長距離・超長距離ランナーの消化器症状、摂取栄養素と関連ある?
長距離ランナーにとって常に付きまとう不安と言えば、腹痛などの消化器症状。そのせいで思うようにトレーニングを進められなかったり、本番で実力を十分に発揮できない人も少なくない。問題が消化器に生じる症状であるからには、摂取栄養素、つまり食べたり飲んだりしたものが関係しているのかもしれず、だとすれば栄養介入の可能性が考えられる。
そこで今回紹介する文献は、マラソン、および、60km、120kmという長距離レースにおいて、競技中・競技後に生じた消化器症状を、Webベースのアンケートで回収し、症状発現と関連する要素を検討したオランダからの報告だ。Webでの募集に対し252件のデータが収集された。内訳はマラソンが177件、60kmが64件、120kmが11件。すべてのランナーから、競技中および競技終了後12時間以内に発生した消化器症状、その他の愁訴を集め、消化器症状に関しては、1点(問題なし)から10点(経験したことのないひどさ)の間で点数化し回収した。このうち2~4点を軽度、5点以上を重度と定義した。
登録者の背景をみると、年齢は平均43歳、走行速度は平均9.9kmで、平均記録はマラソンが4時間16分、60kmが5時間50分、120kmが12時間30分。120kmランナーは他のカテゴリーよりやや高齢だが有意差はなかった。
さて、気になる結果だが、まず競技中の愁訴をみると、全ランナーの実に89.3%が何らかの症状を訴え、49.0%は1つ以上の重度症状を訴えていた。愁訴のあった割合を走行距離別にみると、マラソンでは87.8%、60kmでは90.7%、120kmでは100%だった。消化器症状に関しては、120kmランナーはマラソンランナーに比して有意に高く、一方、120kmと60kmランナー、およびマラソンと60kmランナーの間には有意差がなかった。
競技後の愁訴に関しては、70.6%が消化器症状その他を訴えていた。このうち消化器症状に関しては、マラソンランナーの72.0%、120kmランナーでは87.5%が訴えており、両者に有意な群間差が認められた。120kmと60kmランナー、およびマラソンと60kmランナーの間には有意差がなかった。
全ランナーのエネルギー摂取量の平均は200kcal/時、平均水分摂取量は358m/時、炭水化物摂取量は42.1g/時だった。これらの中で、60kmランナーの炭水化物摂取量がマラソンランナーに比して有意に高かった(51.6g/時 vs 41.4g/時,p=0.042)ことを除き、走行距離による有意差は認めなかった。
結果的に、競技中・競技後の消化器症状と摂取栄養素との間に明確な関連性は認められなかった。結論として、摂取栄養素の偏りは、長距離走に伴い高頻度に発生する消化器症状に影響を与える要因の一つであるにとどまる可能性が示唆された。
文 献
原題のタイトルは、「Gastrointestinal Complaints and Correlations with Self-Reported Macronutrient Intake in Independent Groups of (Ultra)Marathon Runners Competing at Different Distances」。〔Sports (Basel). 2019 Jun 7;7(6)〕