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減塩食を作る料理教室のフォーマットを開発 誰もが簡単に作れてアレンジも可能な食事介入手段の提案

日本の一般的な家庭の料理をベースとして、それを減塩食に変える指導を行う料理教室を開催するためのフォーマットが開発された。そのフォーマットを活用した介入試験によって、塩分摂取量が対照群に比し1.4g/日近く減少することが確認された。一般社団法人 食と運動の健康技術研究会の今本美幸氏らの研究の結果であり、詳細は「AJPM focus」に掲載された。このフォーマットは、第三者が自由に模倣したり一部を変更して用いることができるという。

減塩食を作る料理教室のフォーマットを開発 誰もが簡単に作れてアレンジも可能な食事介入手段の提案

エビデンスのある減塩料理教室のフォーマットを開発する

減塩が血圧管理に重要であることは一般常識と言えるほどに広く知られているが、日本人の塩分摂取量は近年、下げ止まり状態にあり、これまでにないアプローチの導入が必要とされている。従来から行われている公衆衛生対策の一環として、地域での料理教室における減塩指導が挙げられ、そのような料理教室の参加者の塩分摂取量が減ったとする研究結果は既に多数報告されている。ただし、それら個々のトライアルは、教室での教育内容や開催ノウハウが詳らかにされておらず、ほかの地域での模倣が困難であり普遍性や拡張性が限られている。そのため、全国津々浦々で減塩料理教室が常時開催されるような状況には至っていない。

これを背景として今本氏らは、第三者が容易に模倣でき、地域や対象などの特性にあわせて改変も可能な減塩料理教室の開催のフォーマットを開発。そのフォーマットに基づく介入研究により、有用性を検証した。

減塩料理教室のフォーマット開発

フォーマットの開発のため、管理栄養士、一般内科医、腎臓専門医からなる研究チームが組織された。目標は、(1)1食あたりの塩分量が2g以下で、(2)家庭料理をベースにしつつ容易にアレンジでき継続可能であり、(3)特別な調理技術や経験を必要とせず、(4)地域、教室参加者、季節にあわせて適宜変更が可能な、2時間程度で指導できる料理教室のパターンを作成して、さらにそのような指導のノウハウを文書化し、他者が利用できるようにすること。

まず、日本の家庭料理の典型的なパターンである一汁三菜の食事を想定し、含まれている塩分量を、主菜1.5~3.0g、味噌汁1.5g、副菜0.5~1.5g(×2)、主食0g、計4.0~7.0gと仮定。これらの合計を2g以下にするために、(1)主菜の塩分量を決定してから料理する、(2)味わいを保ちつつ塩辛い料理を取り除く、(3)栄養バランスのため無塩または減塩の副菜を追加するという方針のもと、教育すべき五つのトピックを抽出した。五つのトピックには、例えば、料理全体の塩味を維持するために主食の白米に風味を加えるという工夫、出汁やスパイスの利用、果物や野菜摂取の強調などが含まれる。

次に、これらのトピックを実践的なトレーニングに利用可能なマニュアルとしてまとめ、基本となるレシピも作成した。このマニュアルに基づき、フォーマット作成に関与していなかった管理栄養士によって料理教室が開催され、教室運営が支障なく可能であることが確認された。

教室開催の有用性の検討

続いて、このフォーマットに基づく減塩料理教室が、実際に参加者の減塩に結びつくのかが、地域住民対象の非無作為化試験で検証された。この研究は、スポット尿を用いた尿中塩分排泄量の自己測定を行うことが、その後の塩分摂取量に及ぼす影響を検討する臨床試験の一部として実施された。

研究参加者は158人で、このうち80人は尿中塩分排泄量の自己測定を行い、かつ減塩料理教室の指導を受け、残りの78人は尿中塩分排泄量の自己測定のみを行った。解析に際しては、同一世帯から複数の参加者がいる場合、同じ食事を摂っている可能性が高いため、1人のみを解析対象に含めた。データ欠落者などを除外し、最終的な解析対象者数は、減塩料理教室に参加した群が43人、参加しなかった群が52人となった。

ベースラインにおいて、教室参加群はやや高齢で(67.4±7.5 vs 62.4±10.7歳)、女性(93.0 vs 80.8%)が多く、高血圧(58.1 vs 30.8%)や慢性腎臓病(9.3 vs 3.9%)の割合が高かったが、BMI(24.0±3.2 vs 23.7±3.8)や尿中塩分排泄量(9.3±1.9 vs 9.0±2.0g/日)は同程度だった。

減塩料理教室に参加した群では4週間後の塩分摂取量が有意に減少

推定食塩摂取量は、教室参加群はベースラインが9.2±2.0g/日、教室参加の4週後は8.2±2.0g/日で、有意に減少していた(p=0.0005)。一方、教室に参加しなかった群は同順に9.1±1.9g/日、9.4±1.9g/日で有意な変化はみられなかった(p=0.18)。

回帰分析により、推定食塩摂取量の変化幅の群間差が有意であり、指導を受けた群の減少幅のほうが1.4g近く大きかった(-1.38g/日〈95%CI;-2.19~-0.57〉)。なお、高血圧の有無はこの結果に有意な影響を及ぼしていなかった(交互作用p=0.51)。

どこでも開催可能な減塩料理教室の普及に向けて

著者らは本研究を、「再現可能な減塩料理教室のフォーマットを詳細に示した初の研究」としている。有用性の検討のための試験が無作為化されていないこと、認められた減塩の効果が料理スキルの向上によるものとは断定可能なデザインではないことなど、研究の限界点があるため、さらなる検証が必要としたうえで、「第三者が模倣、改変可能なこのフォーマットは、国内の多くの地域で住民対象減塩教育として広く活用できるのではないか」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Development of a Culinary Intervention (Cooking Class) for Salt Reduction in Japanese Home Cooking: Strategies and Assessment」。〔AJPM Focus. 2024 Mar 13;3(3):100227〕
原文はこちら(Elsevier)

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