アスリートのサプリメント使用についてのアンケート結果 豪州トップレベル競泳選手102人を調査
エリートレベル競泳選手のサプリメント摂取状況を、性別・競技レベル別に分析した結果が、オーストラリアから報告された。著者によると、エリートスイマーの広範なサンプルでサプリ利用の実態を調査した研究は、これが初めてとのことだ。用いているサプリの種類や摂取タイミングなどの一部に、属性による違いが認められたという。
約100人の競泳選手に匿名アンケートで調査
スポーツアスリートのサプリメント利用率は、調査によって広い範囲に分布しており、30~95%に及ぶとされる。一般的に、競技レベルが高いほど利用率が高く、女性より男性で高い傾向のあることが報告されている。
水泳は、競技として一括りにされるものの、種目によってアスリートに求められる身体機能が異なる。例えば400mクロールでは有酸素運動能力の関与が81%であるのに対して、50mや100mでは15.3%と報告されている。そのため栄養戦略もアレンジが必要とされ、サプリ利用状況にも差異が生じる可能性がある。ただし、エリートレベルの競泳選手のサプリ利用の実態は、これまで十分調査されていない。
そこで今回紹介する論文の著者らは、オーストラリアのエリートレベルの競泳選手を対象とする実態調査を行った。
アンケート回答者の特徴
この調査は2019年4~10月にネット経由で行われ、匿名で回答可能とした。対象はオーストラリアの競泳選手102人(男性59人、女性43人)。全員が水泳連盟に所属しており、調査回答時点において国際大会で活躍している選手が39人、国内大会レベルで60人が活躍しており、国際レベルの選手は少なくとも過去2年間、同国代表として大会に参加していた。なお、3人は競争力のあるレベルを有していないと判断され、解析から除外された。
性別で比較すると、身長や体重は男性のほうが有意に高値であり、トレーニング量(週あたりの日数、および筋力トレーニングにあてる時間)は同等だった。
競技レベルで比較した場合、身長、体重、週あたりのトレーニング日数は有意差がなかった。ただし、女性では、筋力トレーニングの時間が国際レベルより国内レベルの選手のほうが多かった(3.5±1.0 vs 4.3±1.7時/週,p=0.044)。
それではサプリの利用状況をみていこう。
医療用サプリの利用率は国際レベル選手のほうが高い
サプリ利用に対する考え方と摂取率、理由、入手方法、助言者
サプリを利用することに対して、反対が6.1%、賛成が80.8%、わからない・無回答が13.1%で、全体の86.9%が利用していると回答した。利用の動機は、パフォーマンスの向上が59.2%、ヘルスケア14.6%、食事の不足を補うため10.0%と続いた。
入手方法は、スポーツサプリ専門店が32.0%、薬局が27.2%でこの二つが多く、その他はショッピングセンターとインターネットが各10.9%だった。サプリ摂取の助言者はコーチが最多で40.3%、次いで栄養士が20.1%であり、その他は医師10.0%、フィジカルトレーナー8.1%、家族6.7%、チームメイト6.0%、友人4.7%など。
これらの結果に、性別・競技レベルによる有意差はなかった。
摂取タイミングは競技レベルで有意差
サプリを摂取する時期は、競技期間中が最も多く66.0%、トレーニング期間中のみが23.0%、年間を通じて摂取が7.0%、その他4.0%であり、性別・競技レベルによる有意差はなかった。
他方、摂取タイミングについては、性別では有意差がなかったが、競技レベルでは有意差が存在した(p<0.001)。具体的には、国際レベルの選手は運動前・中・後に摂取するとの回答が国内レベルの選手より多く(39.5 vs 18.6%)、国内レベルの選手は、運動前のみ(13.2 vs 42.4%)、または運動後のみ(21.1 vs 27.2%)との回答が多かった。
利用サプリをAISのABCD分類で比較
利用しているサプリの種類については、オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)によるABCD分類に準拠して検討した。なお、グループAは、スポーツサプリとして有効性を示すエビデンスのあるもの、Bは一定の条件下では有効の可能性のあるもの、Cはエビデンスが不足しているもの、Dは禁止物質。
その結果、A、B、Cというグループごとの比較では、性別や競技レベルによる利用量の有意差は認められなかった。しかし、グループAの中の医療用サプリの利用量は、男性において国際レベルの選手のほうが国内レベルよりも有意に高かった(1.2±1.0 vs 0.4±0.6種, p=0.012)。
利用率の高いサプリ
利用されているサプリは、カフェイン53.5%、スポーツドリンク52.5%、スポーツバー51.5%、ビタミンC43.4%などが多く挙げられた。
性別での比較では、女性は男性に比べて複合ビタミンの利用率が有意に高く(33.3 vs 14.0%,p=0.029)、クレアチン(16.7 vs 36.8%,p=0.041)やタウリン(p=0.001)の利用率は男性のほうが高かった。ホエイプロテインは有意には至らなかったが、男性のほうが利用率が高い傾向がみられた。
一方、競技レベル別の比較では、国際レベルのアスリートの鉄サプリの利用率が国内レベルのアスリートよりも高かった(56.4 vs 18.3%,p<0.001)。
文献情報
原題のタイトルは、「Analysis of Sport Supplement Consumption by Competitive Swimmers According to Sex and Competitive Level」。〔Nutrients. 2022 Aug 6;14(15):3218〕
原文はこちら(MDPI)