スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

サプリメント関連エビデンスに性差の実態 女性アスリート対象の研究が少ないことが判明

スポーツパフォーマンスに対するサプリメントの影響を検討した研究は決して少なくない。しかし、それらの多くは男性アスリートを検討対象としたもので、女性でのエビデンスは少ない実態を示す研究論文が報告された。著者らは、サプリメントのエルゴジェニック効果に関する研究報告を読む際には、その研究の対象アスリートの性別を確認する必要があると述べている。

サプリメント関連エビデンスに性差の実態 女性アスリート対象の研究が少ないことが判明

女性アスリートでのエビデンスはあるのか?

性差は、代謝、体温調節、体内水分量、倦怠感などに違いをもたらし、結果としてスポーツパフォーマンスに影響を与える。それだけでなく、ルールが性別により異なる競技・種目もある。そのため、男性アスリートを対象として行われた研究の結果を女性アスリートにそのまま適用できるとは限らない。

ところが、スポーツに関する研究の大半は男性のみを対象としており、女性のみを対象とする研究は4~13%と報告されている。また、アスリートの8~9割がサプリメントを使用しているとの報告があるが、それらの研究報告は、サプリメント利用率が男性よりも女性アスリートのほうが高いことを示している。つまり、スポーツサプリメントに関するエビデンスについては、性差が考慮されていないことによる影響が、他のスポーツ関連研究に比べて、より大きい可能性もある。

本論文の著者らは、このような状況を背景として、アスリートのサプリメント摂取に関する研究にどの程度、女性に適用可能なエビデンスが存在するかを検討した。

エビデンスの豊富な6種類のスポーツサプリについて分析

調査対象とするサプリメントは、オーストラリアスポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)が、「エビデンスのあるサプリメント」としている6種類(β-アラニン、カフェイン、クレアチン、グリセロール、硝酸塩/ビート根ジュース、重炭酸ナトリウム)とした。

文献検索にはPubMedを用い、2021年9月1日までに公開された英語論文を検索。以下の基準に該当するものは除外した。研究対象が50歳以上でトレーニングを受けてない(つまり、マスターアスリートでない)集団や小児、疾患(肥満症や高血圧など)を有する者、喫煙者である研究、および、サプリメント摂取によるパフォーマンスや健康との関連を定量的に評価していない研究など。

女性アスリート対象研究の少なさが浮き彫りに

解析対象として抽出された報告は、β-アラニンについては125件、カフェインは853件、クレアチン343件、グリセロール55件、硝酸塩/ビート根ジュース242件、重炭酸ナトリウム203件だった。それらの研究全体で、合計3万4,889人の研究参加者が含まれており、そのうち女性は7,884人(23%)であって、614件(34%)の研究には最低1人以上の女性が含まれていた。

研究件数や対象者数に8~10倍の格差

報告数を1年あたりに換算すると、女性のみを対象とする研究は年4件であり、男性のみを対象とする研究が年30件であることから、約8分の1だった。研究対象者の人数で比較すると、男性のみの研究の対象者は2万33人、女性のみの研究の対象は2,043人であり、約10倍の開きがあった。

それぞれの研究の対象者数は、女性のみを対象とするものと男性のみを対象とするものとの間に有意差はなかった(1件の研究あたり10~24人で、p=0.27)。また、男性と女性の双方を対象に含む研究では、すべての研究で男性の割合のほうが高かったが、有意差はなかった(男性の割合が53~58%で、すべてp>0.05)。

女性での研究はエリートアスリート対象の研究の割合が高い

次に、研究対象のパフォーマンスレベルを比較すると、国内大会レベル以上である割合が男性では26%であるのに対して、女性では33%を占めた。さらに国際大会レベルに限ると、男性が7%、女性は15%であり、全体的に、女性アスリートを対象とするサプリメントの研究の参加者は、男性アスリートよりもハイパフォーマンスと考えられた。

月経状態を考慮した研究は14%のみ

最低1人以上の女性が研究対象に含まれていた614件の研究のうち、89件(14%)は月経状態を考慮していた。自然な月経のある女性アスリートでの研究が62件、ホルモン避妊薬の利用アスリートでの研究が13件、月経不順のアスリートでの研究が1件、対象者の月経状態は混在しているが識別可能な研究が13件だった。

論文掲載誌のインパクトファクターの一部に有意差

サプリメント摂取に関する研究論文が掲載されているジャーナルのインパクトファクター(impact factor;IF)は2.3~5.7の範囲だった。

硝酸塩/ビート根ジュースに関する研究報告については、研究対象が男性のみの研究の論文掲載誌のインパクトファクター(IF)は3.46、男性と女性の双方が含まれている研究の論文掲載誌のIFは3.53であるのに対して、女性のみの研究の論文掲載誌のIFは2.30であり、前二者より有意に低かった。

その他の5種類のサプリメントに関する論文は、研究対象の性別による論文掲載誌のIFに有意差はなかった。

以上の結果から著者は、「アスリートのパフォーマンスに対するサプリメントの影響に関する研究では、女性アスリートの位置づけが不十分であることが確認された」とまとめている。また、月経状態に関しては、「全体の99.5%の研究は月経状態に関して最適な評価を行っていない」として、「女性アスリートにおけるサプリメントの有効性に関する信頼のできるエビデンスを提供していない」と結論。女性での研究を充実させていく必要性を指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Auditing the Representation of Female Versus Male Athletes in Sports Science and Sports Medicine Research: Evidence-Based Performance Supplements」。〔Nutrients. 2022 Feb 23;14(5):953〕
原文はこちら(MDPI)3

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ