スポーツ栄養の知識と食習慣の質が相関 ブラジルの思春期サッカー選手での検討
サッカー王国ブラジルから、思春期サッカー選手のスポーツ栄養に関する知識の豊かさが、食事の質の高さと相関しているという横断研究の結果が報告された。ただし、知識量自体は十分高いとは言えないこともわかった。
栄養に関する知識の欠如は、アスリートの不適切な食事行動につながる。とくに10代のジュニアアスリートは成人よりも栄養に関する知識が全般的に低く、また栄養に関心が低い。逆に言えば、スポーツ栄養士が介入することの有用性が高いことが多い。この研究は、思春期のサッカー選手の栄養の知識と食習慣を評価し、その相関の有無を確認することを目的に実施された。
ブラジルの思春期サッカー選手73名で検討
対象は、ブラジルの州チャンピオンシップに出場するレベルの14~19歳の男子選手で、4チームから73名を募集した。急性または慢性疾患罹患者、ビーガンや乳糖不耐症の者は除いた。年齢は17.0±.3歳で、54名(74%)が思春期、2名(2.7%)が思春期前、17名(23.3%)が思春期後だった。サッカーの経験は7.4±2.5年、トレーニング量12.1±3.9時間/週、身長1.82±0.1m、体重66.4±7kg、体脂肪率14±5%、脂肪9.4±4kg、除脂肪体重56.9±6kg。
食習慣は、3日間(非連続の平日2間と週末の1日)のすべての飲食物を記録し評価した。各栄養素について、世界保健機関(WHO)またはブラジル国内の推奨値を基準に、過不足を検討した。
栄養知識は、栄養全般の基本的な質問、ブラジルのフードピラミッドに関する質問、およびスポーツ栄養に関する質問という3つのセクションに分かれた14項目の質問しその総合得点で評価した。
摂取量は不足傾向
では結果をみてみよう。
まず、摂取推奨量と実際の摂取量を比べると、72.6%が全般的に推奨量に満たず、とくに主要栄養素・食品では、炭水化物(推奨量5~7g/kgに対し摂取量は3.9±1g/kg)や食物繊維(年齢+5gに対し11.2±6.5g)のほか、不飽和脂肪酸、果物、野菜、乳製品が少なかった。これらを推奨量以上に摂取していた者はいなかった。
微量栄養素では、カルシウム、葉酸、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンEの摂取量が不足している者が多かった。
一方、油脂、菓子、肉、卵の平均摂取量は推奨量を超過していた。
栄養に関する知識
栄養知識調査のスコアは54.6±13.6点で、質問の約半分に正しい回答が得られた。栄養全般の基本的な質問は75.7±22.6点と比較的高得点で、続いてスポーツ栄養に関する質問は67.8±21.1点、フードピラミッドに関する質問は16.3±9.2点にとどまった。フードピラミッドに関しては、アスリートの76%が「知らない」と回答した。
なお、62名(85%)と大半のアスリートが、「栄養士の指導を受けたことがない」と回答した。
栄養補助食品の適正利用に対する考え方
また、「栄養補助食品を使用せずに優勝する」ことに関して、45.8%と約半数のアスリートが「同意できない」または「それが可能であることを知らなかった」と回答した。
一般向け低炭水化物食の推奨がアスリートに誤って伝えられている
31人(43%)は、「アスリートはポテトとパンを避けるべき」という推奨事項があること(実際にはそのような推奨はない)を「知らない」、または「同意している」と回答した。
ブラジルでは容易に購入できる炭水化物が豊富な食品(ジャガイモとパン)は、一般向けには、あまり積極的に食べるべきではないとアナウンスされることが多い。ただし、筋グリコーゲンは試合中のエネルギー産生の主要な基質であるため、炭水化物はサッカーのパフォーマンス発揮に不可欠である。しかし今回の調査では、前述のようにアスリートの炭水化物摂取量は推奨レベルを下回っていた。
本論文の著者らは、一般向けに流布されている情報がアスリートに、パフォーマンスの改善における炭水化物の役割を誤解させている可能性を考察している。
ミネラル摂取量と栄養知識の相関
ナトリウムの摂取量は、総合的な栄養知識、スポーツ栄養に関する知識、フードピラミッドに関する知識、それぞれが高いほど摂取量が少ないという、有意な負の相関がみられた。リンの摂取量はフードピラミッドに関する知識と中程度の正の相関があった。カルシウムの摂取と栄養全般の基本的な知識、およびスポーツ栄養に関する知識は、弱い正の相関がみられた。
「多忙」と「意志力の欠如」が障壁
回答者自身が報告した、健康的な食事を継続する上で障壁となっている事柄は、意志が弱いことや、多忙であることを挙げる回答が多かった。
以上の結果から著者らは「思春期アスリートの食事を改善するために、栄養教育が推奨される。スポーツ栄養士が、各アスリートのライフスタイルに応じた実用的で健康的な食事目標を提供し、遵守率を高めるための動機付けをしていく必要がある」と結論をまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Validity of a Food and Fluid Exercise Questionnaire for Macronutrient Intake during Exercise against Observations」。〔Nutrients. 2019 Oct 7;11(10)〕