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世界のアスリートのサプリメント使用状況を考察したスコーピングレビュー

世界中のアスリートのサプリメント利用状況をスコーピングレビューにより考察した論文が報告された。アスリートのサプリ利用率は報告によってまちまちであり、また利用されるサプリの種類の性差などが浮かび上がった。その一方で、サプリ使用の理由や情報源については一貫性がみられたという。

世界のアスリートのサプリメント使用状況 スコーピングレビュー

アスリートはなぜサプリを利用する?

アスリートは、サプリメントユーザーの主要な一角を占めていて、メーカーにとっては重要な購買層ということになる。調査により差があるが、アスリートの40~100%がなんらかのサプリを利用していると報告されている。

サプリは医薬品ではないため、大半の国で公的機関の承認を得ずに流通している。メーカーは有効性に関するエビデンスを購入者に提供する義務はなく、また世界アンチドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)の規制リストに該当するか否かを示す義務もない。そのため、サプリを利用しているアスリートの間で、時として意図しないドーピングによって選手活動に極めて大きなダメージを受けてしまうということが、しばしば発生している。

それにもかかわらずアスリートがサプリを使用する理由として、通常の食事からのみでは十分に摂取できない栄養素がある、アスリート個人の嗜好により摂取量が限定される栄養素も発生し得る、トレーニング日と休息日などの違いによって摂取すべき栄養素の量が大きく異なる、トレーニングの前または後の十分な食事摂取が現実的でないことがある、遠征等では現地の食品衛生が懸念されるケースもある――といったことが挙げられる。

このような背景から、アスリートのサプリ利用に関する調査研究が、これまでに多くの地域、集団で実施されてきている。ただし、それらの研究報告を対象としたレビューはまだ行われていないことから、本論文の著者らによるスコーピングレビューが実施された。

このスコーピングレビューは、システマティックレビューとメタ解析の優先報告で示されているスコーピングレビューのガイドライン(PRISMA-ScR)に則して実施された。適格基準は、アスリートを対象にサプリメントの使用率を調査した、2017年以降に査読システムのあるジャーナルに発表され、全文が公開されている英語論文。検索には、PubMed、CINAHL、PsycInfoなどのデータベースが用いられた。

26報の論文の解析

検索により596報がヒットし、重複削除、タイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングで52報に絞り込み、全文精査の対象とした。最終的に26報が解析対象として抽出された。

26報のうち31%はスペインからの報告で、27%は米国からだった。そのほかに、カナダ、英国、イタリア、日本などからの報告が多くみられた。

研究対象者数は20~2,113の範囲で合計1万7,342人であり、大半は成人アスリート対象だったが、9件の研究は18歳未満の未成年も含む(または未成年のみ)の研究だった。アスリートの競技は、単一競技での研究としてはランニング、ボディービル、サッカーが各2件で、ローイング、セーリング、ラグビー、フェンシング、ハンドボール、スカッシュなどは各1件であり、それら以外は複数の競技アスリートを対象としていた。また、1件はパラアスリート対象の研究だった。

アスリートにおけるサプリ利用率と全体的な傾向

研究によって、「サプリを利用している」との判定の定義が異なっていた。例えば、一定期間に使用した場合を「利用している」としたものや、期間を設けずに使用経験を問うたものもあった。そのためサプリ利用率は11~100%と広い範囲に分布していた。

少数の研究を除いて、概してサプリ利用率は女性よりも男性の方が高かった。利用頻度の高いサプリは、プロテイン、ビタミン/ミネラルであり、性別に比較すると、女性は男性よりビタミン/ミネラルのサプリ利用率が高い傾向にあり、男性はプロテインサプリの利用率が高かった。

サプリを利用する理由

サプリを利用する理由に関しては、研究間でおおむね一致していた。

最も多く報告されていた理由は、運動パフォーマンスの向上と、健康の改善、回復の促進だった。サプリを利用する理由に関する性差に焦点を当てた研究は限られていたが、女性は健康上の理由での使用が多い傾向にあり、男性はパフォーマンス向上が多く報告されていた。

サプリに関する情報源

大半の研究でサプリに関する情報源が調査されていた。

医療の専門家、コーチやトレーナー、インターネット、およびチームメイトが、最も頻繁に報告された情報源だった。性別の比較では、男性はコーチやトレーナー、チームメイト、栄養士、家族、友人からの情報に依拠する傾向が強いのに対し、女性は医療専門家、コーチやトレーナー、家族、友人が多く挙げられていた。

著者らは、「本研究の結果は、将来の教育介入プログラムの策定や、サプリのメリットとリスク、および専門家の指導により使用することの重要性に関するアスリートの認識向上に役立つだろう」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of Dietary Supplement Use among Athletes Worldwide: A Scoping Review」。〔Nutrients. 2022 Oct 3;14(19):4109〕
原文はこちら(MDPI)

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