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FCバルセロナフェメニ(女性)選手の練習・試合での発汗量と炭水化物摂取量を調査

エリート女子サッカー選手のトレーニングと試合での体液バランスの変化や炭水化物摂取量を調査した結果が報告された。発汗量はトレーニングより試合のほうが多く、炭水化物摂取量は両方の条件で推奨量を下回っていたという。

FCバルセロナフェメニ(女性)選手の練習・試合での発汗量と炭水化物摂取量を調査

エリート女子サッカー選手の水分・炭水化物摂取量の調査

女子サッカー選手は試合中に断続的にランニングによって、約10km走行する。この間、深部体温の上昇とグリコーゲンの消費が続き、それらが相まって試合終盤での走行距離減少につながると考えられている。一般に体重の2%を上回る水分の喪失はパフォーマンスの低下を招くとされている。

男子サッカー選手では、トレーニングに比べて試合中の水分摂取量は少ないことが報告されている。それに対して、エリートレベルの女子サッカー選手の水分摂取量を、トレーニングと試合とで比較した研究はほとんど行われていない。また、炭水化物の摂取量についても知られていることは少ない。

これを背景としてこの論文の著者らは、エリートレベルの女子サッカー選手のトレーニングと試合での、水分と炭水化物の摂取量を調査した。

バルセロナ女子1部のエリート選手を対象とする研究

この研究は、スペインの女子サッカーリーグ「プリメーラ・ディビシオン・フェメニーナ(Primera División de la Liga de Fútbol Femenino)」の第1部に所属しているFCバルセロナ・フェメニ(Futbol Club Barcelona Femení)の選手19人を対象に行われた。各選手は、60~120分のトレーニングや試合を週に3~6回行っていた。年齢は25±3歳、体重61.0±5.4kg、身長169.4±5.9cm、体脂肪率21.1±4.1%。

11月の競技シーズン中のトレーニングセッション1回と、2日間を隔てた試合1試合が研究にあてられた。いずれも屋外で行われ、トレーニングは10時15分から85分間で、気温18.6±1.3℃、相対湿度57±5%、風速0.0±0.0m/秒、WBGT(湿球黒球温度)13.5±1.2℃。試合は16時スタートで、各ハーフに3分の延長があり、合計時間は111分。環境関連パラメーターは前記と同順に18.8±0.7℃、66±1%、0.1±0.1m/秒、14.8±0.6℃だった。

どちらの条件でも選手は個別に用意された水分や炭水化物を自由に摂取できた。ただし試合中は実質的に、ハーフタイムと試合の流れが中断したときに限られた。水分は、水、電解質飲料(炭水化物2%または6%のゲータレード)、水分以外の炭水化物はバナナ、スポーツジェルなどが用いられた。

発汗量を体重の変化から把握するとともに、大腿と背部に吸水性パッチを貼付し、汗中のナトリウム濃度の計測に用いた。また、主観的な口渇感を1点(喉は全く渇いていない)~7点(極めて非常に咽が渇いている)で評価してもらった。

トレーニングと試合での体液バランスの比較

トレーニングセッションの30~60分前に採尿した尿比重(USG)から、19人中9人は水分補給が十分されており(USG1.020未満)、7人はやや脱水傾向があり(USG1.020~1.024未満)、3人は脱水傾向が強かった(USG1.024超)。

尿比重や発汗量などをトレーニングと試合とで比較可能なデータがそろっていた選手は8人であり、その8人の試合前の尿比重からは、7人は水分補給が十分されていて、1人のみやや脱水傾向にあった。この8人について、トレーニングセッションと試合での各パラメーターを比較すると、以下の点で有意差が認められた。

運動開始前においては尿比重がトレーニング(1.020±0.005)のほうが試合(1.012±0.007)より高く、主観的口渇感も同順に4±1点、2±1点であり、トレーニング前のほうが高かった。

一方、運動中の発汗量は、トレーニング(0.70±0.38L)、試合(1.58±0.5L)で試合のほうが多かった。発汗によるナトリウムの喪失速度は、同順に370±269mg/時、704±373mg/時であり、試合のほうが速かった。ただし、汗中のナトリウム濃度は29±9mmol/L、35±9mmol/Lであり有意差はなかった。

トレーニングと試合での水分・炭水化物摂取量の比較

次に、トレーニングと試合での水分と炭水化物の摂取量についてみると、いずれも有意差はなかった(p値は水分が0.114、炭水化物が0.219)。水分摂取量は、トレーニングで0.71±0.30L/時、試合では0.62±0.25L/時、炭水化物の摂取量は、同順に2.0±2.3g/時、0.9±1.5g/時。炭水化物の供給源はすべて炭水化物電解質飲料であり、水分以外の食品は含まれていなかった。また、トレーニングセッション中に炭水化物を摂取したのは5人のみ、試合中の摂取は3人のみだった。

運動中の適切な炭水化物摂取のため、スポーツ栄養士による指導が必要

以上より論文の結論は、「女子サッカー選手の発汗量はトレーニング中よりも試合中の方が高く、炭水化物の摂取量は試合やトレーニングでの推奨量を下回っていた」とまとめられている。

60分を超える高強度の間欠運動では、30~60g/時の炭水化物を推奨するとする報告がある。それに対してこの研究での女子サッカー選手の炭水化物摂取量は、トレーニングセッションで平均2.0g/時、試合では0.9g/時だった。また試合中に選手はすべて炭水化物電解質飲料から炭水化物を摂取していたが、その炭水化物電解質飲料には、炭水化物の含有量が2%のものと6%のものがあったにもかかわらず、選手は2%のほうを摂取していた。これは、飲食物へのアクセスの制限のために炭水化物摂取量が少なかったのではなく、嗜好による結果であることを示唆している。

著者らは、「エリート女子サッカー選手の運動中の炭水化物摂取量が十分でないことの原因を明らかにし、スポーツ栄養士による適切な介入が必要であることが示された」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Fluid Balance and Carbohydrate Intake of Elite Female Soccer Players during Training and Competition」。〔Nutrients. 2022 Aug 3;14(15):3188〕
原文はこちら(MDPI)

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