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「朝食を抜く」「夜遅い夕食」は骨粗鬆症性骨折リスクを高める可能性 食習慣と骨折の関連を調査 奈良県立医科大学

朝食抜きと遅い夕食の習慣が、骨粗鬆症性骨折リスクの上昇と関連していることが、初めて明らかにされた。奈良県立医科大学の研究グループの研究結果であり、「Journal of the Endocrine Society」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。

「朝食を抜く」「夜遅い夕食」は骨粗鬆症性骨折リスクを高める可能性 食習慣と骨折の関連を調査 奈良県立医科大学

研究の背景:食習慣は骨粗鬆症による骨折リスクに関連があるのか?

骨粗鬆症による骨折は、とくに高齢者においてADL(日常生活動作)の低下を引き起こし、本人および家族のQOL(生活の質)を大きく損なう。寝たきりや施設への入所につながることもあり、生命予後にも影響を及ぼす。また、骨折による手術費、リハビリテーション費、そして介護費など、経済的負担も大きくなるため、骨粗鬆症を正しく診断・治療し、骨折を予防することは非常に大切。

骨粗鬆症の予防には、リスクの高い人を把握する必要がある。骨粗鬆症のリスクは、加齢、家族歴、薬剤に加え、さまざまな生活習慣がリスクとして関連している。これまで、喫煙、運動不足、睡眠不足が骨粗鬆症のリスクであり、食事のカルシウムやビタミンDの摂取不足の関連は言われていたが、いわゆる食習慣そのものに関する報告は限られていた。朝食抜きは骨密度の低下と関連する可能性があると報告されていたものの、実際の骨折リスクとの関連は不明だった。また夜遅い夕食に関しては、骨粗鬆症との関連を調べた研究自体が存在しなかった。

そこで今回の研究では、健康診断結果と紐づけられた日本の大規模なレセプトデータベース(病院や薬局が保険者へ請求する「診療明細(レセプト)」を匿名化して集めた巨大なデータベース)を活用し、生活習慣に関する問診に答えた人を対象に、「朝食抜き」「遅い夕食」という食習慣が骨粗鬆症性骨折に与える影響を調べた。

研究の成果:食習慣だけでなく、さまざまな生活習慣が骨折リスクに関連している

1,100万人の健診データが連結された日本の大規模レセプトデータベース(DeSCデータベース)を用いて、2014~22年に健康診断を受診し、骨粗鬆症の既往がない20歳以上の人を対象に解析を行った。生活習慣に関する情報は、健康診断時の問診票から取得し、朝食抜き(週3回以上朝食を抜いた)、遅い夕食(週3回以上、就寝2時間以内の夕食を摂る)に加えて、喫煙、運動、睡眠の質など、ほかの生活習慣もあわせて収集した。アウトカムは、レセプトデータに基づき、骨粗鬆症性骨折(大腿骨・橈骨遠位端・脊椎・上腕骨の骨折)の診断とした。

健康診断日を起点として、骨粗鬆症性骨折の発生または観察終了日までを追跡し、不健康な生活習慣の有無による骨折のリスクをCOX比例ハザードモデル※2により求めた。個々の生活習慣による独立したリスクを正確に計算するために、交絡因子となり得る既知の骨粗鬆症のリスクである、年齢や性別、ステロイド薬などの薬剤歴、関節リウマチ・糖尿病などの疾患の有無などで調整した。

対象者92万7,130人を、中央値2.6年追跡したところ、2万8,196人に骨粗鬆症性骨折が発生していた。骨折リスクについて、ほかのリスク因子を調整した後の骨折リスクハザード比(95%CI)は、朝食抜きが18%増加(調整ハザード比※3〈aHR〉1.18〈95%信頼区間※41.12~1.23〉)、遅い夕食が8%増加(aHR1.08〈1.04~1.12〉)を示した。その他の生活習慣では喫煙が11%増加(aHR1.11〈1.06~1.17〉)、運動習慣なしが9%増加(aHR1.09〈1.06~1.11〉)、不十分な睡眠が5%増加(aHR1.05〈1.02~1.07〉)と関連していた。さらに、朝食抜きと遅い夕食習慣をあわせ持つ人は、骨折リスクが23%増加(aHR1.23〈1.13~1.34〉)と、相加的にリスクが増加するという大きな影響が認められた。

とくに重要な点として、朝食を抜く習慣のある集団では、男性が多く、遅くに夕食を摂る、喫煙、運動不足、睡眠不良、体重増加傾向など、複数の不健康な生活習慣の集積が認められた。このことは、朝食抜きという習慣そのものよりも、その背景にある生活スタイルを明らかにして介入することの重要性を示唆している。例えば、働き盛りで忙しい男性では、朝食を摂る時間が確保できず、帰りが遅く夕食も遅くなりがちであることや、ストレスによって喫煙や飲酒量が増える可能性なども考慮する必要がある。

本研究の限界として、観察研究であることから因果関係を示すものではない点が挙げられる。生活習慣の改善によって本当に骨折を予防できるかどうかの証明には、前向きの介入研究が必要。一方で今回の結果は、肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などは生活習慣病として知られているが、骨粗鬆症も重要な生活習慣病の一つであることを明確に示している。骨の健康のためにも、健康的な食習慣とともに運動習慣、禁煙、お酒を飲み過ぎないなど総合的な指導が大切と言える。

プレスリリース

朝食抜き・遅い夕食の習慣は骨折リスクを高める可能性があるー1100万人のデータ解析で食習慣との関連を初めて明らかにー(奈良県立医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Habits and Osteoporotic Fracture Risk: Retrospective Cohort Study Using Large-Scale Claims Data」。〔J Endocr Soc. 2025 Aug 28;9(9):bvaf127〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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