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黄体期のクレアチン摂取で体内の水分量が増えるが体重は変わらない 月経周期を考慮したRCT

女性がクレアチンを摂取した場合の体重や体内水分量への影響を、月経周期を考慮して検討した無作為化比較試験の結果が報告された。体重は卵胞期、黄体期ともにプラセボ条件と有意差がなかったという。また、黄体期にクレアチン摂取条件で、細胞外液、細胞内液、体内総水分量の有意な上昇が観察され、研究者らは、「この変化は黄体期の体温調節機能やスポーツパフォーマンスの向上につながる可能性があるのではないか」と述べている。

黄体期のクレアチン摂取で体内の水分量が増えるが体重は変わらない 月経周期を考慮したRCT

月経周期に伴う体液分布の変化とクレアチン摂取の影響を検討

この研究は米国で実施された。米国では女性のサプリメント利用率が高く、77%が利用しているというデータもある。それにもかかわらず、スポーツサプリメントとしても豊富なエビデンスのあるクレアチンの利用を躊躇する女性もいる。その主な理由は、クレアチン摂取により体内の水分が増えて体重が増加すると言われていることと考えられる。ただし、クレアチン摂取の影響を女性で検討した研究も増加しているとは言え、これまでの研究の多くは男性で行われてきており、クレアチン摂取による体内水分量の増加は男性で示されたものであり、女性では十分検討されていない。

また、女性は月経周期によって、体内の水分の分布が変化することが知られている。とくに、黄体期には細胞外液の分布が増加する。この変化が、体温調節とスポーツパフォーマンスの低下につながる可能性を指摘した研究報告もみられる。仮にクレアチン摂取によって体内総水分量が増加するのであれば、黄体期のこのような変化の相対的な影響が抑制される可能性もある。ただ、そのような視点での研究はまだなされていない。

今回紹介する論文の著者らは、そのような可能性を念頭に置きつつ、まずは女性の月経周期に伴う体液バランスの変化に対するクレアチン摂取の影響の有無を検討した。

習慣的な身体活動を行っている女性対象のクロスオーバー試験

研究参加の適格基準は、年齢18~40歳で週に3日以上中~高強度の運動を行っている健康な女性で、BMIが18.5~29.9であり、自然な月経があって(避妊薬の使用は除外していない)、過去3カ月以内に怪我をしていないこと。除外基準としては、無月経/希発月経、月経異常の既往、妊娠中または妊娠計画中、研究期間中の鎮痛薬(NSAID)の使用、200mg/日以上のカフェイン摂取、パフォーマンスを向上させるサプリメント(クレアチン、β-アラニン、カルノシン、タウリン、プロテインなど)の利用といった項目が設定されていた。

研究参加者は30人で、年齢25±6歳、BMI23.4±2.4。無作為に2群に分け、1群をクレアチン摂取条件を先に、他の1群をプラセボ条件を先に試行した。クレアチンまたはプラセボは1日4回、5日連続で摂取してもらった。それぞれの1回分の用量は、クレアチンが5g、カロリーのないプラセボが3.5gであり、外観や色、臭い、味などからは区別できない状態で支給した。

月経周期アプリを用いて、参加者の月経周期と排卵日を確認後に、卵胞期または黄体期の5日間にクレアチンまたはプラセボを摂取してもらい、その後、12時間の絶食後に体液バランスを評価。その時点で尿比重が1.025で脱水状態の場合は16オンスの水分を摂取し15分後に測定、尿比重が1.002未満で水分過剰な状態の場合は、日を改めて測定された。

なお、唾液検体を用いてエストロゲンレベルを評価。卵胞期に測定する群と黄体期に測定する群とで、有意差がないことが確認された。

体内水分量は黄体期のクレアチン摂取条件で増加し卵胞期は変化なく、体重は一定

では結果だが、まず、体重については、卵胞期の介入前/介入後、黄体期の介入前/介入後の4時点すべてで有意な変化がなく、クレアチン摂取とプラセボ摂取の条件間の差も有意差が認められなかった。

体内総水分量の変化

次に、体内総水分量(total body water;TBW)の変化をみると、プラセボ条件では、黄体期の介入前/介入後の4時点すべてで有意な変化は観察されなかった。クレアチン条件も卵胞期は有意な変化がなかった。それに対して黄体期では、プラセボ条件がΔ-0.616±0.376Lであったのに対して、クレアチン条件はΔ0.832±0.376Lであり、有意差が認められた(p=0.021)。

細胞外液・内液量の変化

続いて細胞外液量の変化をみると、プラセボ条件では、黄体期の介入前/介入後の4時点すべてで有意な変化は観察されなかった。クレアチン条件も卵胞期は有意な変化がなかった。それに対して黄体期では、プラセボ条件がΔ-0.171±0.155Lであったのに対して、クレアチン条件はΔ0.464±0.155Lであり、有意差が認められた(p=0.015)。

細胞内液量も同様に、プラセボ条件では黄体期の介入前/介入後の4時点すべてで有意な変化は観察されず、クレアチン条件も卵胞期は有意な変化がなかった。それに対して黄体期では、プラセボ条件がΔ-0.054±0.23Lであったのに対して、クレアチン条件はΔ0.732±0.231Lであり、有意差が認められた(p=0.039)。

黄体期のパフォーマンス低下をクレアチンが抑制するか?

著者によると、クレアチン摂取後に副次的な作用としてみられることの多い体重増加は、筋力パフォーマンスに関連のあるパラメーターの一つともいえる、体内総水分量(TBW)の増加に起因するものだという。このような変化はこれまで男性で確認されていたが、本研究により女性の黄体期にも生じることが明らかになった。ただし、体重の有意な変化は認められなかったことから、一部の女性がクレアチン摂取を躊躇する理由である体重増の懸念はないとしている。

また、TBWまたは細胞内液の増加は体温調節能や身体パフォーマンスの維持・向上と関連しているとの報告もあることから、高温層である黄体期のパフォーマンス低下を打ち消すように働くのではないかとも、著者らは考察している。ただし、本研究はTBWや細胞内液量と体温との相関を検討しておらず、パフォーマンスの変化も評価していない。論文の末尾は、これらの点の検討が今後の課題だと結ばれている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Randomized Controlled Trial of Changes in Fluid Distribution across Menstrual Phases with Creatine Supplementation」。〔Nutrients. 2023 Jan 13;15(2):429〕
原文はこちら(MDPI)

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