スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

遺伝性心疾患患者では、エナジードリンク摂取で稀ながら突然心停止が起こる可能性

遺伝性心疾患のある患者では、エナジードリンクの摂取が突然心停止のリスクを押し上げるのではないかとする、米メイヨー・クリニックでの研究結果が米国不整脈学会のジャーナル「Heart rhythm」に論文掲載された。著者らは、より詳細な検討が必要な段階ではあるが、このような潜在的なリスクの存在する可能性があるという警告を発することが賢明ではないかと述べている。

遺伝性心疾患患者では、エナジードリンクの摂取で稀に突然心停止が起こる可能性

エナジードリンクはカフェイン+カフェイン以外の刺激性成分が含まれていることが多い

本研究が行われた米国では、エナジードリンク市場が年々拡大しており、若年成人の間ではマルチビタミンに次いで2番目に多く消費されるサプリメントとなっている。サプリメントとして位置付けられているために、医薬品と異なり米食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)の規制を受けずに流通している。

エナジードリンクは一般にカフェインが含まれており、その含有量は80~300mg程度のことが多い。これは、標準的なカフェイン含有量が100mgであるコーヒーを数杯飲むのと比べて、極端に多いというわけではない。しかしエナジードリンクの多くに、カフェイン以外の刺激性成分が含まれているため、潜在的な負の影響の懸念は高い可能性がある。遺伝性不整脈疾患の診断後であれば、そのようなリスクを避けるためにエナジードリンクの摂取を避けるというリスク回避行動をとることができるが、未診断の場合はそのような回避行動をとることができず、初発イベントが生命にかかわる可能性も考えられる。

メイヨー・クリニックは米国において長い歴史と権威のある医療機関であり、さまざまな高度専門医療を行っているが、その一つとして遺伝性不整脈疾患の専門部門がある。今回報告された研究は、その部門で2000年7月~2023年1月に治療された5,000人を超える遺伝性不整脈疾患患者のデータを用いて行われた。

144人の生存者のうち7人に、エナジードリンク摂取との時間的関連性

遡及的なデータ解析の結果、突然心停止後の生存者は144人(女性51%)であり、そのうち7人に、突然心停止発生前にエナジードリングを摂取した記録が認められた。この7人の平均年齢は29±8歳で、女性が6人(86%)だった。また、7人中1人は、突然心停止発生前に、不整脈を診断されていた。逆に言えば、7人中6人は、初回の突然心停止が発生するまで、不整脈があるとの診断を受けていなかった。特定された不整脈の原因は、カテコラミン誘発性多形性心室性頻拍とQT延長症候群が各2人で、他の3人は原因不明または特発性心室細動だった。

7人中2人はトレーニング前に摂取し、トレーニング中に発生

突然心停止の発生状況は、睡眠中が2人、職場での口論中または口論の仲裁中が2人、車の助手席に乗車中が1人で、他の2人はスポーツトレーニング中だった。エナジードリンクの摂取から突然心停止の発生までの時間は、摂取直後から最長12時間の間に分布しており、トレーニング中に発生した2人はいずれも当日の朝に摂取していた。カフェインの摂取量は最小が80mg、最大は200mg以上でトレーニング中に発生した2人のカフェイン摂取量は不明だった。

蘇生後にすべての患者に対してエナジードリングを摂取しないように指導。その後、平均52±43カ月の追跡中、全患者において突然心停止の再発は認められていないという。

トレーニング中に突然心停止が発生した2人のより詳しい情報は以下のとおり。

ケース1

20歳の男性。大学で陸上競技とクロスカントリーの選手であり、エナジードリンクを習慣的に摂取していた。自動体外式除細動器(automated external defibrillators;AED)が2回試行され蘇生に成功。イベント発生前に心臓関連の症状を来したことはなく、心停止後に不整脈を来す遺伝性心疾患が見つかった。植込み型除細動器(implantable cardioverter-defibrillator;ICD)が植え込まれ、その後、競技に復帰。以来、心臓関連の症状は発現していない。

ケース2

42歳の女性。産後失神の既往があったが、その際は心臓検査の結果、徐脈による失神と診断されて治療はされていなかった。10年以上経過し、エナジードリンク摂取後のサイクリング中に突然意識を失い転倒し頭部を打撲した。いったんは自然に意識を取り戻したが、再び気を失い病院に搬送された。この患者は、ふだんはあまりエナジードリンクを摂取していなかった。なお、突然心停止発生当時、QT延長を来し得る2種類の抗菌薬を感染症治療目的で服用していた。心停止後に不整脈を来す遺伝性心疾患が見つかり、ICDによる治療が行われた。

エナジードリンク摂取に関するガイドラインが必要では?

著者らは、「本研究は単一施設での小規模なコホートに基づくものであり、エナジードリンクが突然心停止の直接的な原因であるとの結論を導くことはできない」と解釈に留意を求めている。そのうえで、「当クリニックで治療した突然心停止後に回復した生存者のうち、5%が発症前にエナジードリンクを摂取していた。エナジードリンクには規制されずに流通可能成分が含まれており、それらが心拍数、血圧、心臓収縮力、心筋再分極を変化させ、生命を脅かす不整脈を引き起こす可能性があるのではないか。この潜在的なリスクについて早期に警告するとともに、FDAはエナジードリンクの適切かつ安全な使用に関するガイドラインを作成すべき」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sudden cardiac arrest occurring in temporal proximity to consumption of energy drinks」。〔Heart Rhythm. 2024 Mar 16:S1547-5271(24)00189-9〕
原文はこちら(Elsevier)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ