オープンウォータースイミング選手のサプリメント摂取状況
プールではなく、海や川・湖など屋外の自然環境を利用して行われる水泳競技、オープンウォータースイミングを行っているアスリートのサプリメント摂取状況を、競技レベル別に検討した結果がスペインから報告された。著者らは、オープンウォータースイミングでのサプリ利用率の研究は、この報告が初めてのものだとしている。
オープンウォータースイミングとは
オープンウォータースイミング(日本水泳連盟)オープンウォータースイミングの特徴
持久系スポーツの中で近年、競技人口が拡大している競技として、オープンウォータースイミング(open water swimming;OWS)が挙げられる。OWSは2008年の北京オリンピックで水泳競技として組み込まれ、オリンピックでは10km、国際競技会では5、10、25kmの距離が設定されている。
OWSの特徴として、プールでの競技と異なり、天候、水温、水流が自然環境次第であること、競技時間が最大5~6時間に達することあることなどが挙げられ、勝利に向けた戦略として考慮を要する要素が多い。栄養戦略ももちろん重要であり、サプリメントを利用しているアスリートが少なくない。ただし、その実態はこれまで調査されていなかった。
OWS選手の5人に4人がサプリを利用
この調査は、スペイン国内の2019/2020シーズンと2020/2021シーズンに参加したアスリート、計132人を対象に行われた。これは、同国のOWS競技団体に登録されているスイマーの3人に1人(33.2%)に該当する。
参加者は平均43.11±12.83歳で、103人が男性であり、女性は全員がスペインの地域大会レベルの選手だった。詳細は以下のとおり。
スペイン国内大会レベルのスイマーは67人で全員が男性であり、年齢44.13±12.20歳、BMI25.22±2.8、競技歴5.93±2.99年。同国の地域大会レベルのスイマーは65人で、そのうち男性は36人であり、年齢43.28±14.30歳、BMI25.09±3.93、競技歴5.75±2.99年、女性は29人で40.52±12.42歳、BMI22.62±2.77、競技歴5.69±3.17年。
ハイレベル選手は利用率より高い
全体の79.5%がサプリメントを利用していると回答した。競技レベルが高い群で利用率がより高く、有意差が認められた(88.1 vs 70.8%,p=0.017)。
摂取しているサプリの種類は平均4.67±4.65種類で、競技レベルが高い群で多いものの有意水準には至らなかった(5.34±4.92 vs 3.98±4.28,p=0.093)。
BCAAとタウリンの摂取率に競技レベルで有意差
オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)によるABCD分類に準拠し摂取状況を集計すると、以下のとおり、分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acids;BCAAs)とタウリンについて、ハイレベルのスイマーのほうが摂取率が高いという有意差が認められた。
なお、ABCD分類のグループAはスポーツサプリとして有効性を示すエビデンスのあるもの、Bは一定の条件下では有効の可能性のあるもの、Cはエビデンスが不足しているもの、Dは禁止物質。
グループA
- スポーツドリンク:62.9%
- エナジーバー:53.0%
- カフェイン:39.4%
- ビタミンD:22.7%
- マルチビタミン:18.9%
- 電解質サプリ:16.7%
- 乳清タンパク:15.9%
- クレアチン一水和物:12.9%
グループB
- ビタミンC:25.0%
- マグネシウム:22.0%
- カルニチン:12.1%
- ビタミンE:11.4%
グループC
- BCAA:19.7%(国内レベルは26.9%、地域レベルは12.3%、p=0.048)
- グルタミン:15.9%
- タウリン:10.6%(国内レベルは17.9%、地域レベルは3.1%.p=0.009)
- ローヤルゼリー:10.6%
摂取する時期やタイミングは有意差なし
サプリを摂取する時期
- トレーニング期間と競技期間ともに摂取する:39.4%
- 競技期間のみ:28.0%
- トレーニング期間のみ:11.4%
サプリを摂取するタイミング
- 運動前:29.7%
- 運動前・中・後:27.3%
- 運動中:25%
- 運動後:7.8%
- 運動に関連しないタイミング:10.6%
なお、これらの傾向に競技レベルによる有意差はなかった。
摂取の目的はハイレベル選手で「パフォーマンス向上」が多い
摂取の目的として「パフォーマンスの向上」を挙げたのは、国内レベル選手は52.1%、地域レベル選手は42.6%で前者に多く、一方「健康のため」を挙げたのは同順に7.0%、24.6%であって後者に多かった。
購入場所や情報源は有意差なし
サプリの購入場所
- 専門店:27.1%
- 薬局:18.1%
- インターネット:15.7%
- ショッピングモール:15.3%
サプリに関する情報源
- トレーナー:18.0%
- 栄養士:16.8%
- チームメイト:16.2%
- 友人:12.0%
これらの傾向に競技レベルによる有意差はなかった。
以上一連の結果を基に著者らは、「オープンウォータースイマーのほとんど(約8割)がサプリメントを消費しており、競技レベルが高いほど利用率が高いと結論づけることができる」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Analysis of the Consumption of Sports Supplements in Open Water Swimmers According to the Competitive Level」。〔Nutrients. 2022 Dec 7;14(24):5211〕
原文はこちら(MDPI)