思春期のネット依存が食事の質の低下を招き、摂食障害のリスクを高める可能性 トルコの高校生対象調査
思春期におけるインターネット依存やソーシャルメディア使用障害は、食事の質の低下を介して摂食障害のリスク上昇と関連しているとする研究結果が報告された。トルコの高校生を対象とする横断研究の媒介分析とネットワーク分析からの知見であり、著者らはネット依存をターゲットとする介入が、この世代の食習慣と精神的健康を向上させ得ると述べている。
思春期のネット依存や食習慣の乱れは、後年の健康にも影響を及ぼす可能性がある
思春期は心理社会的発達の重要な時期であり、保護者の影響力の低下、および、感受性の高まりにより仲間から受ける力の上昇によって行動パターンが形成され、それが精神的・および身体的健康を左右する。思春期の行動パターンのうち、乱れた食行動(disordered eating;DE)は、有病率の高さと影響の及ぶ範囲の広さから、とくに重要な懸念事項として浮上している。最近のシステマティックレビューとメタ分析では、思春期の約22%に乱れた食行動(DE)がみられると推定されている。DEはしばしば、食事制限、過食、体型への過度なこだわりと結びつき、摂食障害(eating disorders;ED)のリスクと関連している。
一方、思春期のもう一つの問題として近年、インターネット依存症とソーシャルメディア使用障害の双方を含めた、問題のあるインターネットの使用(problematic internet use;PIU)の重要性が指摘されるようになった。PIUは、感受性とアイデンティティー形成が進む思春期において不適応な行動を増やすと考えられており、かつDEの修正可能な危険因子として報告されている。
他方、健康的な食習慣を含む健康的なライフスタイルは、ストレスや不安を軽減し、感情を安定させることが示されている。よって、健康的な食生活を守ることは、DEとPIU双方のリスクを抑制する可能性がある。
健康的な食習慣のパターンとして、地中海食が世界中で広く知られ実践されている。大うつ病性障害を含む精神疾患の治療における地中海食の有効性に関するエビデンスも存在し、さらに思春期世代の心理的苦痛の軽減や自己管理力との関連の報告もある。
以上を背景として本論文の著者らは、地中海食の実践状況で評価した食事の質が、思春期の子どものPIUの少なさやDEリスクと関連している可能性を想定し、以下の研究を行った。研究仮説として、(1)PIUはDEリスクと正の相関関係にある一方、食事の質は負の相関関係がある、(2)食事の質はPIUとDEリスクの関係を媒介する――という2項目が設定された。
トルコ国内の高校生を対象に横断調査を行い、媒介分析およびネットワーク分析
研究対象は、トルコ国内から無作為に選ばれた高校3校の生徒647人。乱れた食行動(DE)または問題のあるインターネットの使用(PIU)のため治療中の生徒、出席していない生徒、保護者の同意のない生徒は除外されている。なお、事前の統計学的検討で、この仮説の検証に必要なサンプルサイズは631と計算されていた。
PIUやDEのリスク、食事の質などの評価には次項に挙げる、いずれも精度検証済みの評価法を用いた。
解析対象となった高校生の特徴
解析対象者のおもな特徴は、年齢16.0±0.90歳、男子46%で、BMIは20.8±3.0であり、31%が低体重、11%が過体重・肥満だった。
摂食態度調査票(Eating Attitudes Test;EAT-26)は26項目で、それぞれ0~4点のリッカートスコアで回答し、合計20点以上の場合、乱れた食行動(DE)のリスクありと判定する。本研究では平均13.1±11.0点であり、20点以上でDEリスクありとされたのは18.2%だった。
若年者対象インターネット依存度テスト短縮版(Young Internet Addiction Test;YIAT-SF)は、12項目でそれぞれ1~5点のリッカートスコアで回答し、スコアが高いほど依存度が高いと判定する。本研究では平均31.3±9.6点であり、乱れた食行動(DE)リスクの有無で比較すると、DEリスクなし群(30.0±9.0点)に比較しDEリスクあり群(36.0±10.64点)は、スコアが有意に高かった(p<0.001)。
ソーシャルメディア障害(Social media disorder;SMD)尺度は、9項目の質問の5項目以上に該当する場合に、ソーシャルメディア障害と判定する。本研究での平均該当項目数は3.1±2.3であり、乱れた食行動(DE)リスクなし群(2.9±2.2)に比較しDEリスクあり群(4.1±2.5)は該当項目数が有意に多かった(p<0.001)。
地中海食品質指数(Mediterranean Diet Quality Index;KIDMED)は16項目からなり、3点以下は食事の質が悪い、4~7点は改善が必要、8~12点は食事の質が良いと判定する。本研究では平均4.4±2.3点であり、DEリスクなし群(4.3±2.3点)に比較しDEリスクあり群(5.0±2.4点)は、スコアが有意に高かった(p=0.004)。
このほかに、DEリスクの有無で、性別の分布(女子の割合)、世帯収入、父親の教育歴、および、1日のネット利用が2時間以上の割合については有意差がなかったものの、母親の教育歴に有意差がみられ、DEリスクあり群で大学・大学院以上の割合が有意に高かった(18.0 vs 28.0%、p=0.04)。
ネット依存度と乱れた食行動のリスクとが有意に正相関
前記の各指標の相関を検討すると、若年者対象インターネット依存度(YIAT-SF)とソーシャルメディア障害(SMD)との間に強い正相関が認められた(r=0.679、p<0.001)。また、乱れた食行動(DE)リスクは、YIAT-SF(r=0.300)およびSMD(r=0.274)と中程度の正相関があり、地中海食品質指数(KIDMED)とは弱い正相関(r=0.153)が認められた(すべてp<0.001)。一方、BMIはすべての行動指標とも有意な相関を示さなかった。
このほかに媒介分析からは、問題のあるインターネットの使用(PIU)は地中海食品質指数(KIDMED)の低さ(β=-0.12、p=0.002)と関連しており、地中海食の遵守が乱れた食行動(DE)のリスクの上昇(β=0.15、p<0.001)と関連していることが示された。間接効果は有意であり(β=-0.02、p=0.016)、部分的な媒介効果が認められた。
ネットワーク分析から、YIAT-SFはDEリスク、SMD、およびKIDMEDをつなぐ中核的な因子であることが示唆された。
これら一連の結果を基に論文の結論は、「インターネット依存症は、食生活の質を介した乱れた食行動のリスク上昇と関連しており、思春期世代への介入において、この課題への対処が求められる」とされている。また著者らはこのトピックに関する、より長期にわたる研究の必要性を述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「The interaction between problematic internet use, diet quality, and disordered eating risk in adolescents: a mediation and network analysis」。〔Eat Weight Disord. 2025 Aug 4;30(1):61〕
原文はこちら(Springer Nature)