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クロノタイプ夜型の若年女性は“やせメタボ”に要注意 国内の大学生対象研究

国内の複数の大学の女子学生を対象とする横断研究の結果、クロノタイプが夜型の若年女性は体脂肪率が高く筋肉量が少ないことが明らかになった。岡山県立大学情報工学部人間情報工学科の大下和茂氏、岡山理科大学基盤教育センターの石原勇次郎氏、九州共立大学スポーツ学部の清家空併氏、名頭薗亮太氏による論文が、「Journal of Physiological Anthropology」に掲載された。著者らは、「日本の若年女性は総じて筋肉量が少ないが、とくに夜型生活の女性には将来のサルコペニアのリスク抑制のためにも、体組成の維持・改善を目的とした介入が必要ではないか」と述べている。

クロノタイプ夜型の若年女性は“やせメタボ”に要注意 国内の大学生対象研究

日本の若年女性のやせすぎ問題が、夜型のクロノタイプでさらに深刻化?

国内の公衆衛生上の問題として、男性の肥満の増加とともに若年女性のやせの増加がしばしば指摘されている。また、BMIは基準範囲内であっても体脂肪率が高く筋肉量が少なくて代謝異常を生じている“やせメタボ”と呼ばれる病態も、若年女性に少なくないことが報告されている。若年期に筋肉量が少ないことは高齢期以降のサルコペニア等のリスクを高めると考えられ、若いうちに筋肉量を十分増やしておくことが将来の健康リスク抑制につながると理解されている。

一方、大学生はそれ以前の高校時代と異なり自分自身の判断で生活パターンを決めるようになることから、この時期に体重や体組成の変化が起こりやすい。また、20歳前後には生活が最も夜型になりやすいことも知られている。夜型の生活パターンの定着、つまりクロノタイプが夜型であることは、食習慣の乱れや身体活動量の低下と関連があり、かつBMIや体脂肪率の増加と関連する。とくに日本人を含むアジア人は、肥満が高度でなくても健康に負の影響が現れやすいこと、さらに日本人は国際的にみて睡眠時間が短いことから、クロノタイプが夜型であることに伴う健康リスクが、より生じやすい可能性もある。

これらを背景として大下氏らは、国内の女子大学生のクロノタイプと栄養素摂取量、身体活動量、体重、体組成との関連について横断的な検討を行った。

国内3大学・短大の女子学生を対象に横断的研究

この研究は、異なる都道府県にある2大学と1短期大学の学生(18~22歳)から募集され、無作為に抽出された251人を対象に行われた。このうち解析に必要なデータの欠落者11人と、身体活動量が極めて多い学生10人を除外し、230人を解析対象とした。身体活動量が極めて多い学生を除外した理由は、そのような人たちは学生アスリートと考えられ、非アスリートの学生に比べて筋肉量が多くて朝型の生活パターンになりやすく、解析結果への影響が生じると予測されたため。

クロノタイプの判定

クロノタイプの判定には、朝型・夜型質問紙(morningness-eveningness questionnaire;MEQ)の日本語版を用いた。MEQは19項目の質問からなり、16~86点のスコアで評価する。既報研究に基づき、70~86点を明らかな朝型、59~69点をほぼ朝型、42~58点を中間型、31~41点をほぼ夜型、16~30点を明らかな夜型と定義すると、本研究参加者のうち61人が「夜型」(ほぼ夜型と明らかな夜型の合計)と判定された。

参加者全体のMEQの平均スコアは47.39点であり、やや夜型に偏って分布していた。平均スコアに標準偏差の50%(0.5SD)を加えた値(52.0)をカットオフ値とし、それを上回る71人を「非夜型」と定義。夜型の61人と非夜型の71人を比較するという手法で、後述の検討を行った。

検討した関連因子

上記のクロノタイプと、以下に挙げる身体活動量、摂取エネルギー量・栄養素摂取量、体重・体組成との関連を横断的に解析した。

身体活動量は質問票を用いて把握し、「日本人の食事摂取基準」に基づきレベルI~IIIに分類するとともに、大学生対象に行われた既報研究のデータを援用し消費エネルギー量を推定した。また、身長、体重、年齢、性別(女性)を勘案して基礎代謝量(basal metabolic rate;BMR)を推定。これらを加算することで、総エネルギー消費量(total energy expenditure;TEE)を算出した。

摂取エネルギー量・栄養素摂取量は、食品群別食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire based on food groups;FFQg)を用いて把握。主要栄養素の摂取量や総摂取エネルギー量(total energy intake;TEI)を推定した。体組成については生体電気インピーダンス法で把握した。

夜型であることが体脂肪率高値、筋肉量低値の独立した関連因子

解析対象とした230人の年齢は18.8±10歳、BMI21.4±2.6、体脂肪率28.8±5.6%であり、身体活動量カテゴリーの平均は1.72±0.26、総摂取エネルギー量(TEI)1,781±519kcal/日、炭水化物摂取量237.5±67.4g/日、タンパク質摂取量59.2±20.1g/日、脂質摂取量62.9±22.8g/日で、TEI/TEE比は0.89±0.30だった。また、四肢筋量(appendicular muscle mass;AMM)は16.3±2.4kg、骨格筋量指数(skeletal muscle mass index;SMI)は6.55±0.74だった。

これらを夜型の学生と非夜型の学生とで比較すると、年齢、BMIには有意差がないにもかかわらず、体脂肪率は夜型の学生が29.9±4.8%、非夜型の学生は27.3±5.5%であり、夜型のほうが高いという有意差が認められた(p=0.01、効果量〈d〉=0.22)。反対に筋肉量は以下のように、夜型の学生のほうが有意に少なかった。四肢筋量(AMM)は15.8±2.1 vs 17.0±2.5kg(p<0.01、d=0.21)、骨格筋量指数(SMI)は6.41±0.56 vs 6.81±0.86(p<0.01、d=0.22)。

また、夜型の学生は身体活動量が有意に少なかった(1.68±0.26 vs 1.76±0.25、p=0.04、d=0.14)。摂取エネルギー量は有意差がないものの、タンパク質摂取量は夜型の学生のほうが少なかった(54.9±20.6 vs 62.1±20.5g/日、p=0.04、d=0.16)。

クロノタイプと身体活動量は、体脂肪率や筋肉量の独立した関連因子

続いて、体脂肪率や筋肉量(AMM、SMI)を従属変数、クロノタイプを表すMEQスコアや身体活動量、総摂取エネルギー量(TEI)を独立変数とする重回帰分析を施行。その結果、以下のように、クロノタイプや身体活動量は、いずれの従属変数に対しても独立した有意な関連が認められた。

体脂肪率に関しては、MEQスコアが標準偏回帰係数(β)=-0.13(95%CI;-0.25~-0.01)、身体活動量はβ=-0.29(同-0.41~-0.16)であり、夜型であることと身体活動量が少ないことが、体脂肪率の高さと独立して関連していた。

四肢筋量(AMM)に関してはMEQスコアがβ=0.14(0.02~0.25)、身体活動量β=0.40(0.28~0.52)、骨格筋量指数(SMI)に関しては同順に0.19(0.07~0.31)、0.33(0.20~0.45)であり、夜型であることと身体活動量が少ないことが、筋肉量の少なさと独立して関連していた。

これら一連の結果を基に著者らは、「クロノタイプが夜型の女子大学生は身体活動量が少なく、体脂肪率が高くて筋肉量が少ないことが示唆される。若年女性の適切な体組成の維持のために、クロノタイプ特異的な介入手段を講じる必要があるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of body composition with physical activity, nutritional intake status, and chronotype among female university students in Japan」。〔J Physiol Anthropol. 2024 May 9;43(1):13〕
原文はこちら(Springer Nature)

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