アスリートの腸内細菌叢 運動種目と栄養摂取状況との関連は?
近年、多くの疾患と腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう、腸内フローラと同じ意味)の関連が明らかになり、各領域でホットトピックになっている。一例を挙げると、難治性の炎症性腸疾患に対する糞便移植による腸内細菌叢の多様性改善とともに、疾患活動性が抑制されることが示されている。さらに腸内細菌叢は運動誘発性に変化を生じ、多様性に影響し健康に資するとの報告もある。
他方、アスリートは競技前のグリコーゲンロードのため、または胃腸障害の回避のため、食物繊維やレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)の摂取を控え、単糖類の摂取が推奨されることがある。またアスリートは一般に筋肉合成のため高蛋白食を摂取する傾向もある。これらの食行動は腸内細菌叢の多様性を低下させたり、短鎖脂肪酸の産生を低下させ、運動の効果を相殺する可能性が考慮される。
本研究は、長距離ランナーおよびボディビルダーという2種類の競技のアスリートの栄養摂取状況と腸内細菌叢を、運動習慣のない群(コントロール)と比較した韓国からの報告。各群15名で、全例男性。アスリートは両群とも平均7年半ほどの競技経験者。BMIは長距離ランナーが最も低く20.5、コントロールが25.9、ボディビルダーが28.1。体脂肪率は長距離ランナー9.2%、ボディビルダー14.0%、対照群23.9%。栄養摂取状況は「韓国人の食事摂取基準」を基に分析した。
アスリートの2群はコントロールに比し、炭水化物と脂質の摂取量が有意に多かった。蛋白質摂取量については、長距離ランナーは対照群と有意差がなく、ボディビルダーは他の2群より有意に多く摂取していた。食物繊維に関しては全群が推奨量(1日25g以上)に達していなかった。
運動の種類と食事内容は腸内細菌の属と種のレベルに相対的な影響を及ぼしていることが確認された。例えばボディビルダーにおいて、ビフィズス菌は脂肪摂取量と負の相関が認められ、sutterellaは正の相関を示した。
腸内細菌叢の多様性については3群間で顕著な相違はみられなかった。ただし長距離ランナーにおいて、蛋白質摂取量と腸内細菌叢多様性に負の相関が認められた。
結論として著者らは、低炭水化物・低食物繊維の食事を摂取している持久系アスリートで、高蛋白食が腸内細菌叢の多様性に悪影響をもたらす可能性と、高蛋白・低炭水化物の食事を摂取している筋力系アスリートで、健康維持に資する短鎖脂肪酸産生細菌の減少につながる可能性を指摘している。
原題のタイトルは「The combination of sport and sport-specific diet is associated with characteristics of gut microbiota: an observational study」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 May 3;16(1):21〕