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活躍する女性の健康とウェルネスを、生涯を通してサポートする栄養成分は?

今回は、活動的な女性の生涯をサポートする栄養素についてというテーマでの、ナラティブレビュー論文を取り上げる。著者は米国ノースカロライナ大学の研究者。

活躍する女性の健康とウェルネスを、生涯を通してサポートする栄養素は?

論文の冒頭にまとめられているキーポイントは以下の4つ。

  • 生物学的な男性と女性の間には、栄養素やサプリメントの推奨事項に影響を与える可能性のある重要な性差が存在する。
  • 月経周期全体にわたるホルモンの変動、および経口避妊薬の使用により、活発な女性の食事の推奨に際して考慮すべき代謝の変化が生じる。
  • 女性の生涯を通じて体組成とタンパク質代謝は変化し、それを勘案し性別に応じた栄養上の推奨事項が必要となる。
  • 活動的な女性のエネルギー、精神的健康、および身体的健康を対象としたサプリメントは、活動的な男性に推奨されるものとは異なる場合がある。

全体が約2万字に及ぶ大部な内容から、微量栄養関連の解説を中心にピックアップし、とくに女性に関する記述を紹介する。

β-アラニン

標的:エネルギーと疲労
推奨量:4~6g/日。1~2gを1日に3~4回
女性での研究レベル:低い
機能性:乳酸産生に伴い発生する水素イオンの影響を緩衝し、高強度運動による疲労を軽減する

女性、高齢者、菜食主義者など、筋肉のカルノシンレベルが低く、とくに高強度運動を行っている場合、β-アラニン摂取のメリットが大きいと考えられる。中年女性(54歳)を対象とする研究では、28日間のβ-アラニン摂取で下半身の膝伸展強度の有意な改善が認められた。月経周期との関連では卵胞期での回復をよりサポートする可能性がある。

カフェイン

標的:エネルギーと疲労
推奨量:3~9mg/kg。運動の60分前に摂取
女性での研究レベル:高い
機能性:有酸素運動とスプリントのパフォーマンスを向上、運動中の疲労と疼痛を抑制、脂質代謝の改善

カフェインの代謝は月経周期の過程で変動するようであり、黄体期や経口避妊薬の使用で遅くなり、効果がより顕著になるとともに、月経前症状が悪化したり、心拍数の増加、不安、睡眠障害を引き起こす可能性がある。

硝酸塩

標的:エネルギーと疲労
推奨量:ビート根ジュースの場合、運動の2時間半前に500mL摂取。ザクロエキスの場合、運動の30分前に500~1,000mL摂取
女性での研究レベル:低い
機能性:有酸素運動パフォーマンスを向上、血管拡張、ミトコンドリア機能の向上

男性と比較して女性はベースラインの一酸化窒素(NO)レベルが高く、硝酸塩補給後のNOの増加が大きい可能性がある。閉経後早期の女性では血圧改善をサポートするように働き有用と考えられる。閉経前の女性と比較して、内皮組織に対するエストロゲンの影響が強調される。女性は血管径が細いため、硝酸塩の血管拡張作用のメリットが高い可能性がある。また女性は男性よりも硝酸塩をNOに還元する力が高く、その点でも女性のほうが効果的である可能性がある。

クレアチン

標的:メンタルヘルス
推奨量:ローディングには~20g/日を4日、維持量は3~5g/日
女性での研究レベル:中等度
機能性:有酸素運動パフォーマンスの向上と、産後うつや月経周期に関連した認知機能上のメリット

内因性ホルモンレベルの変化は、男性と女性の個体間のさまざまなクレアチン特性に影響を及ぼしている可能性があり、また女性の内因性貯蔵量は男性より少なく、かつ食事から摂り入れる量も少ない。クレアチンキナーゼは、月経周期に伴うエストロゲンの周期的変化と一致することも示されている。クレアチン補給は、出産に伴う細胞エネルギーの枯渇の結果とも言える状態に効果的である可能性がある。閉経期に観察されるエストロゲンレベルの低下に起因する筋肉量、骨量、および筋力の低下も、クレアチン補給によって軽減されることが示されている。

ω3脂肪酸

標的:メンタルヘルス
推奨量:1~3g/日
女性での研究レベル:高い
機能性:脂質代謝の改善、心血管疾患リスクの抑制、月経周期に伴う炎症の抑制、うつと不安のレベルの抑制

ω3レベルの上昇は、うつや不安の症状を軽減することが示されており、男性よりも女性の方が高い割合で報告されている。

ビタミンD

標的:健康全般
推奨量:13~70歳は600 IU/日、70歳状は800 IU/日
女性での研究レベル:高い
機能性:カルシウムの吸収、免疫系の調節、骨格筋機能、骨代謝。および、種々の疾患の予防の可能性

女性は加齢とともにビタミンDレベルが低下し、女性のビタミンD不足は、心臓病、急性疾患、疲労骨折、筋肉痛/筋力低下など、多くの健康アウトカムと関連している。ビタミンDの補給は、生涯にわたって、また、すべての活動レベルにわたって、女性に推奨される。

マグネシウム

標的:健康全般
推奨量:310~320mg/日
女性での研究レベル:低い
機能性:タンパク質合成を助け、エネルギー代謝を改善し、心臓病のリスクを軽減する可能性がある。経口避妊薬を使用中、妊娠中、閉経期で重要

妊娠、閉経、経口避妊薬の使用など、女性にはマグネシウムの必要量を増加させる可能性のある、さまざまな病態生理学的状態がある。閉経前女性のマグネシウム補給は、炎症マーカーの低下を通して月経前症候群の症状を改善する可能性がある。閉経期から閉経後では、マグネシウムの補給がビタミンDの状態を最適化することにより、骨の健康を保護する可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Active Women Across the Lifespan: Nutritional Ingredients to Support Health and Wellness」。〔Sports Med. 2022 Sep 29;1-17〕
原文はこちら(Springer Nature)

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