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睡眠に影響を及ぼさないカフェインの摂り方 無作為化交差試験によるエビデンス

カフェインは、日常生活において眠気を抑えたり、集中力を高めたりする目的で広く用いられており、さらにアスリートではスポーツパフォーマンスを高めるために多用されている。しかし、カフェインの覚醒作用が夜間には負の影響となり、眠りたいのに眠れないということが起こる。そのようなリスクを最小限に抑えるためのカフェインの上手な摂り方を検討した研究結果が発表された。オーストラリアからの報告。

睡眠に影響を及ぼさないカフェインの摂り方 無作為化交差試験によるエビデンス

プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験により、摂取用量とタイミングの差を検討

この研究は、習慣的に中等度のカフェイン(300mg/日未満)を摂取している健康な18~40歳の男性を対象に行われた。女性は月経周期に伴う睡眠への影響が存在し得るため、対象に含めなかった。また、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)により睡眠の質を評価し、21点満点中5点以下(睡眠の質の低下なし)であることを適格条件とした。そのほかに、喫煙、過去3カ月以内の睡眠の不良、睡眠に影響を及ぼし得る薬剤の使用、交替勤務、時差のある地域への旅行歴などの該当者も除外した。

試験デザインはプラセボ対照二重盲検クロスオーバー法で、カフェイン摂取量は低用量(100mg〈一般的なコーヒー1杯分〉)と高用量(400mg〈摂取上限量〉)の2条件とし、摂取タイミングは就寝の12時間前、8時間前、4時間前という3条件として、それぞれにプラセボ条件を加えた。試行順序は乱数表を使い無作為化し、カフェインの半減期が3~6時間であることから48時間のウォッシュアウト期間を設けて試行した。カフェインまたはプラセボは、外観からは区別できないカプセルで支給し、1日3回すべてのタイミングでいずれかが摂取(カフェインは1回または0回のみ)された。

評価項目は、カフェイン摂取1時間後の唾液サンプルを利用したカフェインレベル、睡眠ポリグラフ検査による客観的な睡眠の質、起床後30分以内に記載された睡眠日誌の記録に基づく主観的な睡眠の質と昼間の眠気。なお、これらの介入はすべて被験者の自宅において実施された。

介入に先立つ7日間をベースラインモニタリング期間として、活動モニターを身に付けて生活してもらい、かつ就床時刻と起床時刻を一定(±30分以内)に維持することを目指してもらった。介入期間中も同様に活動モニターを身に付けて生活し、就床時刻と起床時刻を一定にして、かつ昼寝を控えるように指示した。

このほか、睡眠に影響を与え得る遺伝子型の検査をした。また、起床後30分以内にメールにて調査を行い、前日に摂取したものがカフェインとプラセボのどちらと思うか、およびそのタイミングがいつで、用量がどのくらいと思うかを回答してもらった。

30人が研究に参加し、プロトコル非遵守や研究からの脱落により、解析対象は23人となった。主な特徴は、年齢25.3±5.0歳、体重85.5±16.8kg、身長180.1±8.5cm、習慣的なカフェイン摂取量112.2±81.0mg/日、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)のスコアは3.3±1.2だった。

唾液カフェイン濃度の測定から、プラセボ、カフェイン100mg、同400mgの順に、カフェインレベルが有意に上昇していたことが確認された。また、就床時刻と起床時刻は条件間で有意差がなく、設定条件が遵守されていた。

客観的な評価の結果

プラセボ条件との対比

睡眠ポリグラフ検査による客観的な睡眠の質の評価結果をみると、400mgのカフェインはプラセボと比較して、有意な影響が認められた。

例えば、就寝4時間前に400mgを摂取した場合、総睡眠時間が推定50.6分短かった(p<0.001、効果量〈d〉=-0.36〈95%CI;-0.59~-0.14〉)。8時間前に摂取した場合は28.7分短いものの有意でなく(p=0.076、d=-0.21〈-0.43~0.02〉)、12時間前に摂取した場合も30.0分短いものの非有意だった(p=0.060、d=-0.22〈-0.44~0.01〉)。

睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)は、就寝4時間前の400mg摂取で9.5%(p<0.001、d=-0.48〈-0.71~-0.25〉)、就寝8時間前の摂取で6.9%(p=0.001、d=-0.35〈-0.58~-0.12〉)、いずれも有意に低下していた。このほか、高用量を就寝4時間前に摂取すると、入眠潜時(就床から睡眠に要する時間)の延長、中途覚醒の増加、徐波睡眠(深い睡眠)の減少などの影響が認められた。

一方、100mgのカフェイン摂取による客観的な指標への有意な影響は、観察されなかった。

用量の対比

カフェイン400mgは100mgに比較し、睡眠への影響が大きかった。

例えば就寝4時間前に400mgを摂取すると、100mg摂取に比べて総睡眠時間は推定46.2分短縮された(p=0.002、d=-0.32〈-0.55~-0.10〉)。同様に、睡眠効率は就寝4時間前摂取で推定7.1%低下し(p=0.001、d=-0.35〈-0.57~-0.12〉)、就寝8時間前摂取でも100mg条件より推定4.7%低下していた(p=0.034、d=-0.23〈-0.46~-0.01〉)。

睡眠潜時や中途覚醒、徐波睡眠についても、400mg条件では100mg条件よりも強い影響が観察された。

摂取タイミングの対比

カフェイン400mgを就寝4時間前に摂取した場合、12時間前摂取と比較して睡眠効率が5.6%、有意に低下した(p=0.008、d=-0.28〈-0.51~-0.06〉)。就寝8時間前に400mgを摂取した場合、12時間前摂取と比較して中途覚醒が20.8分、有意に増加した(p=0.023、d=0.25〈0.03~0.47〉)。

なお、カフェイン100mg条件では、摂取タイミングによる有意な違いは認められなかった。

主観的な評価の結果

主観的な睡眠の質の評価結果をみると、400mgのカフェインはプラセボと比較して、有意な影響が認められた。

例えば、就寝4時間前に摂取した場合、総睡眠時間が推定1.3時間短縮し(p<0.001、d=-0.44〈-0.66~-0.22〉)、就寝8時間前摂取では0.7時間短縮した(p<0.034、d=-0.23〈-0.45~-0.01〉)。12時間前摂取では、プラセボとの差が非有意だった。

また、400mg条件では、入眠潜時、中途覚醒、昼間の眠気に対する有意な影響が認められた。一方、100mg条件では、主観的な睡眠の質に有意な影響を及ぼしていなかった。

このほか、客観的な評価と同様に、用量の対比や摂取タイミングの対比においても、低用量より高用量で強い影響が認められ、就寝により近い時間帯に摂取するほうがより強い影響が観察された。

実践的な推奨事項

起床後に行われた調査から、プラセボかカフェインか、およびその用量を正しく推測していたのは被験者の44%であり、カフェインを摂取したタイミングを正しく推測していたのは36%で、プラセボかカフェインかとその用量、および摂取したタイミングを正しく推測していたのは22%であったことが明らかになった。

また、睡眠に関連する一塩基多型(single nucleotide polymorphism;SNP)は、客観的および主観的な睡眠の質に有意な影響を及ぼしていなかった。

これらの結果に基づき著者らは、「カフェインをたとえ朝であっても高用量(400mg)摂取した場合、その夜の睡眠に悪影響を及ぼし得る。重要な点として、就床時刻よりかなり前に摂取した場合、その影響を本人が自覚せずに睡眠障害が生じている可能性がある。とくにアスリートや学生、交代勤務者、軍人などは、就床の12時間以内に大量のカフェインを摂取することが多く、この点の認識を高める必要があるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dose and timing effects of caffeine on subsequent sleep: A randomised clinical crossover trial」。〔Sleep. 2024 Oct 8:zsae230〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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