識も両群ともに有意に向上していた(p<0.001)。しかし、これらのいずれも、教育ツールの違いによる群間差は生じていなかった(栄養知識はp=0.309)。
より細かく分析すると、すべての講義に参加した者はそうでなかった者よりも有意に栄養に関する知識が向上していた(p<0.001)。また、講義+アプリの群に割り当てられていた者のうち、実際にアプリを活用していた者は、アプリ活用群であるにもかかわらずアプリを用いていなかった者よりも、有意に高い知識スコアを得ていた(p<0.001)。
この研究からはアプリ使用による栄養知識向上の追加効果は認められなかったが、既報には効果を報告しているものもある。本論文の著者らは、この研究で効果が示されなかった理由として、本研究のアプリには被験者同士が支え合うピアサポート機能が搭載されていなかったことによる可能性を考察し、「今回の結果はアプリを使用したアプローチが有益でないことを証明するものではない」と述べている。
実際、アプリ活用群に割りつけられていた者のうち、しっかりアプリを活用していた者は有意な効果がみられていることが、その証左と言えるかもしれない。また講義をすべて受講した者は有意に知識レベルが向上していた。結局のところ、いかにアスリートの興味を引き立たせるかが、効果を発揮させるポイントと言えそうだ。
文献情報
原題のタイトルは、「The Impact of Nutrition Education Intervention with and Without a Mobile Phone Application on Nutrition Knowledge Among Young Endurance Athletes」。〔Nutrients. 2019 Sep 18;11(9). pii: E2249〕