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絶食後の運動前にタンパク質を摂っても、脂質酸化量は低下しない 女性での研究

絶食後に運動をすることで脂質酸化が亢進し、減量と体組成に影響を与えることができる。一方、運動前に炭水化物を摂取した場合はその影響が抑制されるが、タンパク質を摂取した場合は有意な影響が生じないとする、レクリエーションレベルのトレーニングを行っている女性対象の研究結果が報告された。

絶食後の運動前にタンパク質を摂っても、脂質酸化量は低下しない 女性での研究

絶食後の運動による減量効果は、運動前に摂取する栄養素で異なるか?

絶食状態で運動をすることで、エネルギー基質における脂質の割合が増加し、脂質酸化の亢進によって減量と体組成の修正が可能とされてきている。この効果を発揮させるために、運動の目的が減量と体組成の修正である場合は、運動前の摂食活動はその効果を減弱させると考えられる。実際、運動前に炭水化物を摂取した場合は脂質酸化が抑制される。ただし、炭水化物ではなく、タンパク質を摂取した場合の減量や体組成への影響は、とくに女性ではよくわかっていない。

本論文の著者らはこの点について、4条件の無作為化二重盲検クロスオーバー研究による検討を行った。

女性対象の無作為化二重盲検クロスオーバー研究

研究参加者は、日常的にレクリエーションレベルのトレーニングを行っている健康な女性15人。週に3日以上、30分以上の中等強度の運動を行っており、過去6週間以内は週6時間以上の有酸素トレーニングまたは8時間以上の総トレーニングを行っていないことを適格条件とした。週に3日以上、400mgを超過するカフェインを摂取している人、月経周期に影響を及ぼし得る避妊法を行っている人は除外されている。また、研究期間の30日前から研究終了までは、脂質代謝に影響を及ぼし得るサプリメントの摂取を禁止し、各トライアル実施の24時間前からはアルコール、ニコチン、タバコ、運動を禁止して、8~10時間の絶食後にトライアルを施行した。

15人の年齢は、32±10歳、BMI23.4±3.2、体脂肪率27.1±3.6%、VO2max36.5±4.2mL/kg/分。比較検討した条件は以下のとおり。

炭水化物、ホエイ、カゼイン、プラセボの4条件で比較

炭水化物、ホエイ、カゼインのサプリメントはいずれも25gであり、等エネルギー量であって、ホエイとカゼインの窒素含有量は同等だった。プラセボのサプリはノンカロリーであり、つまりプラセボ条件は絶食状態での試行を意味する。それらはすべて、8オンスで同色かつ同じ風味の水溶液に調整し、不透明の容器で手渡した。

各条件でのトライアルは、割り当てられたサプリを3分以内に摂取し、30分間の安静ののち、60分間のトレッドミル走行で基質酸化の速度と量を評価した。トレッドミルの負荷は各個人の換気性閾値(ventilatory threshold;VT)の85%とした。また、運動負荷前、負荷終了直後、1時間後、2時間後に、安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure;REE)を計測した。

なお、試行順序は無作為化され、最初の試行の2日前から食事記録をとってもらい、そのコピーを渡して、他の3条件の試行前にはできるだけ同じものを摂取するよう指示するとともに、実際に摂取したものを記録してもらった。また、試行は初期卵胞期(月経開始から7日目まで)に行い、施行間隔は少なくとも48時間以上あけた。通常、最初の月経サイクルに2条件の試行、次のサイクルに残り2条件の試行を行った。

ベースライン時点で、エストロゲンレベルに有意差はなかった。また、試行前の栄養素摂取量も有意差がなかった。研究期間中に、体重の有意な変化は観察されなかった。

運動中の基質酸化はタンパク質を摂取しても絶食(プラセボ)条件と有意差なし

トレッドミル走行中の呼吸交換比(respiratory exchange ratio;RER)を5分単位で比較すると、炭水化物条件はプラセボ条件よりも、10~15分、20~25分、30~35分、40~45分という4時点で有意に高値を示した。

運動負荷中に炭水化物の酸化速度は、全条件で経時的に低下していた。

炭水化物条件では、運動負荷中の脂質酸化量が少なく、炭水化物酸化量が多い一方、絶食状態であるプラセボ条件はその反対であり、両群の炭水化物酸化量(57.0±12.9 vs 46.3±20.7g)、脂質酸化量(15.1±3.5 vs 19.4±7.4g)に有意差が認められた。それに対して、ホエイとカゼインというタンパク質摂取条件では、いずれもプラセボ条件との炭水化物および脂質の酸化量の条件間の差が非有意だった。

安静時エネルギー消費量(REE)については、運動直後にホエイとカゼインというタンパク質摂取条件での値が炭水化物条件より有意に高値だった。

論文の結論は以上の結果を総括するかたちで、「女性の場合、絶食状態で中等強度の60分間の運動を行うと、その運動前に炭水化物を摂取した場合に比べて脂質酸化が有意に亢進することが示された。ただし、運動前にタンパク質を摂取しても絶食状態の運動との有意差はなかった。運動負荷後のREEは、炭水化物摂取条件よりタンパク質摂取条件のほうが有意に高かった」と記されている。また、この点に関連する今後の研究課題として、レジスタンストレーニングや高強度インターバルトレーニングなど、ほかの形態の負荷をかけた場合の反応の差を評価する必要性とともに、一過性の影響ではなく、より長期間追跡しての慢性の影響を評価する必要性もあるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Metabolic impact of feeding prior to a 60-min bout of moderate-intensity exercise in females in a fasted state」。〔Front Sports Act Living. 2023 Jan 16;4:1070477〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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