朝食を食べないと、体重が増え、筋肉量が低下する可能性を示唆 名古屋大学の研究
朝食を食べないことが、体重を増加させてメタボリックシンドロームのリスクを高めやすいことが知られている。しかし影響はそれだけでなく、筋肉を萎縮させてしまう可能性もあるという研究結果が報告された。名古屋大学大学院生命農学研究科の研究グループの研究によるもので、「British Journal of Nutrition」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。
研究の概要:朝食欠食でマウスの筋肉量が低下することを初めて明らかに
これまでに多くの研究が、朝食習慣は健康に良いことを示しており、体重を抑える作用があると考えられてきた。今回の結果を報告した研究グループでは2018年に、高脂肪食を食べさせたラットを使い、朝食欠食※1が体内時計※2の異常を来した結果として、体重増加をもたらすことを遺伝子レベルで明らかにしている※3。今回は、マウスを使用し、普通食を摂取した場合でも、朝食欠食が体内時計の異常をもたらし体重増加することを確認、筋肉萎縮ももたらすことを初めて明らかにした。この結果は、朝食欠食により各臓器の時計が異常になるためであることがわかった。
本研究では、朝食欠食の習慣が、メタボリックシンドローム※4の危険性を増加させるだけでなく、ロコモティブシンドローム※5やサルコペニア※6の危険性を増大させることを明らかにした。朝食は、子どもには十分な栄養素を供給する役割があり、成人にはメタボリックシンドロームを抑える効果が期待され、さらに老年期には筋肉萎縮を抑制してロコモティブシンドロームやサルコペニアの危険性を抑える作用があることが明らかとなった。
図1 朝食欠食によりメタボリックシンドローム、ロコモティブシンドローム、サルコペニアの危険性が増大
研究背景と内容:マウスの活動期の最初の4時間に餌を与えずに比較
日本をはじめ先進国では、若い人の朝食欠食が少なくない。古くから朝食は食べたほうが良いのか、食べなくても良い、もしくは食べないほうが良いかという「朝食論争」が繰り広げられてきた。とくにダイエットに関して、朝食を食べたほうが痩せるのか、太るのかについても、多くの関心が持たれてきた。
一方、文部科学省をはじめとする行政機関は、朝食を食べるための国民的な運動を行っている。これまで、多くの観察研究からは朝食を食べたほうが健康的であることが報告されてきたが、その分子メカニズム(遺伝子レベルでの説明)は十分に解明されていなかった。
2018年に同研究グループは、ラットに高脂肪食を与え朝食欠食をさせると、体内時計に異常が生じて、体重が増加することを報告していた。この研究から、朝食習慣は、体内時計を正常化させることで太りにくい体質を作ることがわかり、メタボリックシンドロームの予防に重要であることが遺伝子レベルで明らかになった。
今回の研究では、マウスを用いて普通食を与え、活動期の最初の4時間を食べさせないようにして朝食欠食にさせた。
図2
その結果、普通食の場合でも、朝食欠食により脂肪組織重量が増加して体重増加が見られた。これは、体温や肝臓や脂肪組織での時計に異常が生じたためであることがわかった。
図3 体重増加量
さらに、朝食欠食によって筋肉重量の低下が起こることを初めて見いだした。これは筋肉の時計の異常によるものと考えられる。
これらの結果から、朝食欠食は、脂肪組織の増加による体重増加だけでなく、筋肉の萎縮をもたらすことが明らかとなり、朝食はメタボリックシンドロームの予防や、ロコモティブシンドローム、サルコペニアの予防にも役に立つことがわかった。
研究成果の意義:子ども~成人~高齢者にとっても朝食が重要
朝食習慣が、普通食を食べている時でも体重増加を抑制するということを再度確認した。朝食習慣が体内時計を正常化させるため、太りにくい体質を作る可能性がある。つまり、メタボリックシンドロームの予防に役立つと考えられる。
今回新たに、朝食欠食が筋肉の萎縮をもたらすことを明らかにした。これは朝食欠食が筋肉の時計を異常にしたためと考えられる。朝食習慣が筋肉を維持して、ロコモティブシンドロームやサルコペニアの予防にも役立つ可能性がある。
朝食は、成長期の子どもには十分な栄養素を供給する役割があり、成人にはメタボリックシンドロームを抑える効果が期待され、さらに老年期には、筋肉萎縮を抑制してロコモティブシンドロームやサルコペニアの危険性を抑える作用があることが明らかとなった。
プレスリリース
朝食を食べないと、体重が増えるだけではなく、筋肉量も低下することを解明(名古屋大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Skipping breakfast regimen induces an increase in body weight and a decrease in muscle weight with a shifted circadian rhythm in peripheral tissues of mice」。〔Br J Nutr. 2022 Mar 11;1-26〕
原文はこちら(Cambridge University Press)