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摂食障害を自覚しているSNS利用者の多くが原因を自己認識していて、ボディ・イメージ関連が多い

摂食障害を自覚しているSNS利用者の投稿を基に、本人が摂食障害の原因をどのように認識しているかを解析した結果が中国から報告された。対象の多くが何らかの原因を認識しており、ボディ・イメージ関連が7~8割を占め、そのほかにもスポーツ関連が約1割を占めることが明らかにされている。

摂食障害の治療では本人の病識の把握が重要

神経性無食欲症(anorexia nervosa;AN)、神経性大食症(bulimia nervosa;BN)、過食性障害(binge eating disorder;BED)などの摂食障害(eating disorder;ED)は、QOL低下、抑うつ、希死念慮、死亡率の上昇などの影響が生じ得る精神疾患であり、世界的に有病率の上昇が指摘されている。摂食障害の治療では、患者本人が摂食障害をどのように認識しているかを把握することが極めて重要とされ、患者の行動はその認識に基づいて変化し、また治療反応性とも強く関連している。

近年、患者間で疾患、とくに精神疾患に関する情報がソーシャルメディアサービス(SNS)上でやり取りされることが増えていて、摂食障害に関してもSNS上に多くの体験談などの情報が公開されている。今回紹介する論文では、そのようなSNS上でのやりとりを分析することで、摂食障害患者が自身の摂食障害の原因をどのように認識しているかを把握するという、予察的な研究の報告。

自身の摂食障害について言及された、二千以上のSNSの書き込みを分析

この研究では、中国で最大規模のQ&A形式によるSNSプラットフォームである「知乎(zhihu)」の投稿が解析された。

まず、このプラットフォーム上の投稿から、「拒食症」、「神経性拒食症」、「過食症」、「神経性過食症」、「過食症」、「摂食障害」などの単語が使われている投稿を検索。それらの投稿の文章内にある摂食障害関連のキーワードを用いてさらなる検索をかけるという作業を繰り返し、摂食障害関連の新たなキーワードがみられなくなるまで続けられた。

この作業によって5,199人の投稿を特定し、それらの内容から投稿者本人のEDについて書かれている投稿をピックアップ。最終的に2,079人の書き込みをデータ解析の対象として抽出した。

解析項目は大きく分けて二つあり、最初の一つは、自分の摂食障害が、神経性無食欲症、神経性大食症、過食性障害のうちのどれだと認識しているかであり、二つ目の項目は、自分の摂食障害の原因がどのようなことだと認識しているかという解析。二つ目の摂食障害の原因については、先行研究を基に、以下のように個人的要因と社会的・文化的要因の二つに大別し、かつ合計8項目に分類するという解析を行った。

解析で検討した摂食障害の原因の分類

個人的要因

  1. 人生におけるトラウマ的な出来事;性的暴行、虐待、極端な別れ
  2. 心理的および感情的な問題;ストレス、うつ病、不安、コントロール欲求、完璧主義、自尊心の低さ
  3. 遺伝的背景や生物学的なこと;摂食障害の家族歴、脳内の化学的不均衡
  4. スポーツと健康;体操やダンス、健康や運動のクラス、健康になりたいという願望、栄養に関する知識の欠如
  5. ボディ・イメージと食事;やせることへの欲求、容姿への不満、太りすぎや魅力のなさを感じること、歪んだイメージ、ダイエット、制限的な食生活

社会的・文化的要因

  1. 家族の問題;家族からの語りかけ、親からのプレッシャー、賞賛を求める気持ち、体重に関する会話
  2. 社会問題;恋愛関係の悪化や破局、仲間からのプレッシャー、からかい、社会的孤立
  3. メディアと文化にみられる理想;やせることを理想とするイメージやメッセージ

摂食障害の患者の多くは、ボディ・イメージの不満が原因と考えている

2,079人のうち、自身の摂食障害の病型を、神経性無食欲症と認識している人が14.72%、神経性大食症との認識が37.61%、過食性障害との認識が47.67%だった。

自身の摂食障害の原因については、多くが「個人的要因」と捉えていると考えられ、その割合は、神経性無食欲症では92%、神経性大食症では95%、過食性障害では95%だった。「社会的・文化的要因」が関与していると考えている人の割合は、神経性無食欲症で51%、神経性大食症で45%、過食性障害で35%だった。

より詳しく、前記の8項目の原因の分布をみると、神経性無食欲症、神経性大食症、過食性障害のいずれでも、分布に大きな違いはなかった。全体として、「ボディ・イメージと食事」が原因と認識していると考えられる書き込みが68~87%と多く、次いで「心理的および感情的な問題」が65~67%と多かった。一方、「人生のトラウマ的な出来事」(13~14%)、「 遺伝的背景や生物学的なこと」(7~13%)、「スポーツと健康」(9~12%)は、原因として認識される割合が少ないと考えられた。

なお、論文では触れられていないが、アスリートの摂食障害の原因としては、「スポーツと健康」とともに審美系競技では「ボディ・イメージと食事」も該当すると考えられる。

論文の結論は、以下のようにまとめられている。

「本研究は、中国のソーシャルメディア利用者の摂食障害の原因についての洞察を提供し、自己認識としては、心理的・感情的な問題、および、ボディ・イメージと食事という原因が、重要な役割を果たしていることを浮き彫りにした。この結果は、摂食障害の発症における個人的要因と社会的および文化的要因の潜在的に複雑な相互作用を強調している。本研究には、単一のSNSプラットフォームのみでの解析であること、性別を考慮できていないこと、SNSの書き込み以外の情報を収集し得ていないことなどの限界があるが、ビッグデータを理由して摂食障害の病因を研究するという潜在的な有用性と重要性を示している」。

文献情報

原題のタイトルは、「Exploring the self-perceived causes of eating disorders among Chinese social media users with self-reported eating disorders」。〔J Eat Disord. 2024 Dec 5;12(1):201〕
原文はこちら(Springer Nature)

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