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自分の子は痩せて見える? 親は子どもの肥満を過小評価する実態が明らかに WHOの欧州22カ国調査

親は我が子が太り過ぎていてもそれを過小評価する傾向にあることが、欧州22カ国での調査結果から明らかになった。とくに子どもが男児である場合にその傾向が強く現れ、また母親よりも父親、都市部よりも農村部、教育歴が短いことも、国によってはその傾向を強める因子として浮かび上がった。また、親自身のBMIとの関連が認められた国も存在した。

自分の子は痩せて見える? 親は子どもの肥満を過小評価する実態が明らかに WHOの欧州22カ国調査

WHO欧州小児肥満サーベイランスのデータを解析

小児肥満は世界規模で増加しており、とくに低・中所得国での増加が著しい。小児肥満増加の一因として、親が自分の子どもの体重を適切に評価できていないことが関係しているのではないかとの考え方も示されている。本報告は、実際にそのような認識のずれはどの程度存在しているのかを、多国籍研究で検討した結果である。

研究には、世界保健機関(World Health Organization;WHO)の欧州小児肥満サーベイランスイニシアチブ(European Childhood Obesity Surveillance Initiative;COSI)のデータが用いられた。COSIは、2007年から小学生の子どもたちの太りすぎや肥満傾向を追っている観察研究。欧州全域にわたる合計30万人以上の子どもたちのデータが収集されている。本研究ではCOSIの第4次ラウンドにあたる2015~17年に参加した36カ国のうち、我が子の体重に関する親への質問がなされていた22カ国のデータを解析した。

親に対して、「あなたの子どもは低体重、普通体重、過体重、肥満のどれに該当すると思うか?」と質問。その回答と、身長・体重に基づく実際の判定との乖離を検討した。実際の体重カテゴリーの判定は、2007年にWHOが策定した子どもの成長に関するデータに基づき、年齢別BMIのZスコアが-2未満の場合を低体重、-2~+1を普通体重、+1~+2を過体重、+2以上を肥満とした。

平均8歳の子ども12.5万人の親を調査

BMI Zスコアが極端な子ども(-5未満または+5以上)などを除外し、解析対象者数は17万4千人以上のCOSI第4次ラウンド参加者のうち12万4,296人だった。解析対象の子どもの数は国によって大きく異なり、サンマリノやデンマークは千人未満、スペインやトルコは約1万人、イタリアは4万人以上だった。

平均年齢は7.9歳であり、51.3%が男児で、71.0%は都市部に居住していた。親の教育歴は低~中レベルが64.8%を占め、大半(85.9%)は母親が質問に回答していた。WHOの基準に基づきBMIで判定した親の体重カテゴリーは、61.7%が普通体重、28.5%が過体重、9.7%が肥満だった。

自分の子どもの過体重や肥満を正しく認識できていない親が多い

身長・体重に基づく子どもの体重カテゴリーの分布は、低体重2.3%、普通体重68.8%、過体重17.2%、肥満11.7%であった。それに対して親の判断では、低体重9.6%、普通体重79.1%、過体重10.5%、肥満0.8%であり、親は我が子の体重を過小評価する傾向が認められた。

より具体的には、実際の判定と親の判断が一致していたのは全体の64.1%であり、33.5%は過小評価、2.3%は過大評価していた。さらに、体重の大きい子どもの場合では、その乖離が大きかった。例えば、普通体重の子どもでは86.5%の親が実際の判定と同じ判断をし、過小評価したのは12.2%であるのに対して、過体重の子どもの親が正しく判断していた割合は17.4%にとどまり、82.3%は過小評価(普通体重と判断)していた。さらに、肥満の子どもを親が正しく肥満と認識していたのはわずか6.2%に過ぎず、56.6%は過体重と判断しており、肥満の我が子を普通体重だと認識している親も37.2%存在した。

男児の体重は女児よりもさらに低く判断されやすい

次に、実際には過体重や肥満に該当する子どもの体重を過少評価している親の傾向を探った。検討した因子は、子どもの年齢(月齢)、性別、居住地、BMI、親の体重カテゴリーなど。

その結果、子どもが男児の場合は女児に比較し調整オッズ比(aOR)が1.41(95%CI;1.28~1.55)と、親が子どもの体重を過小評価する可能性が有意に高いことが明らかになった。以下同様に、親の教育歴が中程度である場合は高等教育を受けている場合に比較しaOR1.41(1.26~1.57)であり、有意差が認められた。

回答者が父親の場合は母親に比較しaOR1.14(0.98~1.33)であり、22カ国全体での解析では、わずかに有意ではなかった。ただし、アルバニア(aOR2.33〈1.11~4.89〉)やポルトガル(aOR1.88〈1.13~3.13〉)では有意だった。

また、居住地が農村の場合は都市部に比較しaOR1.10(0.99~1.24)であり、やはり22カ国全体での解析では有意な因子ではなかったが、トルコ(aOR4.38〈1.49~12.88〉)やトルクメニスタン(aOR2.99〈1.08~8.26〉)、ブルガリア(aOR2.30〈1.28~4.14〉)では有意だった。

親が過体重や肥満であることも22カ国全体での解析では、子どもの体重を過小評価する有意な因子としては抽出されなかったが、いくつかの国では有意だった。

父親は男児の体重の過体重や肥満をより甘く判断している

母親よりも父親は、子どもの過体重や肥満を甘く判断する傾向のあることは前述したが、これを子どもが男児の場合と女児の場合とで比較すると、男児の場合により顕著に認められた。具体的には、女児の場合は母親との有意差がないにもかかわらず(aOR1.05〈0.84~1.17〉)、男児では有意差が存在した(aOR1.29〈1.04~1.60〉)。

著者らは、「子どもの健康な成長と発達を促すための公衆衛生介入には、親の教育レベルや居住地域など、社会文化的背景を考慮する必要がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Parental Perceptions of Children’s Weight Status in 22 Countries: The WHO European Childhood Obesity Surveillance Initiative: COSI 2015/2017」。〔Obes Facts. 2021 Nov 5;1-17〕
原文はこちら(Karger International)

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