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魚油サプリメントは4週間の摂取でも、運動後の筋肉損傷を部分的に緩和する

魚油サプリメント摂取により、遠心性収縮後の筋肉の損傷が軽減される可能性を示すデータが報告された。法政大学生命科学部の越智英輔らの研究によるもので、「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に論文が掲載された。同氏らの研究グループは、8週間の魚油サプリ摂取が筋損傷を抑制することを既に報告しており、今回の研究は摂取期間が4週間であっても、同様の効果を得られるかを検討したもの。

魚油サプリメントは4週間の摂取でも、運動後の筋肉損傷を部分的に緩和する

研究の背景:短期間のEPA/DHA摂取は有効か?

筋肉の遠心性(エキセントリック)収縮を伴う運動や不慣れな運動は、その後に遅発性筋痛(筋肉痛)や、筋力の低下、可動域制限、筋肉の腫れなどを引き起こすことがある。これに対してω3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid;EPA)やドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)が、保護的に作用することが示されている。越智氏らも既に、EPA600mg/日とDHA260mg/日の8週間摂取によって、遠心性運動負荷後の筋力低下、可動域制限が緩和されたという研究結果を報告している。

一方、摂取期間をより短く設定した研究の結果は一貫性が認められない。アスリートや筋力トレーニング愛好家が短期間、集中的なトレーニングを実施するようなケースにおいても、EPA/DHA摂取に筋損傷軽減を期待できるかを確認するため、越智氏らは摂取期間を4週間に短縮して以下の検討を行った。

EPA/DHAまたはプラセボを4週間投与後に運動テストを実施

研究の対象は22名の日常的にトレーニングを行っていない健康な男性とした。過去1年間に定期的なレジスタンストレーニングを行っていないことを適格条件とし、研究前から研究期間中は、マッサージやストレッチ、激しい運動、食事・アルコールの過剰摂取、サプリメント摂取、薬剤の服用は禁止した。

研究デザインは、二重盲検プラセボ対照試験。各群11名に割り付け、4週間にわたりEPA/DHAまたはプラセボのサプリメントを摂取したもらった後、運動テストを実施。サプリメントは運動テスト後5日目まで継続摂取してもらった。サプリメントの含有量は、EPA600mg/日とDHA260mg/日で、プラセボはコーン油とし、ともに剤形はジェルカプセルとした。

運動テストは、ダンベルを用いて100%最大随意収縮という遠心性収縮を伴う動作を60回施行した。評価項目として、最大随意収縮のトルク、肘関節の可動域、遅発性筋肉痛、上腕周囲長、エコー強度などを設定し、運動の直前と直後、および1、2、3、5日後に測定した。その他、血清クレアチンキナーゼ(CK)やインターロイキン-6(IL-6)などを評価した。

なお、研究開始時点において、年齢、体重、BMI、および食事調査により把握した摂取エネルギー量、摂取主要栄養素量に、群間の有意差はなかった。

負荷後の肘関節可動域の回復やクレアチンキナーゼに、有意な群間差

では、結果をみてみよう。

まず、血清多価不飽和脂肪酸について、EPA、DHA、アラキドン酸(arachidonic acid;AA)、ジホモ-γ-リノレン酸(dihomo-γ-linolenic acid;DGLA)レベルは、プラセボ群では投与前後で変化がなく、EPA/DHA群では投与後にEPAレベルが有意に上昇し、プラセボ群との群間差も有意であった。EPA以外の脂肪酸は有意差がなかった。

EPA/DHA群は運動直後の肘関節可動域の低下が少なく、回復が速い

次に、肘関節の可動域をみると、プラセボ群では運動直前に比較し、運動直後から3日目まで有意に低い状態が継続していた。一方、EPA/DHA群では、運動直後と1日目は運動直前より有意に低下していたが、2日目以降は運動直前と有意差がないレベルに回復していた。

また、運動直後の肘関節可動域は、EPA/DHA群のほうがプラセボ群よりも有意に大きかった(運動直前値に対しEPA/DHA群は76.5±16.7%、プラセボ群は53.1±18.7%.p<0.05)。その他の評価項目である、最大随意収縮のトルク、遅発性筋肉痛、上腕周囲長、エコー強度などに、群間の有意差は認められなかった。

EPA/DHA群ではクレアチンキナーゼの上昇幅が少ない

次に血液検査値の結果をみると、クレアチンキナーゼ(CK)の変動に群間差が認められた。

具体的には、プラセボ群では運動テストから3日目と5日目に、運動直前に比較し有意に上昇していたのに対して、EPA/DHA群では有意な変化がなかった。運動3日目のCKは、プラセボ群(1万2,132.7±1万3,652.2U/L)に比し、EPA/DHA群(2,575.2±2,798.9U/L)のほうが有意に低かった(p<0.05)。

IL-6には群間差がなかった。

EPA/DHAの筋損傷抑制作用は、期間と用量に依存する可能性

以上の結果をもとに著者らは、以下のような考察を加えている。

まず、遠心性収縮を伴う運動の負荷後の関節可動域の低下をEPA/DHAが大幅に抑制したことに関連して、より少用量を30日間投与した先行研究では有意差が認められていないことから、投与期間ではなく用量が重要な要因である可能性があるとしている。

一方、遅発性筋肉痛については、本検討では有意差がみられなかったが、より高用量を用いた先行研究では効果が報告されていることから、高用量あるいは長期間の摂取が必要であると考えられるという。

これらの考察のうえ、結論として、「EPA/DHAの4週間の摂取が、遠心性収縮後の関節の柔軟性の低下とCKの増加を抑制することが確認された。ただし、他のパラメータについては有意差がなく、この条件での効果は限定的と言える。この知見はアスリートやトレーニング愛好家にとって重要であり、効率的なトレーニング法を考慮するに役立つ」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「4-week eicosapentaenoic acid-rich fish oil supplementation partially protects muscular damage following eccentric contractions」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2021 Mar 1;18(1):18〕
原文はこちら(Springer Nature)

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