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食事・運動の混合介入「DEMI」は日本人高齢者の健康に有用 RCTの体系的レビューとメタ解析

食事や食行動への介入と、身体活動への介入を並行して行うことで、高齢者の健康の維持・増進につながることが、システマティックレビューとメタ解析によって明らかになった。東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科の宮﨑貴朗氏らの研究によるもので、「Geriatrics」に論文が掲載された。

食事・運動の混合介入「DEMI」は日本人高齢者の健康に有用 RCTの体系的レビューとメタ解析

DEMIのエビデンスは意外なほど十分でない

超高齢社会の日本では、住民の要介護予防が公衆衛生上の喫緊の課題となっている。要介護リスクの低減のためには食事・栄養や身体活動習慣の改善が重要とされ、さらにそれらを単独ではなく並行して行うことで有効性がより高まると、一般的に理解されている。それは当然のように思われ受け入れやすい考え方ではあるが、エビデンスを求めようとすると、意外なほど質の高い研究報告が少ないという。例えば、比較対照群が設けられていない、サンプルサイズが十分でないといった、解釈上の限界点のある研究報告が多いとのことだ。

そこで宮﨑氏らは、既報論文のシステマティックレビューとメタ解析によって、食事と運動への混合介入(DEMI)に関する現時点のエビデンスの総括を試みた。なお、DEMIは「diet, food intake, and exercise mixed intervention」の略で、食事介入については栄養改善だけでなく、食行動の改善も含まれる。食行動の改善とは具体的には、食事の準備や調理、盛り付け、後片付けという一連の工程の指導または相談などのこと。

国内の地域在住高齢者を対象に実施されたDEMIに関する7件の研究報告を抽出

システマティックレビューおよびメタ解析の優先報告項目(PRISMA)ガイダンスに準拠して、Medical online、医中誌web、PubMed、CINAHL、Cochraneなどの文献データベースを用いた検索を実施。包括基準は、日常生活が自立している国内の地域在住高齢者を対象として、DEMIの有効性を無作為化比較試験または比較対照群のあるデザインで検討し、英語または日本語で執筆され全文が公開されている論文。除外基準は、症例報告、定性的研究、学会発表、レビュー論文、書籍、食事と運動の介入の組み合わせではなく個別に評価している研究、比較対照のない研究、自立を妨げる障害を有する参加者を対象とする研究など。

検索キーワードは、英語では、old、elderly people、nutrition、diet、food、eating、physical、exercise、function、muscle、mobility、activity、walking、balance、communityなど。日本語では、高齢者、地域在住、栄養、食物、食事、体力、運動などを用いた。検索で3,114報がヒットし、重複削除後の2,579報をタイトルと要約に基づくスクリーニングで95報に絞り込み全文精査を行い、最終的に7件の研究報告を抽出した。

抽出された7件の研究の特徴

7件のうち4件はフレイルまたはプレフレイルの高齢者を対象とした研究、他の3件はフレイルについて評価していないか含まれていなかった。

食事関連の介入には、講義、実習、グループ活動、相談などの手法が用いられ、運動介入には歩行、筋力強化、バランス運動などが行われていた。また、1件を除いて6件の研究では、外出しての活動、健康レベルの自己チェック、グループでの情報交換、温泉訪問など、DEMI以外の追加介入が実施されていた。

日常の歩行速度や食事の多様性などの有意な改善が確認される

この研究では、介入の前後や有無でアウトカムの量的検討が可能なデータが明示されているものをメタ解析の対象とし、そのデータが明示されていないものは定性的な解析の対象とされた。ここではメタ解析の結果を中心に紹介する。

食事関連アウトカム

食物摂取頻度調査(food frequency questionnaire;FFS)の評価結果は、DEMIによって有意に改善することが示された(平均差〈mean difference;MD〉)=2.62〈95%CI;1.62~3.61〉、統計量(Z)=5.16、p<0.0001)。また、食事の多様性の指標(diet variety score;DVS)も有意に改善していた(MD=35.78〈33.58~37.98〉、Z=31.84、p<0.001)。

自記式簡易型食事歴質問票(brief self-administered diet history questionnaire;BDHQ)の下位尺度をみると、タンパク質(MD=1.56〈0.30~2.82〉、Z=2.42、p=0.016)、動物性タンパク質(MD=2.07〈0.53~3.62〉、Z=2.62、p=0.009)、卵(MD=5.10〈0.77~9.43〉、Z=2.31、p=0.021)、乳製品(MD=24.09〈0.54~47.64〉、Z=2.00、p=0.045)の摂取量は有意に増加していた。摂取エネルギー量(MD=155.92〈-67.42~379.27〉)や魚介類の摂取量(MD=13.38〈-2.37~29.14〉)、肉類摂取量(MD=5.34〈-1.24~29.14〉)には有意な変化が示されなかった。

身体機能関連アウトカム

DEMIによって、日常の歩行速度が有意に改善することが示された(MD=0.07〈0.01~0.13〉、Z=2.22、p=0.027)。一方、最大歩行速度は有意な改善がみられず(MD=0.07〈-0.02~0.17〉)、また、握力(MD=-1.02〈-2.79〜0.758〉)、開眼片足立ち(MD=0.46〈-8.71~9.63〉)、およびタイムアップ アンド ゴー テスト(MD=-0.33〈-0.77~0.11〉)には、有意な変化が示されなかった。。

このほかに、心理社会的アウトカムとして評価されていた、老年期うつ病評価尺度(geriatric depression scale;GDS)には、有意な影響がみられなかった(MD=0.31〈-0.54~1.17〉)。

以上のメタ解析の結果および定性的な解析の結果を基に著者らは、「DEMIにより高齢者の諸機能に関する複数の指標が有意に改善することが確認された」と述べている。ただし、多くの研究のエビデンスレベルが中程度であり、有効性が認められない評価指標も存在していたことから、「さらに深い洞察を得るために、縦断研究等のより多くの研究が必要とされる」と付け加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Diet, Food Intake, and Exercise Mixed Interventions (DEMI) in the Enhancement of Wellbeing among Community-Dwelling Older Adults in Japan: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials」。〔Geriatrics (Basel). 2024 Mar 4;9(2):32〕
原文はこちら(MDPI)

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