アスリートの栄養知識を評価する方法は進歩しているのか? 5年間で12件の評価手法を開発
アスリートの栄養に関する知識の評価手法は年々進歩している。その進歩をレビューした論文が発表された。過去5年間に、改訂されたものを含めると、12件の評価手法が開発されたという。論文では、それらの評価手法の傾向の分析とともに、今後さらに改良を加えるべき点について考察を加えている。
栄養介入には、対象者の栄養に関する知識の評価が欠かせない
適切な栄養知識は、アスリートの食行動を変え、健康とパフォーマンスに影響を与えることは言うまでもない。そのため、アスリートの栄養に関する知識の評価が欠かせず、古くからさまざまな手法での評価が試みられている。とくに、スポーツ栄養士はアスリートに栄養に関する教育的立場を担うため、まず、介入対象であるアスリートの知識レベルを把握しないことには効果的な介入を行えず、効果測定もできない。
2016年には、アスリートの栄養知識の評価ツールの妥当性や信頼性が十分に検証されていないことを指摘する論文が発表され、それ以降、新たな評価ツールが複数開発されている。本論文の著者らは、過去5年間(2016年以降)に報告されたそれらのツールを文献検索により収集し、評価手法の評価を試みた。
過去5年で12件の新たな評価ツールが開発されている
文献検索には、PubMedとWeb of Scienceという二つの文献データベースを用いた。検索キーワードとして、栄養知識、栄養評価、アスリート、スポーツ、アンケート、ツールなどを設定し、2016年以降に発表された英語論文を検索。レビュー論文、学位論文などは含めなかった。その結果、過去5年間でスポーツ栄養知識調査票として新たに12件が報告されていた。
新たに開発された調査票の傾向
抽出された12件の調査票の報告は、オーストラリアから3件、英国、トルコ、イタリアから各2件で、その他に、スペイン、フィンランド、米国が各1件だった。12件中8件は、すべての競技アスリートを対象とした調査票で、他の4件は持久系スポーツ、超持久系スポーツ、チーム競技、陸上競技選手などに特化して開発されていた。また、評価対象をユース選手に特化したものも存在した。
12件中8件は新規に開発されたもので、他の4件は既存の評価ツールの改訂版だった。改訂は、既存ツールの簡易版とするため、超持久系スポーツに特化するため、特定の国での使用のためなどを目的として行われていた。
7件の評価ツールは、オンラインでの使用も想定して設計されていた。
妥当性と信頼性の評価
新たに開発された調査票の大半は、開発段階のステップとして、専門家パネルによる妥当性と信頼性の評価が組み込まれていた。ただしその専門家パネルの構成メンバーは報告によりばらつきがみられ、経験の多寡、多領域のキャリアバックグラウンドを持つ専門家が加わっているか否かなどの点で差異が存在した。また、スポーツ栄養学の専門家の経験について述べられている報告はなかった。
質問項目数や質問内容
質問の項目数は平均59±18で、26~89の範囲に分布していた。この項目数には、質問に対するある選択肢を選んだ場合にのみ回答を求められる、サブの質問は含まれていない。よって最大質問項目数はより多い可能性がある。
質問内容については、栄養一般について質問をしつつ、スポーツ栄養に重点を置くというスタイルが多くを占めていたが、スポーツ栄養に特化したものもみられた。質問のトピックとして多いものとして、サプリメント(質問項目に含めている調査票は9件)、体重管理(同7件)、回復戦略(5件)などが挙げられる。
スポーツ栄養知識評価ツールのさらなる改善に向けた提案
論文の著者らは、「過去5年間でアスリートの栄養知識の評価方法に進歩がみられた」と述べている。具体的には、「妥当性と信頼性の検証範囲が広がり、調査票としての感度も向上しており、かつて系統的レビューにより指摘されていた問題点が改善されている」とのことだ。ただし、「より改善すべき点が残されている」と述べ、いくつかのポイントを指摘している。
例えば、知識の多寡が実践に結び付いているか否かを評価するための工夫が十分でないという。また、知識を問う質問に、「わからない」という選択肢を含めるかどうかを考慮する必要があるとしている。著者によると、「わからない」を選択肢に加えない場合、評価結果がより鋭敏に現れるが、正確性が低下する可能性があるとのことだ。
その他、写真や画像をより積極的に使用すべきとしている。今回の調査で写真や画像を採り入れていた調査票は2件だけだったという。さらに、電子ツールの利用、対象の属性にあわせたマイナーな変更を想定した設計なども提案している。
文献情報
原題のタイトルは、「Recent Developments in the Assessment of Nutrition Knowledge in Athletes」。〔Curr Nutr Rep. 2022 Feb 16〕
原文はこちら(Springer Nature)