思春期の女子柔道アスリートのパフォーマンスや体格は、初経発来の時期によって大きく異なる
思春期の女子柔道アスリートの体格やパフォーマンスを、初経発来の有無や初経年齢との観点から検討した研究結果が報告された。初経前に比べて初経後のアスリートのほうが、大半の指標が有意に優れており、かつ、初経年齢によってパフォーマンスレベルの多くを説明可能だという。
19名の思春期女子柔道アスリートでの検討
小児期から成人期への移行期にあたる思春期は、からだが急速に成長・発達し、とくに女子では初経発来とともに大きな生物学的変化が生じる。思春期の女子アスリートの初経による体格やパフォーマンスの変化は、これまで主として審美系スポーツアスリートで検討されてきており、高強度のアクションを必要とするコンタクトスポーツではあまり検討されていない。そこで本論文の著者らは、思春期の女子柔道アスリートを対象に、この点の検討を行った。
一般的パフォーマンスと柔道特有のパフォーマンス(SJFT)を評価
研究対象は19名の女子柔道アスリート。年齢は13.9±2.3歳。全員が少なくとも正式な柔道トレーニング歴が2年以上あり、帯の色は紫色が10名、茶色が9名であり、ブラジルの州レベルまたは全国レベルで競技していた。なお、同国では2021年の競技会にこの年齢層の女子選手が39名参加しており、本研究の検討対象者はその48.7%にあたる。
女性研究者が対象者に個別インタビューを行い、初経に関する情報を取得。その結果、19名中7名が初経発来前、12名は初経発来後だった。
評価項目は、身長や体重のほか、一般的なスポーツパフォーマンスと、柔道特有のパフォーマンス。一般的なテストとしては、立ち幅跳び、メディシンボールスローテスト(3kgのボールを座位で投げて距離を評価するテスト)、握力を評価した。柔道特有のテストは、Special Judo Fitness Test(SJFT)と柔道着の把持力により評価した。
初経年齢でパフォーマンスレベルの多くを説明可能
では結果だが、まず、体格やパフォーマンスを、初経発来前の群と初経発来後の群で比較したデータをみてみる。なお、初経発来後の群の初経年齢は、11.8±1.2歳だった。
初経前/後別にみた、体格やパフォーマンスの比較
年齢は初経前群が11.5±0.9歳、初経後群が15.4±1.5歳(p<0.01,効果量〈ES〉=2.98)、トレーニング歴は同順に、4.0±2.2年、6.4±2.5年(p=0.03,ES=1.01)であり、体重や身長も初経後群のほうが有意に高値だった。
一般的なパフォーマンステストでは、立ち幅跳びは同順に、177±15cm、213±45cm(p=0.04,ES=0.90)で同様に初経後群のほうが有意に高値だった。ただし、メディシンボールスローテストは277±19cm、309±71cm(p=0.15)で有意差がなく、握力も29.7±6.9kg、34.8±7.6kg(p=0.085)で有意差がなかった。
柔道特有のパフォーマンステスト(SJFT)の結果は、所定時間内の投げ技の回数が同順に、20±1回、23±3回(p=0.01,ES=1.13)、投げ技終了直後から終了1分後までの心拍数の差から算出するSJFTインデックスが、16.7±1.1、14.9±1.9(p=0.02,ES=1.08)で、いずれも初経後群のほうが有意にまさっていた。柔道着の把持力は、33.7±9.8秒、43.9±15.7秒で初経後群のほうが優れた成績だったが、群間差は有意水準に至らなかった(p=0.07)。
パフォーマンス指標の4~7割を初経や実年齢、体格などで説明可能
統計解析の結果、以下それぞれのパフォーマンス指標の説明因子が明らかになった。
立ち幅跳び
立ち幅跳びは、実年齢が高いほどレベルが高いという有意な関連があった(β=0.526,p=0.04)。また、トレーニング歴が長いほどレベルが高かった(β=0.476,p=0.05)。一方、初経年齢が高いほどレベルが低い傾向がみられた(β=-0.382,p=0.10)。この3つの因子で、立ち幅跳びパフォーマンスの70%を説明可能と計算された。
メディシンボールスローテスト
メディシンボールスローテストは、実年齢が高いほどレベルが高いという有意な関連があった(β=0.731,p=0.01)。一方、初経年齢が高いほどレベルが低い傾向がみられた(β=-0.449,p=0.10)。この2つの因子で、メディシンボールスローテストの成績の40%を説明可能と計算された。
握力
握力は、実年齢が高いほど強いという有意な関連があった(β=0.585,p=0.02)。また、身長が高いほど握力が強い傾向がみられた(β=0.446,p=0.06)。この2つの因子で、握力の52%を説明可能と計算された。
柔道着の把持力
柔道着の把持力は、実年齢が高いほど強いという有意な関連があった(β=0.783,p<0.01)。一方、初経年齢が高いほど弱いという有意な関連があった(β=-0.788,p<0.01)。この2つの因子と体重を加えた3因子で、柔道着把持力の70%を説明可能と計算された。なお、柔道着把持力は懸垂により測定するため、体重が重いことはマイナス要因となり、本検討でも負の相関が認められている(β=-0.803,p<0.01)。
以上の結果を基に著者らは、「初経年齢、および身長や体重などの成長にかかわる変数は、柔道に関連する身体的能力の一定の割合を説明する。よってこれらの指標が思春期の女性柔道アスリートの主要なパフォーマンス指標となり得る」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Body Size Measurements and Physical Performance of Youth Female Judo Athletes with Differing Menarcheal Status」。〔Int J Environ Res Public Health. 2021 Dec 5;18(23):12829〕
原文はこちら(MDPI)