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女性アスリートへの配慮に関するコーチの知識や自信が、8週間オンラインプログラムで向上

女性アスリートのコーチを含むサポートスタッフの知識や自信が、オンラインによる教育プログラムを受けることで上昇するとする研究結果が、オーストラリアから報告された。著者らは、男性スタッフがこのようなプログラムに参加することを奨励している。

女性アスリートへの配慮に関するコーチの知識や自信が、8週間オンラインプログラムで向上

女性アスリートの増加にサポートスタッフが追い付けていない?

過去20年ほどの間に、女性アスリートの人数やレベルが急速に拡大・上昇し、女性アスリートに特異的な生理学・心理学・栄養学などへの関心が高まっている。しかしそれらの研究が未だ十分でないこともしばしば指摘されている。2021年に報告された男性スタッフ対象の調査では、自分自身が最も知識を向上させたいと感じている女性アスリート関連のテーマとして、月経周期のモニタリングや食事関連の事がらが上位に挙げられている。

月経の問題に関しては、アスリート自身の知識の不足も指摘されている。しかし、アスリート本人が懸念を抱いたとしても、その懸念をコーチやサポートスタッフに伝える際に障壁が存在することも明らかになっている。例えば、コーチが月経の問題に関心がないだろうと感じたり、懸念を伝えても取り合ってくれないだろうと感じたりした場合、その女性アスリートが自分自身の懸念を解消する手段が閉ざされてしまう。

他方、サポートスタッフに対するオンラインを用いた再教育と、他者との交流を可能とする自己学習の有用性が、近年報告されている。これらを背景として、この研究では、女性アスリートのトレーニング、心理、栄養面などのサポートに関する短期教育オンラインプログラムを開発。その有用性を評価した。

再教育プログラムの内容

再教育プログラムは、四つの動画コンテンツの視聴やディスカッションと、応用実践のパートからなる。応用実践パートでは習得した知識を女性アスリートへの対応に使用したうえで、参加者同士が目標や経験、反省などを話し合うというもの。

動画コンテンツのおもな内容は以下のとおりで、それぞれ約1.5時間。

モジュール1:女性アスリートの医療および食事に関する考慮事項

正常な月経周期の生理学に関する理解を深め、月経周期のモニタリングがアスリートの健康状態を把握するうえで大きな助けとなる理由や、女性アスリートの健康と最適なとパフォーマンスを維持する上で食事が重要な役割を果たす理由を理解する。

モジュール2:トレーニングとパフォーマンス

矛盾する情報が存在するトピック、例えば、持久力や筋力をトレーニングするのに最適な時期があるかどうか、月経周期のある段階でパフォーマンスが低下するかどうか、ホルモン避妊薬の使用がトレーニングとパフォーマンスに悪影響を与えるかどうかなどについて、どのような研究報告があり、日常の実践にどのように活用できるかを理解する。

モジュール3:コミュニケーションと心理学

女性アスリートの健康とパフォーマンスを最大限に高めるための最適な管理に必要な知識、生理学と栄養学だけではない。アスリートとコーチの関係、および個人が曝される環境は、アスリートの幸福感と帰属意識に大きな影響を与えることを理解する。

モジュール4:筋力とコンディショニングと怪我の予防

多くの研究で、女性アスリートは怪我のリスクが高いことが示されている。これは変更不能のことなのか、または現在のスポーツシステムに何らかの問題があるのか。怪我によるスポーツからの離脱を最小限に抑え、長く成功したキャリアを築く、最高のチャンスを選手に与えるためにできることを理解する。

再教育プログラムの有用性とともに課題も浮かび上がる

再教育プログラム参加による、女性アスリートのサポートに関する知識や自信の評価は、プログラム参加の前、参加後、および参加から6カ月後に、28項目からなる質問票を用いて評価した。質問内容・表現は、各評価段階で多少の変更が加えられた。

教育プログラムの参加前後の調査に回答したのは92人だった。その9割以上がオーストラリア在住であり、72%が女性、67%が団体競技(ソフトボール、サッカーなど)の女性アスリートのサポートに従事していた。ポジションは、コーチが53%と過半数を占め、その他は監督、トレーナーなどだった。女性アスリートのサポート歴は平均7±7年であり、28%は1年以下、27%は10年以上と、広い範囲に分布していた。

参加後の評価を1~10点のリッカートスコアで回答を得た結果、平均は9点であり、「ほかの人に参加を勧めたい」との回答が100%だった。また、8割以上が「女性アスリートへのかかわり方が変化した」と回答した(その他は「いいえ」が5%、「わからない」が12%)。

知識と自信のレベルについては0~5点のリッカートスコアで回答を得た結果、参加前は中央値3点であり、参加後は同4点に上昇していた(p<0.001)。6カ月後の調査にも回答したのは37人であり、その時点でも依然として4点に維持されていた。

定性的な質問への回答から、プログラム参加者は、扱われるトピックの幅の広さ、他者の声の多様性、オンライン形式であることによるアクセスの容易さを高く評価していたことがわかった。一方で、知識の向上がかならずしも実践につながらないケースもあることが示された。また、女性アスリートに接しているスタッフは女性よりも男性が多いという実態があるにもかかわらず、プログラム参加者は女性のほうが多かったことも、課題として浮かび上がった。

これらの課題があるものの、著者らは「この分野に求められる知識は静的ではないという認識が重要であり、コミュニティーへの参加も含まれているこのような短期間のオンライン再教育プログラムは、女性アスリートのサポートに関する最新情報を求めているスタッフに対して、触媒として機能するのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effectiveness of a short course to improve coaches' knowledge on considerations for female athletes」。〔J Sports Sci. 2024 Jun 4:1-7〕
原文はこちら(Informa UK)

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