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サプリメントで腱障害の痛みは改善するのか? システマティックレビューとメタ解析で検証

2022年05月10日

アキレス腱などの腱の障害をサプリメントで改善可能かという疑問を、システマティックレビューとメタ解析で検討した研究結果が報告された。結論は、サプリ使用で痛みは有意に改善する、しかし機能的な評価に有意な改善はみられないというものだ。

サプリメントで腱障害の痛みは改善するのか? システマティックレビュー&メタ解析

システマティックレビューの手順について

筋骨格系の症状の約3割は腱の障害によるものと報告されている。腱障害の治療には、運動療法や偏心トレーニング、手技療法、対外衝撃波などを含む理学療法が行われている。近年は栄養介入の有用性の報告もなされるようになった。今回紹介する研究は、それらの研究を対象にシステマティックレビューとメタ解析を行い、腱障害に対するサプリメントによる栄養介入の効果を検証したもの。

システマティックレビューは、PRISMA(システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項。preferred reporting items for systematic reviews)に準拠して行われた。

研究報告の適格基準は、研究参加者が70歳未満であり、理学療法のみ、または理学療法+プラセボ介入の対照群を置いて、理学療法+サプリによる栄養介入の効果を検証した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)であること。また、介入期間が4週間以上であること、論文が英語で執筆されていること、全文が公開されていることも適格条件に含めた。研究参加者の性別、人種/民族、アスリートか否かは問わなかった。レターや学会発表、動物モデルでの研究は除外した。

PubMed、Cochrane、Embase、Web of Scienceを用いて、各文献データベースの開始から2021年11月までに公開された報告を対象として検索。94件がヒットし、重複の削除により64件となり、2名の独立した研究者がタイトルとアブストラクトに基づきスクリーニングを実施。8件の報告を全文精査の対象として、最終的に6件の研究報告がメタ解析の対象として抽出された。

メタ解析の対象研究の特徴

抽出された6件の研究の参加者は合計241人で、年齢は14.8±1.6~55.8±13.2歳の範囲。介入期間は4週間から12週間の範囲で、参加者の症状持続期間は4週間~3年、介入開始から追跡終了までの期間は32日~1年だった。

6件中5件は痛みの変化を評価し、4件は腱の機能性を評価していた。また、栄養介入群の介入方法は、4件は運動療法+サプリ、1件は体外衝撃波療法+サプリ、他の1件は超音波治療+サプリであり、対照群は各々のサプリをプラセボ摂取または栄養介入なしとしていた。

栄養介入に用いられていたサプリは、ビタミンA、B6、C、E、クレアチン一水和物、I型コラーゲン、EPA、DHA、セレン、亜鉛などを複合して用いられていた(1件のみコラーゲン単独)。それらのサプリは、炎症抑制、抗酸化作用などを期待され採用されていた。

安静時疼痛は有意に改善する可能性

痛みに対する影響を検討していた5件の研究のメタ解析の結果、サプリによる栄養介入群のほうが痛みの評価指標が有意に改善されていた(標準化平均差〈SMD〉=-0.74〈95%CI;-1.37~-0.10〉,Z=2.28,p=0.02)。

メタ解析の対象とされた研究を個別にみると、単独で有意な効果を報告していたのは、2004年にデンマークから報告された研究のみだった。その研究ではアスリートを対象に、ビタミンA、B6、C、E、EPA、DHA、セレン、亜鉛などを複合した栄養介入を行っていた。

他の4件の研究は有意でないながらもSMDはすべてマイナスであり、腱障害の痛みに対するサプリによる栄養介入を否定する結果は報告されていなかった。

腱障害の部位(アキレス腱/その他の腱)、介入期間(8週以下/8週超)、理学療法の種類(運動療法/対外衝撃波または超音波治療)、対象(アスリート/非アスリート)で層別化したサブグループ解析を行うと、有意性の認められた集団は抽出されなかった。

腱の機能性には有意な影響なし

続いて、腱の機能性に対する影響を検討していた4件の研究のメタ解析の結果をみると、SMD=0.29〈95%CI;0.00~0.58〉,Z=1.99,p=0.05)であり有意な影響は認められず、有意でないながらも傾向としては栄養介入を行わない群のほうが支持されると解釈も可能な結果だった。

実際、メタ解析の対象とされた研究を個別にみると、1件の研究は有意に対照群(栄養介入を行わない群)のほうが腱の機能性が優れるという結果を報告していた。その研究は2012年にイタリアから報告された研究で、対象は非アスリート集団であり、介入にはI型コラーゲン、ビタミンCなどを複合したサプリが用いられていた。評価部位はアキレス腱だった。このイタリアからの報告の影響からか、サブグループ解析では、腱障害の部位がアキレス腱の場合、栄養介入を行わないほうが有意に腱の機能性が優れるという結果が示された(SMD=0.53〈95%CI;0.16~0.90〉)。

この点について著者らは、サプリ摂取によって炎症が抑制されることにより治癒機転が遅延することも想定され、その影響の現れである可能性もあると考察を述べている。

「何が効いているのか」がわかる研究が期待される

以上を基に論文の結論では、以下のように述べられている。

腱障害の治療において、理学療法治療に加えてサプリメントの使用が疼痛軽減の効果的な戦略となる可能性がある。鎮痛薬の使用を減らし、より短期間での回復につながるのではないか。ただし、より明確な結論を導き出すには、サンプルサイズが十分に大きく、より高品質のRCTが必要だ。また、今後の研究はより的を絞った結果を得るために、栄養素を複合したものでなく、介入に用いる栄養成分の種類を制限して行うべきである」。

文献情報

原題のタイトルは、「Does Additional Dietary Supplementation Improve Physiotherapeutic Treatment Outcome in Tendinopathy? A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔J Clin Med. 2022 Mar 17;11(6):1666〕
原文はこちら(MDPI)

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