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小中高生の栄養素・食品摂取量を評価するツール「BDHQ15y」の妥当性を全国規模で検証 東京大学

小中高生を対象に習慣的な栄養素・食品摂取量を簡便かつ定量的に評価するために開発された「簡易型食事歴法質問票(BDHQ15y)」の妥当性について、初めて全国規模かつ幅広い年齢層で検証した、東京大学の研究チームによる論文が「British Journal of Nutrition」に掲載され、プレスリリースが発表された。8日間の詳細な食事記録と比較しBDHQ15yは、検討対象となった44の栄養素と31の食品群のうち、男女ともに19の栄養素、男子で11種、女子で7種の食品の摂取量において、全体的には概ね正確に把握できるという。著者らは、「BDHQ15yは今後、全国規模の食事調査や学校保健における簡易かつ効率的な食事モニタリングツールとして一定の有用性が見込まれ、子どもの栄養状態の把握や食育・健康施策の評価に広く貢献することが期待される」と述べている。

小中高生の栄養素・食品摂取量を評価するツール「BDHQ15y」の妥当性を全国規模で検証 東京大学

研究の背景・先行研究における問題点:子どもの食習慣を簡便かつ正確に把握するには

食事内容を正確に把握することは、健康への影響を理解し、病気を予防するうえで重要。とくに、成長と発達が著しい小・中・高校生の時期は、生涯にわたる健康の基礎を形成する重要な時期であり、この時期の食生活は将来の健康に大きく影響すると考えられている。しかし、この年代は食習慣の変動が大きく、摂取した食品や量を正しく思い出して申告することには限界があるため、食事の正確な把握が困難とされている。

日本では、小中高生向けに過去1カ月間の食習慣(栄養素・食品摂取量)を定量的に把握するために簡易型食事歴法調査票(BDHQ15y)が開発されているが、全国規模かつ幅広い年齢層を対象とした正確性の検証は十分に行われていなかった。そこで本研究では、BDHQ15yが実際の食事内容をどの程度正確に反映しているかを検証した。

研究内容:BDHQ15yは食事記録調査と、対象全体の中央値に関しては概ね一致

本研究は、全国32都道府県に居住する6〜17歳の小中高生844名(男子432名、女子412名)を対象に実施した。まずBDHQ15yに回答してもらい、その後、各季節に2日ずつ、計8日間の半秤量式食事記録調査を行った。得られたデータをもとに、44の栄養素および31の食品群について、BDHQ15yと食事記録から推定された摂取量の中央値を比較した(図1)。

図1 研究の概要図

研究の概要図

(出典:東京大学)

その結果、BDHQ15yは男女ともに19の栄養素で、食事記録との摂取量の差が10%未満と小さく、良好な一致を示した(図2a、b)。

図2a BDHQ15yと食事記録からの栄養素摂取量の差の割合(%)【男子432名】

BDHQ15yと食事記録からの栄養素摂取量の差の割合(%)【男子432名】

摂取量の差(%)=(BDHQ15yによる推定値-食事記録による推定値)÷食事記録による推定値×100。赤枠内は、BDHQ15yと食事記録の摂取量の差が10%未満で、高い一致度が認められたもの。
(出典:東京大学)

図2b BDHQ15yと食事記録からの栄養素摂取量の差の割合(%)【女子412名】

BDHQ15yと食事記録からの栄養素摂取量の差の割合(%)【女子412名】

摂取量の差(%)=(BDHQ15yによる推定値-食事記録による推定値)÷食事記録による推定値×100。赤枠内は、BDHQ15yと食事記録の摂取量の差が10%未満で、高い一致度が認められたもの。
(出典:東京大学)

食品群では、男子で11種、女子で7種が同様の基準を満たし(図3a、b)、タンパク質、脂質、炭水化物、食物繊維、穀類、野菜、乳製品、加糖飲料などの主要な栄養素および食品群を概ね正確に把握できることが明らかとなった。

図3a BDHQ15yと食事記録からの食品群摂取量の差の割合(%)【男子432名】

BDHQ15yと食事記録からの食品群摂取量の差の割合(%)【男子432名】

(出典:東京大学)

図3b BDHQ15yと食事記録からの食品群摂取量の差の割合(%)【女子412名】

BDHQ15yと食事記録からの食品群摂取量の差の割合(%)【女子412名】

(出典:東京大学)

一方、多くの栄養素と食品群において摂取量が多くなる場合には、BDHQ15yが過大に推定する傾向がみられた。

また、個人ごとの推定値にはばらつきがあり、個人単位での摂取量の評価には慎重な解釈が必要なことが示された。さらに、摂取量の「多い・少ない」を順位付けする能力(ランキング能力)については、スピアマンの順位相関係数の中央値が、栄養素で男子0.33、女子0.28、食品群で男子0.36、女子0.29とやや低めではあるものの、一定の妥当性が確認された(図4、5)。

図4 BDHQ15yと食事記録から推定したエネルギー・栄養素摂取量の相関係数

BDHQ15yと食事記録から推定したエネルギー・栄養素摂取量の相関係数

(出典:東京大学)

図5 BDHQ15yと食事記録から推定した食品群摂取量の相関係数

BDHQ15yと食事記録から推定した食品群摂取量の相関係数

(出典:東京大学)

社会的意義:子どもの食習慣はBDHQ15yでも把握可能だが、個人の評価には限界

本研究は、成長期の学童・思春期の子どもの食習慣を簡便かつ効率的に把握できるBDHQ15yの妥当性を科学的に裏付けた。これにより、全国規模の食事調査や学校・地域の健康施策のモニタリングにおいて、主要な栄養素や食品群の摂取状況を集団レベルで正確に把握する基盤が整備されることが期待される。こうしたツールの活用は、子どもの栄養状態の継続的な評価・改善、科学的根拠に基づく食育の推進、将来的な健康格差の予防に寄与すると考えられる。一方で、個人ごとの詳細な評価には限界があることから、研究チームでは「今後は精度向上に向けた改良を進める予定」としている。

プレスリリース

子どもの食事を“測る”評価ツール 8日間食事記録との比較により、BDHQ15yの妥当性を全国規模で初検証(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Relative validity of food and nutrient intakes derived from a brief-type diet history questionnaire for Japanese children and adolescents (BDHQ15y)」。〔Br J Nutr. 2025 Aug 26:1-15〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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